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次に僕が描くのはどんな線だろう? 〜「一線の湖」を読みました〜

砥上裕將さんの「一線の湖」を読んだ。

まず、感じたこと。
文字で絵って描けるんだ。すげえ。

水墨画をテーマにした本小説では、実際に絵を描く描写が出てくる。
そのどれも、臨場感がすごい。もちろんそこに絵なんて存在していないのに、文字だけで脳内に絵を描いてくれる。
著者の能力もすごいし人間の持つ想像力って面白い。

私は絵を描かないが、こうして文章を書くことを嗜んでいる。
どちらにも共通するが、次の瞬間、自分が何を書いているかなんてわからない。だから面白い。自分が書いているようで、書いてない。書いてるのは自分であるとも言えるし、人生が私の手を通じてそこに心の内を表現しているとも思える。

次の一線を決めるのはなんだろう。
私の意志?じゃあその意志を生み出すのは?
日々生きていく中で様々なものを見て、感じて、誰かと出会い、時には傷つき、そして生きていく。その渦中で描く一線。そこにはそれまでの過程や未来への希望、自分では気づけなかった自分の中に眠る思いみたいなものが無自覚に表されていく。

アウトプットというカタカナ表記がそぐわないとも感じるが、心の内をなんらかの形で外に出すことは大切だと感じるし、何よりも面白いなと思う。人生を楽しんでいく上で、この視点を持てるかは大きな違いとなる。

何を描こう、ではなく。とにかく筆は手にしておくこと。
心の声に耳を傾けながら、その思いを目の前の白紙に向けてただぶつけていくこと。

私は何を思うのか。どう生きたい?何がしたい?
書くという意志を捨てなければ、その手を通じて目の前に露わになってくれる瞬間は必ずくる。

このあと私は、どんな線を描いていくのだろう?その先は、どこへ向かい、どこへ繋がっていくのだろう?

わからない。だから面白い。
人生とは、想いとは。真摯に自分の心と向き合い、それを外に向けて表現していくことの素晴らしさを感じさせてくれた、素敵な一冊でした。

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