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「読者のニーズ」との向き合い方(ニーズのある場所に如何に作品を届けるか)

小説界隈のみならず、あらゆる活動・商売事の基本中の基本に「需要じゅよう供給きょうきゅう」という言葉がありますが…

ヒット」するために必要なのは「需要(ニーズ)」のある所にモノを「供給」することなのです。

たとえば「納豆嫌い」な人にどんなに「納豆」をアピールしたところで、高評価はおろか口にしてすらもらえません。

それがどんな大変な試行錯誤の末に生まれた画期的な新商品であろうと、嫌いな人にとっては「納豆な時点で既にダメ」なのです。

しかし、元から「納豆が大好き」で大変なこだわりを持っている相手なら「これはスゴい!」と絶賛してもらえることでしょう。

小説も同じことです。

ジャンル違いの相手に一生懸命アピールしたところで「労力の無駄」に終わる可能性が高いです。

大切なのは「自分の作品を求めてくれている読者」の元に、自分の作品(の情報)を届けることなのです。

■小説投稿サイトの「ジャンル格差」問題

小説投稿サイトの「総合ランキング(※)」を見ていただくと、よく分かるのですが…

TOPページに載っているのが「総合ランキング」とは限りません
別記事(↓)にも書いていますが、TOPのランキングが「カテゴリー別」だったり「新着1ヶ月内」のみだったりすることもあるのです。

小説投稿サイトというものは、一部のジャンルに人気が集中し、特に上位はそのジャンルばかりに独占されている…ということが少なくありません。

人の好みは十人十色で皆それぞれ違っているはずなのに、ランキングがここまで1つのジャンルだけで占められてしまうのは何故なのでしょう?

仮説として1つ挙げられるのが「ランキングに影響を及ぼすコアユーザーの好みがかたよっている」ということです。

たとえばランキングが「多数決」で決まるなら、より読者人数の多いジャンルが有利ですよね?

読者の少ないジャンルは、たとえ100点満点の出来の名作であったとしても、数で負けて上位に入れません。

そもそも作品と読者の出逢いはある意味「ガチャ(運)」のようなもの。

数の少ない「レア」にはなかなか当たらないように、数(割合)の少ない読者には出逢うこと自体が難しいのです。

■「最大手ジャンル」は競争率も鬼のように高い

ここまで読んで「読者の割合が偏っているなら、その読者たちに人気のジャンルの小説を書けばいいじゃないか」と思った皆さん…

ソレ、残念ながら、既に多くの物書きさんに使われてしまっている戦略です。

そもそも投稿小説界隈では、1つヒットが生まれると、その「後追い」で同じジャンルの似たような作品がポコポコ生まれがちです。

つまり、人気の高い「大手のジャンル」は既に作品数が膨大ぼうだい飽和状態ほうわじょうたいおちいっていることが多いのです。

こんな状態では「大手ジャンル」の中であっても埋もれる作品が続出します。

皆さん、想像してみてください。

既に有名店がのきを連ねる「ラーメン激戦区」に、まだ知名度も実績も無い新規ラーメン店がポッと参入する様を…。

しかも参入するのは自店の1店舗だけではなく、日々次々と競合店が出店して来るのです。

相当にキビしい戦いいられ、苦労するのは目に見えていますよね?

そもそも読者は同じジャンルの中でも「1番おもしろい作品」を読みたがるものですが…

同じような作品が山と積まれた状態で「どれが1番おもしろいのか?」なんて、パッと見では分かりませんよね?

【1番おもしろい小説が読みたいけれど、どれを選んだら良いのか分からない読者の図】

読者が読める作品数には限界があり、当然「読まれずに埋もれてしまう作品」も出てしまいます。

ちなみに「そのジャンルにどれくらいの既存作品があるのか?」は、ジャンルのキーワードorタグで検索をかけてみればすぐ分かります。
たとえば「ざまぁ」で作品を書きたい方は、フリーワード検索などで「ざまぁ」を検索してみると競合作品の数が分かります。
ちなみに「ざまあ」や「ザマァ」などの表記違いはヒットしませんので、実際はもっと数があると思った方が良いです。
さらに言うと、小説投稿サイトはどんなにクオリティーが高くても「タイトル選び」あるいは「あらすじ」1つ間違えただけで埋もれてしまうイチかバチかの世界ですので、実力がある方でも安心しない方が無難です。

「大手ジャンル」は、小規模ジャンルに比べればポイントや順位が上がりやすく、その点だけ見れば「有利」でしょう。

しかし、競合が多いということは「ちょっとやそっとの数値では上位に入れない」ということです。

他ジャンルであれば充分「1番手」「2番手」に入れるようなポイントでも、大手ジャンルの中では「数十番手」「数百番手」…そんな状況が普通にあり得るのです。

そしてどんなにポイントをかせげても「そのジャンルの中の上位陣」に入れなければ意味が無いのです。

あと、大手ジャンルは既にほぼアイディアが掘り尽くされてしまっていて「斬新な新作」を生み出しづらい(何を書いてもヨソとカブる)のも物書きにとって苦しいところかと。

■小説投稿サイトでは「ニッチ戦略」は通用しない?

既に市場が飽和状態で、新規に参入しても勝ち目が無さそうな時…

ビジネスの現場では「ニッチ戦略」というものが存在します。

大企業同士がしのぎけず大きな市場に「後発の中小企業」が入ったところで敗北は目に見えている→ならば大企業が手を出していない小さな市場スキマ産業)で天下をろう…カンタンに言えば、そんな戦略のことです。

商業出版の世界に目を向ければ、売れているのは決して「小説投稿サイトので人気のジャンル」ばかりではありませんよね?

たとえば、最近中高生の間で爆発的ブームを巻き起こし、映画化までした「ネット発」の作品は、異世界系ではなく「現代の女子中学生が戦時中の日本にタイムスリップして恋に落ちる物語」でした。

(ちなみにウィキペによるとシリーズ発行部数は100万部を突破しているとのこと。)

そもそも人間の好みは十人十色なはずで、「最大手」でなくても「ニーズのあるジャンル」は必ずあるはずなのです。

…しかし、その「ニーズ」が見えて来ないのが小説投稿サイトの「特殊性」です。

他コンテンツと比べていただけると、その特殊性が際立って分かりやすいのですが…

たとえば、マンガでもアニメでも商業出版の世界でも、1つのジャンルだけが人気を独占しているということはありませんよね?

芸能界モノあり、現代モノあり、バトルものあり、スポーツものあり、もちろん異世界ファンタジーものもありで、様々なジャンルが入りじっているのが「目に見える」と思います。

一方で投稿サイトのランキングは、上位がほぼ同じようなジャンルで埋め尽くされ「他のジャンルなんて存在するの?」くらいな印象ですよね?

以前はそれでも「ファンタジー」と「恋愛」の2強で争っている印象でしたが、今は「恋愛(特に、女性向け異世界恋愛モノ・ざまぁ要素あり)」の勢力がだいぶ強くて1強化しつつある印象です…。
あくまで個人的な印象ですが。

実際、小説投稿サイトでの「ジャンル格差」はエグく、人気ジャンルならポイントやブクマがどんどん増えていくのに、他ジャンルだとピクリとも数字が動かない…そんな状況を目にします(←新着作品を一定時間モニタリングした結果)。

結論から言うと、普通なら成立するはずの「ニッチ戦略」も、現状の小説投稿サイトでは通用しない可能性が高いということです。

■問題は「マッチングができていない」こと(→なので、改善すれば活路が見える)

大手ジャンルを選んでも「いばらの道」、ニッチなジャンルを選んでも「読んでもらえない」なら、もうコンテンツとして「んでいる」のではないか…

そう思われた皆さん……、自分もそう思います😅

と言うか、今のままなら、いずれ異世界ブームや「ざまぁ」ブームの終焉と同時に小説投稿サイトというコンテンツ自体「オワコン化」しても不思議は無いと思っています。

ただし「今のままなら」です。

上の項目で「1つのジャンルだけでランキングが埋め尽くされる状況は特殊」だと書きましたが…

この「特殊な状況」がなぜ生まれるのか…

それは「小説投稿サイトで『需要と供給のマッチング』ができていない」せいだと、自分は思っています。

過去記事(↓)にも書きましたが、小説投稿サイトで「自分の好みのど真ん中ストライク」の作品を探し出すのは至難のわざです。

理由は2つ。

まず1つは、小説投稿サイトでは「露出」が限られ、小規模ジャンルは読者の目に触れることすらできないからです。

現実のビジネスの場でニッチ戦略が通用するのは「たとえニッチな商品でも露出の機会が得られているから」。

たとえニーズの低い商品でも、棚に並んでいるのが見えさえすれば「欲しい人間」が必ずそれを手に取ってくれます。

しかし、小説投稿サイトの現実はこうです↓。

小説投稿サイトで「読者の目につきやすい場所」に並べるのは、ランキング上位などのわずかな作品だけ

ニッチなジャンルの作品は、読者の目につく場所に並ぶことさえできず、目立たない場所(検索等でしか辿たどり着けない場所)にゴチャゴチャ積まれている状態です。

しかもその「ゴチャゴチャ山積み」状態さえ、「大手ジャンル」に多くの場所を占められ、小規模ジャンルは埋もれに埋もれてなかなか見つからない状態なのです。

さらにここで「作品と読者の出逢い」を邪魔してくるのが、もう1つの理由

それは「需要と供給のマッチングのしづらさ」です。

そもそも人間は「タイトル」や「あらすじ」などの前情報だけで作品内容を「完璧に予想する」ことなどできません

タイトルやあらすじから「何となく自分の好みに合いそう」と思って選んだ作品が、全然好みではなかった…あるいはその逆だった、という経験のある方、実際多いのではないでしょうか?

読者が「自分好み」の作品とちゃんと出逢える…すなわち「作品と読者のマッチング」「需要と供給のマッチング」は、実は大変に難しいことなのです。

しかし、ある方法を使えば「読者と作品のマッチング精度」を飛躍的に上げることが可能です。

それが「タグ」や「キーワード」。

作品の「属性」をカンタンに説明する短いワードです。

たとえば「ざまぁ」や「俺TUEEE」というタグ(キーワード)を既にご存知の皆さん…

「それがどんな内容の作品なのか」、長々と説明されなくても一瞬でパッと頭に浮かびますよね?

認知度の高いタグ・キーワードが確立していれば、作品はそれを元に読者に見出してもらえ、読者はそれを元に作品を見つけられるのです。

逆に、タグ・キーワードの確立していないジャンルは、この「見つけてもらう」「見つける」こと自体が至難の業です。

「こんな感じの作品が読みたい」「こんな感じのジャンルが好き」というのがあっても、「何という単語で探したら良いのか分からない」状態では、そもそも検索がかけられないですよね?

現在「ざまぁ」要素がここまで強いのは、ただ単純にそのジャンルが好かれているというだけではなく「ざまぁ」というタグ(キーワード)の認知度が高いからなのではないでしょうか?

だとしたら、まだタグが確立していないだけで、実は「ざまぁ」よりも人気なジャンルが存在したりするのではないでしょうか?

強いタグ」に対抗するためには、こちらも新たに「強いタグ」を立てるしかありません。

しかも、ただ作者の側が「新たなタグ」を立てるだけでは駄目だめで、それが読者に「認知」されなければ意味がありません。

それ自体、難易度が高くはあるのですが…

今のSNS時代、今まで存在さえしなかった「新しいワード」一気に多くの人間に拡散する…というのは割とよくあることですよね?

なので、有効なタグさえ確立できれば、今の状況を一気にくつがえすことも充分可能なのではないかと思うのです。

■「大手ジャンル」をちょうどに書ける作者ばかりではない(ジャンル違いで才能が潰れていくなんて勿体ない!)

物書きがポテンシャルを最も発揮できるのは「自分が一番得意なジャンル」なのではないでしょうか?

読者の好みが十人十色なように、物書きの才能も十人十色です。

そのサイトの「大手ジャンル」がちょうどに得意な作者ばかりではありません

「ニーズがそれしか無いから」という理由で大手ジャンルに挑戦したみたものの、結局思うような完成度に至らなかった…そんな物書きさんも多いのではないでしょうか?

自ジャンルなら「100点満点」の作品が書けるはずのに、その才能を発揮させてもらえずつぶれていく…

あるいは、自ジャンルで「100点満点」の作品を書き上げられたのに、ジャンルで「読まず嫌い」されて報われずに終わる…

それって、本人だけでなく小説界全体にとっての損失だと思いませんか?

小説投稿サイトは「物書きへの道を広げる」ためのものであるはずです。

その真逆の「物書きの卵をいたずらにつぶし続ける才能の墓場」になってしまってはいけないのです。

■必要なのは、読者の意識改革(あるいは作者と運営にも…?)

上で「読者が好みど真ん中ストライクの作品を見つけるのは至難の業」と書きましたが…

そもそもその事実に気づいていない読者さんも多いのではないでしょうか?

むしろ「優れた作品であれば、必ず人気が出てランキング上位にるはず」という思い込みに囚われた人の方が多いかも知れません。

ですが上の項目でも書いた通り、ジャンルが違うだけタイトル選びを間違えただけ運が悪かっただけでも埋もれてしまう…それが小説投稿サイトの現実です。

しかし、それに気づいていない人々は、単純に「ランキング1位の作品なら1番おもしろいに違いない」と思って作品を選び…

結果「自分の好みに合わなかった」場合、それが「好みのせい」とは思わずに「作品のクオリティーのせい」だと考えることでしょう。

そして「1位でこの程度なら、2位以下がおもしろいはずがない」と、サイトを去って行ってしまいます

これが続けば「ちょうどランキング上位作品が好みに合っていた」読者ばかりがサイトに残り、他ジャンルが好きな読者は「自然淘汰」されてしまいます。

サイトの読者層が極端に偏っているとしたら、これが原因なのかも知れません。

あるいは「実は読者層は偏ってなどいない」可能性もあります。

むしろ一見「最大手ジャンル」に見えるものこそ、実はごく一部の少数者にしか好かれていない「ニッチなジャンル」の可能性さえあるのです。

なぜなら、小説投稿サイトというものは「モノ言う読者」に有利な世界

「評価」「ブックマーク(お気に入り)」「感想(レビュー)」などがポイント・順位に大きく影響し、「ただ読まれているだけ」ではなかなか上へ行けない…そんな世界なのです。

たとえそれが読者全体の数%に過ぎない「層」であったとしても、「モノ言う読者」は目立ちます

評価やブクマの数値、感想(レビュー)などで、その存在が「目に見える」からです。

逆に「モノ言わぬ読者」は数が多かったとしても他のユーザーの目には見えず、その存在を認識すらされません。

つまり、「モノ言わぬ」多くの読者(サイレントマジョリティー)に好かれる作品より、「モノ言う」少数の読者(ラウドマイノリティー)に好かれる作品の方が、ランキングの順位を上げていくのです。

ちなみに、実際に小説投稿サイトの「モノ言う読者」の割合は引くほど少ないです。

なにせ最大手サイト「小説家になろう」さんですら、「1度でもレビューしたことのあるユーザーの割合」はわずか1%(小数点以下四捨五入)。

(調査日:2023年9月22日)

某サイトTに至っては、1ヶ月の間に「小説への評価」をしたユーザーがわずか5人

おまけにその1ヶ月間の全評価のうち、実に96%がたった1人のユーザーによって付けられているという「このサイト、もうこの人の好き嫌いに染まってない?」という状態でした。

(2023年9月のデータ)

公開されている「読者の行動データ」が限られているため(サイトによっては全然見えませんし)「これが全て」とは言えませんが、たぶん「割合が少ない」というのは、どこもだいたい同じのではないかと…。

一部の少数者の「好み」ばかりが反映されたランキングなら、1つのジャンルだけに染まるのも当たり前です。

問題なのは「そうでない人々」まで、悪い意味でランキングに「影響」されてしまうことです。

残念なことに、人は「他者の評価」に影響されやすい生き物です。

たとえ「みそラーメン」が食べたくてラーメン屋に入っても、壁にでかでかと「当店の一番人気は塩ラーメン」と書かれていたなら、ついつい塩ラーメンを注文してしまう…そんな流されやすい生き物です。

(自分はみそラーメンが食べたい日はテコでもみそラーメンを選ぶ派ですが、そういう人間って少数派なんでしょうね…。)

結果、さらに塩ラーメンの売上は伸び、みそラーメンとの間に「格差」が生まれてしまう

本来なら、みそラーメンにもニーズはあったはずなのに…本当はみそラーメンも相当に美味しいのに、塩ラーメンの影に隠れてその存在が見えなくなってしまう

そんな状況が、今の小説投稿サイトなのではないでしょうか?

こんな状況を変えるのに必要なのは「読者の意識を変えること」です。

ランキングや数値に惑わされず本当に自分好みの作品」を貪欲どんよくに探し求めてもらうことです。

「ランキングや数値を元に読者が行動する」のではなく、「読者の行動の結果がランキングや数値に出る」状態を作り出すことです。

そのためには、読者に気づいてもらわなければならないこと沢山たくさんあります。

なので、以前からちょこちょこ様々な情報発信をしているのですが…

最近「ひょっとして、読者だけでなく作者もこれに気づいていないのでは?」「それどころか運営さんも気づいてなかったり…しませんよね!?」とうっすら不安を覚え始めています…😅

蛇足ながら、「読者が作品を探しづらい」ということは「作品が読者になかなか見つけてもらえない」ということですし、そもそも「読者がランキングからしか作品を探さない」ということは「どれほどクオリティーを高めようと、どれほどニーズを汲もうと意味がなくなる(ランキング戦略のポイント攻略ゲームが全てになってしまう)」ということです。

「ジャンルが極端に偏ったサイト」よりも「十人十色な好みが反映されたバラエティー豊かなサイト」の方が作者にとっても読者にとっても幸せなはずですので、どうにかそっちに改善してくれると良いのですが…。

ジャンル人気がバラけてくれていた方が、「大手ジャンル」は競争率が下がりますし、「小規模ジャンル」は読まれる確率が上がりますし、1つのジャンルがすたれても「次がある」ので全方位Win-Winな気がするのですが…。
…それに、品揃しなぞろえが少なすぎるコンテンツは「コンテンツとしての競争力」が低過ぎて他コンに勝てる気がしないので、なんとか改善してオワコン回避して欲しいという切実な願いがあります…。

※今回の記事で利用させていただいたイラスト素材はコチラ↓。
(一部加工(色変&立体化)アリ。)



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