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ひょっとして裏技?「なろう」ユーザーのデータ分析方法(サマジョ率が想像以上で衝撃でした)

「小説投稿サイトの中には、読者の動向が分かるモノもある」ということで、過去記事では「ツギクル」をご紹介しましたが…

実は「小説家になろう」でも読者の動向の一端が分かります。

…と言っても、わりとコツの要る調べ方ですので、大多数の人は気づいていないと思います。
 
(…というかビミョウに「裏技」くさい気がするので、下手すると「他に知っている人がいないのでは?」と思うほどです。)

以下にその「調べ方」と、それで調べたデータをまとめていますが、「データまとめ」だけ見たいという方は、ここの下にある「調べ方」の部分を飛ばして先に進んでください。

調査日などのデータ詳細は最後に【補足】としてまとめてあります。
気になる方だけご覧ください。

■ユーザー動向は「ユーザ検索」で分かる

「なろう」の姉妹サイト「小説を読もう!」には「ユーザ検索」という機能があります。

(「小説を読もう!」ページを再現した図。2023年9月版)

この機能、普通に考えたら「探したい作者の名前を入力して、その人を探す機能」ですよね?

ですが実はこの機能を使えば、全ユーザーの「あるデータ」を一覧で表示させることができるのです。

ポイントはズバリ「検索ウィンドウに1文字も打ち込まないこと」です。

……皆さん、「それじゃ何も出て来ないじゃないか」と思いませんでしたか?

ところが、この「何も入力していない状態」で並べ替えを選択すると、絞り込みが一切されていない「全ユーザー」のデータが、その並べ替えで表示されるのです。

(「ユーザ検索」ページの検索ウィンドウ周辺の図)

…ただ、その「並べ替え」自体、種類が限られていて、選べるのは「新着順」「小説投稿数が多い順」「レビューした回数が多い順」「投稿した小説文字数が多い順」「投稿作品の総合ポイント合計が多い順」のみです。

ここで注目して欲しいのが「レビューした回数が多い順」です。

他の「小説投稿数」や「小説文字数」「総合ポイント合計」は、「作者」としてのデータですよね?

ですが「レビューした回数」だと「読者」としてのデータが見られるのです。

「読者」の動向が分かるというのは、作者にとって、とても重要で有益だと思いませんか?

…で、実際そんな「なろう読者のレビュー動向データ」を、グラフにして以下にまとめてみました!

ちなみに小説家になろうさんには、感想や星の数での評価やブクマなど、様々なリアクション機能が存在しますが、それらはこの一覧では何故か項目自体が表示されません。
なので、ここではあくまで「レビュー」に関してだけ語らせていただきます。

■レビューしたことがあるユーザーは1%だけ

実際に調べたところ…

「なろう」全ユーザーのうち、1回でもレビューしたことのある人の割合は、わずか1%だけでした(小数点以下四捨五入)。

残り99%の「多数派」は一度もレビューという「声」を出したことのない、いわゆる「サイレント・マジョリティ―」なのです。

この状況、Xのイーロン・マスク氏がTwitter時代に似たようなこと(大多数の人は目に見えるアクションをしていない)を発言していましたので、ある程度予想はしていました。

ですが、まさか行動しているユーザーが1%とは…(10%くらいかと思っていました)。

「レビュー」というのは、読者のアクションの中でも「最もハードルの高いもの」だと、個人的には思っています。

ブクマや星の数の評価と違い「自分の言葉」を使わなければいけませんし、感想のように「個人の意見」を書けば良いというものではなく、第三者にも分かるように小説を「紹介」しなければなりません。

(人によっては作者に直接見られる「感想」の方が、ハードルが高いという方もいらっしゃるかも知れませんが…。)

なので、もっと簡単なブクマや評価なら、少しは「アクションするユーザーの割合」が増えると思うのですが…

上に書いたTwittter(現X)の例でさえ「ユーザーの90%以上は、ツイートを読むことはあっても、ツイートやリプライ、『いいね』のようなアクションはしない」と書かれていますので(↓)、増えたとしてもそんなに大した変化ではないのかも知れません…。

サマジョ率が高いのって、あまり良くないことなんですよね…。

人はどうしても「目に見える数字」や「目立つ意見」に動かされがちですが、その「目に見える数字」「目立つ意見」が、実はたった数%の少数者のニーズや好みでしかないということですので…。

「アクションするユーザーの割合」をいかに増やすか…

あるいは、いかに「アクションしない(サイレントな)ユーザーのニーズ」を汲み取るかが、今後の小説投稿サイトの課題になってくるかと思います。

ビジネスの場でビッグ・データが重要視されるのも、このあたりが理由なんですよね…。
目に見えている「意見」や「数字」だけんでいけば良いなら、わざわざ苦労してまで「声に出ない」「目に見えにくい」消費者の行動データを求める意味なんてありませんから…。

■レビュアーの約7割は、レビュー回数1件

全ユーザー中1%の貴重なレビュアーは、実際どのくらいの件数レビューしているのでしょう?

実はその1%のユーザーの中でも、「複数レビュー」している方はまれです。

ほとんどのレビュアーのレビュー回数は「1件」。
その割合は全体の69%(小数点以下四捨五入)。

つまり、2件以上レビューをしているのは、残りの31%

この時点で既にグッと人数が減ってしまうのです。

中には1000件以上、2000件以上レビューしているユーザーもいますが、その数は非常に少なく、全体から見ると1%にもなりません。

ただ、そんな上位ユーザーたちのレビュー件数が多いためか、全レビュー件数を全レビュアー人数で割ると、レビュアー1人あたりの平均は約3件になります。

■トップレビュアーの影響力はどれくらいか?

レビュアーの約7割はレビュー件数1件なのに対し、件数上位のレビュアーたちは1000件以上、2000件以上のレビューをしている…

この状況で問題となるのは、そんなトップレビュアーたちの「影響力」――その人たちの「意見」が全体の何割を占めているかです。

実は「読者の動向が分かる」もう1つのサイトである「ツギクル」は、これが大変なことになっていまして…

30日間という短期のデータではありますが(ツギクルさんでは直近30日間のデータしか見られません)…
そのサイトの「小説に対する評価」のうち、なんと83%1人のユーザーのアクションが占めているという、とんでもない占有率になってしまっているのです。

「ツギクル」で最も多く評価している人の、全評価に占める割合(2022年版)

(つまり、その1ヶ月内につけられたものなら「目にする評価のほとんどがこの人のつけたモノ」と思って間違いないという…。)

レビューや評価というものには、多かれ少なかれその人の「趣味」や「好き嫌い」が反映されます

割合にかたよりがある(少数の人間の占有率が高い)ということは、そのサイト全体の傾向が、その少数者の好みに寄っていくということです。

なので、なるべく上位者の割合は低く抑えられている方が良いのですが…

※アクションする人が悪いという話ではなく、アクションしない人が多いのが良くないという話です。

なろうさんの場合、トップレビュアーのレビューが占める割合は、全体の3%でした。

「最も多くレビューしている人」の全レビューに占める割合

ツギクルさんのグラフで感覚がマヒしてしまっているので、正直これが多いのか少ないのかピンと来ないのですが…😅

トップレビュアー以外にもアクションする人がたくさんいる分、ツギクルさんよりはだいぶ「健全」な印象はあります。

…ただ、上位1人だけでなく上位10人の影響力で調べてみると…

上位10レビュアーのレビューに占める割合
(「おまけ」で上位10レビュアーのレビュー件数データも付けています。)

その占有率は13%

皆さんの目にするレビューのうち、10件に1つはこの上位10人のいずれかのレビューである可能性が高いということです。

【補足】データの詳細&見る際に気をつけるべきこと

今回載せたレビューのデータは2023年9月22日20時40分~21時55分にかけて調べたものです。

調べ始めから調べ終わりまでにタイムラグがありますので、この間にもユーザー数やレビュー数に変化があったかも知れませんが、1ケタ~2ケタの増減は誤差の範囲だと思っています。

あまり細かい数値を載せるとゴチャついてしまいますので、考察文やグラフの多くは小数点以下四捨五入で記載しています。

ただ、割合の少な過ぎるもの四捨五入すると0%になってしまいますので、そういう数値がある時だけ小数点以下も載せています。

それと、今回調べられたのはあくまで「小説家になろう」のアカウント登録をしているユーザーのデータだけです。

そもそもアカウントを持っていない、いわゆる「アカ無し読み専」のデータは調べようがないため入っていません。


小説投稿サイトに来る読者は、こんな感じでピラミッド構造になっています。
データとして見られるのは、あくまでアカウントを持っているユーザーのデータのみです。

アカウントを持っていなければレビューできませんので、レビュー件数のデータが変わることはありません。…が、アカ無し読者まで含めれば「全読者中のレビューする読者の割合」はさらに低くなることでしょう。)

それと、なろうさんの利用規約で禁止されているため、「1人の人間が複数アカウントを持つこと」や「複数の人間が1つのアカウントを共有すること」は前提とせず、あくまで1アカウント=1人で計算しています。

調べた全ユーザーの中には、アカウント登録はしたものの結局何もしないままサイトを離れた(あるいは読んではいるもののログインしていない)「休眠アカウント」や、「読み専」の逆の「書き専」で他の作者の作品を一切読んだことのないユーザーも含まれていると思われますが、数が把握できないため、全て一緒くたで調査しています。

今回ユーザーデータを調べたところ、「投稿数」「レビューした回数」「文字数」「総合ポイント合計」の全てが0なアカウントが結構な数出てきましたので、休眠アカウントは意外と多いのかも知れません。

【おまけ】

上に載せた「ツギクル」の評価割合データは去年のものなのですが、今回ついでに最新のデータを調べてみました。

…結果、さらに状況が悪化していました…。

「ツギクル」で最も多く評価している人の、全評価に占める割合(2023年9月版)

ツギクルさんには「応援」というアクションもあるので、そちらも調べてみたのですが、そちらのデータもこんな感じです↓。

「ツギクル」で最も多く応援している人の、全応援に占める割合(2023年9月版)

アクションする人数が少ないと、こういうことになってしまうんですよね…。



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