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短い物語

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自分の書いた短めの物語をまとめて置いておきます
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2021年5月の記事一覧

怖い話『頭が逆さになっている赤ん坊』

 夜中に目が覚めた。幻覚を見た。その話を書こうと思う。  寝ぼけているときによく見る幻覚…

睦月
3年前
6

ネカマは現代の詩人のたしなみ

 2021年になった。  別にやることもなく、何がしたいわけでもなく。  公募に送った小…

睦月
3年前
16

女子高生のふりする女(27)

 今年で二十八になる。世間的な言い方をすれば私はもう少しで高齢処女。おかしな話だ。二十八…

睦月
3年前
6

恐ろしいビジョン

 ある美しい女性が歩いていた。  頭髪が薄く、小太りで体格のいい中年男性が、その女の尻を…

睦月
3年前
3

点数

 私は山で育った。白い雲、高い空、色んな鳥の声。私はその景色を上手に説明することはできな…

睦月
3年前
2

厄介な手合い

 その男性は、知り合いの知り合いだった。四つ上の大学生で、眉間には深いしわが刻まれていた…

睦月
3年前
1

不登校と「いい人」

『ねぇ○○、相談事あるんだけど後で話せる?』  休日の朝、携帯を付けたらある友人から連絡が来ていた。私はそもそも電話が苦手だ。相手が考えていることが全然分からないし、間も取りづらい。何を言えばいいのかいつも以上に分からなくなるし、相手が何を言っているのかも、何を伝えたいのかも、よく分からなくなる。 『長話になるなら、会って話したほうがいい気がする。私、電話苦手だから』 『あー……それじゃあ○○の家に行ってもいい? 何時ごろ?』 『いつでもいいよ』 『じゃあ……』  その子は

公園にモンエナの空き缶が落ちていた

 夕食前の散歩をしているとき、モンスターエナジーの空き缶が、堂々とした佇まいで飾ってあっ…

睦月
3年前
4

花冠

 植物図鑑が届いて、楽しく読んでいると、急に思い出が蘇ってきた。  多分幼稚園児くらいの…

睦月
3年前
4

高校入試の合格発表で感じた吐き気

 私はこの話をして共感してもらったことが一度もない。まぁ本来、話す理由もない事柄だからだ…

睦月
3年前
5

恥ずかしい思いをさせないために

 中学生の頃の話、若い歴史の先生が授業中の小話で「日本人は、かわいそうな人や立場の弱い人…

睦月
3年前
4

ふたりの女

 ギィイイイン。通過列車の轟音が耳に痛く響いた。しばらく聞いてなかった音だからか、いつも…

睦月
3年前
1

復讐された者

 幸せを表現することに、ためらいを感じる。  「あなたの幸せは、私を不幸にする。私を傷つ…

睦月
3年前

論理的っぽい人

 とあるそこそこの学力の大学生の方と話したとき「この人と私は随分違う世界で生きているんだなぁ」と思った。  その人は、ものごとを「損か得か」「すでに定められた目標に近いか遠いか」「それに意味があるかないか」という基準でしかものを見ず、それ以外のことは全然無意味だと思っていると、はっきりとそう言った。  しかもそのうえで「自分以外の人間には、別のものが見えているらしいのは知っている。でも俺にはそれが見えたことがないから、それが嘘であるか本当であるか判別することができない。だか