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感想 華麗な復讐株式会社  ヨナス・ヨナソン こんなに笑える話しは久しぶりに読んだ。めっちゃ楽しい。ただし矛盾点とかはあります。

とにかくめちゃグチャ破天荒で楽しい。
モチーフは復讐。

復讐されるのはスウェーデンの画商の男。
思想的には右翼主義者。

娼婦に産ませた息子がいるが、顔が黒い。
娼婦のルーツに黒人がいたのだ。
差別的な画商ヴィクトル・アルデルヘイムは彼を嫌っていた。
大人になると、アフリカ旅行に誘い
ライオンとかがいる荒野に放置し捨ててくる。

黒人の息子など認めることはできぬ。
猛獣の餌にしてしまえというのである。

黒人差別のレイシストなのだ。

ヴィクトルは野心家で、師匠の店が欲しくて年若い師匠の娘を妻にし店を我が物とする。
師匠が死ぬとすぐに、妻を無一文で追い出す。
息子を隠していたアパートに追い出すのだ。

この2人が出会い、彼に復讐するのが本書だ。

そこに、復讐代行社の男や、アフリカで息子を助けて養子にしたマサイ族の呪術医の養父やらが出てきて
スウェーデンでおバカなドタバタハチャメチャコメディが発生するのです。

とくに、ムラから出たことのない呪術医が出てくるところからヒートアップしていく
彼の通貨は牛なのだ。
金という感覚がない。
マイナス15度の凍土に、ザバンナルックで現れてしまう。
右手には棍棒を持っての登場だ。

まず、手始めに画商の信用を落とす計画を実行する。
画商の倉庫の鍵を元妻が持っているのがヒントになり、そこにドラッグ・・・、実際は小麦粉。
大人のおもちゃ大量。羊を放置する。
そして、息子がアフリカの養父の家で盗んだ養父の書いた絵が2枚
これが有名な画家のタッチと似ていた。
それを贋作として、他の人に買い取らせようと画商がしている風を装い
警察に倉庫に捜査が入るようにしたのだった。

そこで画商は変態とみんなに思われ
不名誉なあだ名がつく

羊と寝る男

このネタで何度も何度も笑わせてくれる展開になる。

北欧では、獣と恋愛する文化があり
馬や犬と性行為をする人たちがいて
彼らは酷い差別にあっている。
前に読んだ 聖なるズー (集英社文庫) という本にあった。

レイシストに、同じ差別で仕返しするという展開。
しかし、この作者。
羊と寝るという笑いネタを、罪悪感なしに使用している風である。
たぶん、それも差別だということを認識していないのだろう。


留置所で画商は、アフリカから養子を訪ねてきてトラブルを起こしたマサイ族の呪術医と出会い
その絵が実は本物であると教えられ
サンドイッチ2個と交換。つまり、騙して絵を買い取る。

だけど、鑑定の偉い人がキリスト教を信仰する人で、羊と寝る男なんかの絵を鑑定できない
と拒絶。
鑑定して欲しいなら、証拠をもってこいと言う

そこで画商は、マサイ族の呪術医が画家の手紙や写真が家にあると言ってたのを思い出し
アフリカの彼の家から盗み出す

そこで呪術医はブチギレ
絵を騙し取られたことではなく、自分の写真を取られたことに怒るのが面白い。

生きたまま、蟻塚に顔を突っ込んで殺してやると興奮する。

そこから復讐が・・・・って話しでした。

問題は、この呪術医がジャムの瓶を画商に投げて殺してしまうところから
警察は、犯人を差別主義者として調べて
つまり、羊と寝る男だから、画商はみんなからネットで脅迫されていて
そこに犯人はいると見て

彼の元妻や、棍棒を投げる習慣のあるマサイ族や全財産を相続する息子を除外するという
あほらしい展開。

コメディだし、笑えたらいいのだろうが、この差別主義者の画商は
息子・・・、本当に血が繋がっているかもわからない・・・を
少なくとも母親が病気ということで後見人として大人になるまで引き取り
アパートで食料を与えて学校に通わせていたんだし
アフリカに捨てたのは酷いが
殺すほどではない。

妻に対する態度は酷いが
離婚しても金を与えたりアパートを用意したりと
罪悪感はあるようで、本当の悪党とは言い難い

そういう人を殺して
まったく罪悪感を感じず
息子だったんだ。財産は俺のものだという発想は
ちょっと、ドン引きしてしまう。




2022 7 18
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