見出し画像

感想 嘘と正典 小川哲 共産主義がなかった世界にしようとした表題作は、少し難解だが楽しい。タイムリーク系の話しが多いが、どの話しも斬新だった。



少し難解です。
ごちゃごちゃしています。
でも、SFが好きな人なら、こいつはすごいと思う短編集でした。

「魔術師」
「ひとすじの光」
「時の扉」
「ムジカ・ムンダーナ」
「最後の不良」
「嘘と正典」

の6作品が入っています。

表題作 「嘘と正典」 は突出して面白い発想のですが、
「ムジカ・ムンダーナ」や「魔術師」もかなり読み応えがありました。

「ムジカ・ムンダーナ」は、父の残した曲が鍵になっていて
それを調べていくと、音楽=金であり、すべてであるという南の島にたどり着きます
この不思議な世界観は、読み応えありです。

「魔術師」は、偉大な手品師である父と子供たちの話し
父が、一世一代のタイムトラベルマジックをします
過去に戻るというマジックです
この物語、最後の最後まで目が離せない
最後に、姉のとった行動が・・・

「嘘と正典」は中編です。
これは、共産主義をなかった世界にしようとするものです
共産主義は、マルクスとエンゲルスによって作られた主義ですが
化学の発明だと、その発見者がいなくとも、その発見は別の誰かによって、いずれ発見される運命になるのですが
ディケンズのオリバーツイストなどの作品は、ディケンズがいなかったら誕生しません

共産主義もエンゲルスがいなかつたら、なかったかもしれない

エンゲルスは、過去に絶体絶命の危機に陥っていたが、たまたま、ある人がそこに居残っていて、訪ねてきた彼を目撃していたので助かった、罪に問われなかった。という事実があったようです

もし、エンゲルスが消えたら・・・

時空間通信という技術がある
これは未来から、過去にメッセージが送れるのです
すると、容易に歴史が改変されてしまいます。

こんな技術は困りますね
タイムリークものの映画や小説でも、過去を変えると未来が変わって大変な結果になります
こんな時空間通信なんてことができると改変しまくりになり混乱するのです

この発想とても面白かった。
さすが、小川さんという感じの短編小説群です。
おすすめです。

2023 11 27



この記事が参加している募集

読書感想文

SF小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?