書評 展望塔のラプンツェル 宇佐美まこと 社会問題をこれでもかというくらいに、てんこ盛りにした悲惨な物語だが光明はある。
子供の貧困や親によるネグレスト、性的虐待、暴力虐待死の問題がクローズアップされてきたのは最近だと思う。
本書の冒頭、児童相談所職員松本とその相棒が登場する。
その物語に、出てくる虐待疑惑のある保育園児が
晴という子供だと、私たちは、まず思ってしまう。
だが、この物語には錯覚が利用されていて
時間軸が違う。
つまり、松本の物語は現在であり、晴とその周辺のメインストーリーは過去なのである。それが松本と晴が同一人物であるというラストの種明かしで明らかになり
読者は驚くのである。