発達障害のある子ども達。何ができればピアノが弾けるようになるの?〈チェックリスト付き〉
あまりにもわからなさすぎた数年
20年前、知り合いの方から、5年生のダウン症の女の子にピアノを教えてほしいと頼まれたとき、私は「経験はないけど一人くらいなら」と、簡単に考えていました。
でも、だんだんといろんな障害を持つ子ども達が増えていくにつれて、今まで「当たり前」だと思っていたことが、「当たり前」ではない常識に、自分自身が振り回されるようになりました。
・出来て当たり前だと今まで疑いもしなかったことが出来ない。
・この年齢なら理解できるだろうと思っていたことがわからない。
・レッスン室の棚を、全て開けて回る。
・寝っ転がって私の足を蹴飛ばす
・身体が固くて手が上に上がらない。
・言葉が不明瞭で、何を言っているのかわからない。
・・・
ご両親は「ピアノが弾けるようになること」を期待されていたので、定型発達の子ども達でも習得に時間がかかる楽器を、何ができればいいのか?何を目的にすれば時短になるのか?ピアノも弾けるようになりつつ、能力を伸ばしていくことになるのか?
いつも考えていました。
数年かかりましたが、多くの子ども達を教えながら、その中からデータを録り、自分のレッスンへの指針を作りました。
それがこの「ピアノ演奏のためのチェックリスト」です。
ピアノ演奏のためのチェックリスト
初対面の時に、お母さんに書き込んでいただいたり、毎週のレッスン時に私もチェックしたりしています。
今のその子を早く知りたい。
という気持ちがいちばん。
次は、
このチェックリストがお互いの目標になれば、
という気持ちで作りました。
1.言語.知識
2.数量
3.認識
4.手先の器用さ
5.運動能力
6.コミュニケーション
7.家庭環境
の7項目です。
これらがピアノを弾くうえで、どの演奏能力と結びついているのか?
関連付けて行きました。
1.言語.知識〈リズム感を養う基礎を作る〉
この中で特に大切だなあと感じるのは、8の、春夏秋冬、月日、曜日の認識を持っている、です。季節感が伴ってくると、飛躍的に子どもの知能が上がるのを感じます。
ご家庭で、季節の行事をかかさない。特に日本の行事は大切です。
レッスンに行くときには「何日?何曜日?」と聞いてもらう。
カレンダーを頻繁に意識させる。
など、お母さんにお願いしています。
2.数量〈楽譜や理論を覚える基礎を作る〉
指は5本なので、5まで数えられれば大丈夫なようですが、音符も読めるようにするために、全てに取り組んでいます。
3.認識〈ピアノ練習のために〉
右手左手の区別がつかない、つきにくい子はたくさんいます。
楽譜(大譜表2段)は、右手が上、左手が下、で、それが右方向に流れ、
下の段に移り、右のページに移ります。
こう書くと難しそうですが、様々な工夫で、みんなできるようになります。
4.手先の器用さ〈ピアノ演奏のために〉
ピアノ演奏は手先が器用じゃないとできないのか?
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できます!私は子どもの頃、不器用でした。
1本ずつ指を動かせて鍵盤を叩くピアノは、それぞれの指の独立になります。また、〇を正確に書けると、筆圧がしっかりしてきます。
打鍵力が付くので、書くことはおススメです。
5.運動能力〈正しい姿勢で座るために〉
全ては姿勢から始まる、と言えます。集中のために、良い音のために、
姿勢作りは、徹底してやっています。
公園でぶらんこ、すべり台、など、お母さんにお願いすることもあります。
6.コミュニケーション〈レッスンを円滑に進めるために〉
過度のこだわりや多動にも対応できないと、レッスンは進みません。
できることと、できないことに分けて、働きかけていきます。
7.家庭環境
先生だけががんばっても、子どもだけがんばらせても、また、お母さんだけががんばっても、レッスンは上手く進んでいきません。
3者が同じくらいの熱量で取り組み始めた時、目に見える良い結果が出始めます。
探せば、こんなチェックリストは、いくらでもあるのかもしれません。
でも、私は私が使えて納得できるものに、こだわりました。
ピアノを習わせたいと思う理由の一つに、「能力の向上」を期待されているご両親は多いのですが、逆もまた真、也。で、ある程度のことができてこそ、ピアノも進んでいきます。
なので、私はピアノを教えながら、同時にやることにしました。
私はドレミと書いてあるシールを鍵盤に貼ったり、小学生になっているのに発達障害があるからと、3歳児のような対応をして教える先生が好きではありません。
誤解を恐れず言うと、たぶん、発達障害の勉強のし過ぎです。
あれこれマニュアルを読めば読むほど、診断名に囚われ、その子自身を見る力が衰えていくように思います。
みんな、ちょっとした+αの働きかけで、両手で弾き、教則本をこなし、
発表会にも出演できるようになります。
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