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一番の理解者

昼下がりに目覚めた。

何も予定のない一日。
可能性を秘めた一日。

さて、何をしよう。

カーテンを開けたら
暖かい光が差し込んで、
きらきらと
6畳1Rのわたしのお気に入りの空間を
美しく照らした。

何かいいことが起きそうな、
起こせそうな気がした。

納豆ごはんとお味噌汁。
朝食とも昼食ともつかない食事を
そそくさと済ませ、
これからの空白をどう満たそうか考える。

とはいっても
すぐに行動を起こす気にもなれなくて
手始めに、お気に入りのお香を炊く。

ゆらゆらと、
心地よい香りを運びながら消えてゆく煙と
無機質でまっしろな壁を
相も変わらず
特別なものに演出してくれる陽差しを眺め、

「ああ、今日も世界は美しい。」と、
予兆もなく涙が溢れた。

なにか特別なことをせずとも
刹那的な美しさを味わうことができる幸せに
また涙した。

この美しい世界と、
そこに存在している自分とに、
とめどなく
感謝のきもちが溢れた。

自分の世界に浸ることもだいすきだけど、
こんなにも心地よい日は
外に出るほかない!と
内なる自分が声をあげた。


まずは、
すませなければならない用事のために
郵便局へ向かおう。

その道中も、やはり世界は美しかった。

雲ひとつなく
意識をとぎ澄まさなくとも、
心地のよい秋を感じられた。


さて、用事は終えた。


家に帰ることも、
このまま120点満点の秋を味わうことも、
なんでもできる。
まだ15:00だ。

何の気なしに、上映中の映画を調べてみる。

なんと、2駅先の映画館で
30分後に、
しかも今日上映されたてほやほやの
映画がやるではないか、、、!

帰路につこうとしていた足取りをとめ、
反対方向へ向かう。


気がついたら電車にゆられていた。


なんでもできる日。
可能性に満ち溢れている日。

あまり調べずに観たんだけど
最初から最後まで
自分が驚くぐらいには涙がとまらなくて。

いい映画と出会えたなあ。
思わぬ出会いだった。

時間は18:30。
早めの夕食を、どうしよう。

家でいつもどおり済ませてもいいし、
惹かれたお店にふらっと入るのもいいな。

ふと目を傍らに向けると、
ショーケースに
あまりにも魅力的なステーキのサンプルが
並べられていて

しまいには
にんにくとブラックペッパーの匂いが
鼻を撫でていったもんだから
是が非でも、その味を体感したくなった。

値段は1480円。

まずまずの味だった。
これもまた、出会い。

自宅にもどり、
今日出会った作品と
その世界の中のひとりひとりに
想いを馳せる。

そして
それを自分のことばに記す。

一日の出来事に感謝しながら、
たくさんのものと出会い、
感じ、

たくさんはたらいてくれた身体を
心地よい温かさのお風呂で労る。

おきにいりの音楽と、
再び、おきにいりのお香と、
おきにいりのコーヒーと、
おきにいりの本をお供に、
またひとりの世界に浸る。


わたしが、わたしに、
「今日も楽しかったね。しあわせだったね。」
そう、話しかける。

わたしが、わたしの一番の友人で
一番の理解者で
いつもそばにいてくれれば
きっとずっと孤独じゃない。

そう感じられた、今日という一日。

今日の出来事を忘れなければ、
きっとこれからも
やさしく、しなやかに生きていけるだろう。


忘れない。

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