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1分で読めるショートショート18・カフェのオープン

「今日はオープンの日だよ。準備はできたか?」
店長の声に、私は頷いた。新しいカフェのオープンに向けて、一週間かけて店内を飾り付けた。メニューも工夫した。自信があった。
「それじゃあ、いよいよ開店だ。お客さんを待とう」
店長は笑顔でドアに向かった。私もついて行った。ドアの前には、早くも行列ができていた。人気が出そうだと嬉しくなった。
「ようこそ、カフェ・ミラージュへ!」
店長はドアを開けて、お客さんを招き入れた。私も笑顔で迎えた。最初のお客さんは、若いカップルだった。彼らはメニューを見て、注文した。
「二人とも、カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーをください」
「はい、かしこまりました。お待ちください」
私はカウンターに戻って、コーヒーを淹れた。カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーは、私のオリジナルレシピだった。秘密の香料を加えて、不思議な味と香りを作った。お客さんに喜んでもらえるといいなと思った。
「どうぞ、お召し上がりください」
私はコーヒーを運んで、カップルに渡した。彼らはありがとうと言って、コーヒーを飲んだ。私は彼らの反応を見た。
「うわ、すごい!これは何だろう?」
「本当だ、不思議な味だけど、おいしいね」
「香りもいいし、なんだか気分がいい」
「ねえ、このカフェ、ミラージュっていうのは、幻の意味なの?」
「そうかもね。でも、いい幻だよ」
彼らは笑って、コーヒーを飲み続けた。私は嬉しくなった。私のコーヒーが気に入ってくれたようだった。他のお客さんも同じように感じてくれるといいなと思った。
「ありがとう、ごちそうさまでした」
カップルはコーヒーを飲み終えて、席を立った。私はレジに行って、会計をした。彼らはお金を払って、店を出た。

私はドアの外に目をやった。
そこには、誰もいなかった。
行列は消えていた。道には、車も人もなかった。静寂が広がっていた。
「えっ、どういうこと?」
私は驚いて、店長に聞いた。店長は笑って、私に言った。
「ああ、それはね、カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーの効果だよ。飲むと、現実から離れて、夢の世界に行けるんだ。だから、あのカップルも、今は夢の中にいるんだよ」
「ええっ!?それって、本当なの!?」
私は信じられないと言った。店長は頷いて、私に言った。
「本当だよ。だって、このカフェ自体が、夢の中にあるんだから」
「はぁ!?」
私は呆然とした。店長は笑って、私に言った。
「君も、カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーを飲んだんだよ。だから、ここに来たんだよ。でも、心配しなくていい。夢はいつか覚めるから。それまで、楽しんでいろよ」
「でも、でも……」
私は言葉に詰まった。店長は私の肩を叩いて、言った。
「さあ、次のお客さんが来るよ。準備はできたか?」
私は頷いた。新しいカフェのオープンに向けて、一週間かけて店内を飾り付けた。メニューも工夫した。自信があった。
「それじゃあ、いよいよ開店だ。お客さんを待とう」
店長は笑顔でドアに向かった。私もついて行った。ドアの前には、早くも行列ができていた。人気が出そうだと嬉しくなった。
「ようこそ、カフェ・ミラージュへ!」

夢の中でもカフェを飲んだ私は、永遠に繰り返す・・・。



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一見さんのお客さんです。


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