インド物語−コルカタ⑥-

画像1 列車の中で昨日の紳士達の親切を何度も反芻した。最期に人に親切にしたのはいつか思い出そうとして、いつまでも思い当たらなかった。諦めた夢のよすがに拘って他人への配慮もできない日本での暮らしの長さに気がついて涙が溢れた。私は一体何をやっていたんだっけ。後悔に心を覆われて、建物や人が後ろに流れていく窓の外を見ているフリをしながら、止まらない涙に一つ決心をつけた。バラナシに着くまで3人の日本人と同席だった。通りを挟んで向かいの席のインド人親子は静かに私達を見ていた。母親は頭から爪の先まで美しい人だった。

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