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【連載詩集】No.10 怒り

 破壊的に怒る人々と

 僕はよく時を共にした

 社会的に未熟だった

 二十代の頃の僕は

 なぜかそうした

 強烈な個性の持ち主のもとで

 あるときは雇われ

 あるときは鞄を持ち

 生き残るための処世術を

 学ばされることになった


 彼らは毎日のように

 烈火のごとく怒った

 その怒り方は

 堅気の人間の

 怒り方ではなかった

 周りに近づくもの

 すべてを焼き尽くすように

 怒って

 怒って

 怒りまくった

 そして

 時には誰かを

 殴ることさえあった


 なぜあんなに

 怒り続けるのか

 理解できなかった


 彼らが怒り出す時

 僕はただ黙って

 怒りが通り過ぎるのを

 待つほかなかった


 僕は絶対に

 あんな風に

 感情に任せて

 人を傷つけるような

 人間にはならない

 そのように

 強く

 強く

 心に決めて

 生きてきた


 しかし

 この歳になって

 改めて

 彼らの怒りを

 思い出すと

 そこには

 何か

 当時では

 理解できなかった

 怒りに対する

 共鳴のようなものが

 あることに気づいた


 僕は

 あれから

 修羅を

 幾度も見て

 年齢を刻み

 いつしか

 他人の意志に

 振り回されて

 怒りをぶつけられ

 途方にくれる側から

 自らの意志に

 従って行動し

 内なる怒りを

 燃料にして

 猛烈に生きる側に

 なっていた


 あの強烈な

 男達が残した

 疾風のような怒りの影

 その残像の

 侘びと寂びが

 しみじみと

 僕の内なる魂に

 重なるように

 沁み込んでいる

 そんな風に

 思うのである


 そして

 僕もまた

 形は違えど

 人生と闘う為の

 強烈な怒りを

 胸に秘めて

 今日も

 謙虚さを忘れず

 誰も殴らず

 誰にも怒鳴らず

 燃える鉄火を

 握りしめるようにして

 今を

 轟々と

 生きている

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