「世間体」とハラスメント蔓延社会

日本は「世間」の圧、同調圧力が強い国だなというのは昔から感じていたことではありましたが、少し前に『世間の目』(佐藤 直樹著)という本を読み、その考えがさらに増強されました。この世の中で最大の権力は銀行家をはじめとする支配層にある…という見方もある一方で、精神的なレベルでは「世間」というのも同じかそれ以上の権力を誇っているものだなと感じます。生物としては健康に生きられても「世間」の中で生きられなくなり、追い込まれてこの世を去る人も大勢いますし、世の中にある種々の悩みの多くが「世間」や「世間体」に関わる問題なのではないかと思うほどです。

そして、最近読んだ『ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛 (光文社新書) 』(安冨 歩、本條 晴一郎著)という本も、この構造の理解を深めるのに役立ちました。本を読んで気づいたのは、幼少期に親によって「教育」「しつけ」と称して不適切な養育をされることにより、「世間」という外的規範に翻弄される人生を送ることになってしまう、ということでした。子どもは自分の感覚を否定されることにより、(親からの)外的なメッセージが正しいと思い込んでしまいます(それがハラスメント)。そうして、自分の感覚に自信が持てなくなり、いわゆる「ありのままの自分」でいられない状態になるため、本来の豊かな情緒や感受性、良心やモラルが失われ、ある人はサイコパスのようになったり、またある人はうつ状態になったりするのだと思います。

全部のケースがそうというわけではありませんが、よく社会問題として話題に上る「引きこもり」というのは、「世間」による影響が強い問題なのではないかなと感じています。引きこもりになってしまう方の親は、世間体を気にするような、外的規範にとらわれた人が多いように思います。親によって、「親の期待通りになれ」と育てられ、自身の素直な感情や感受性を否定するようなメッセージを受けて生きてきた人の中で、繊細で心が優しく反抗できないような方が引きこもりになりやすいのかなと感じます。親からの言葉の暴力によって、生気が失われていってしまうんですね。世間体を気にする親ですから、引きこもると益々子どもを恥じたり、隠したりするようになり、子はさらに自尊心を失われ、殻に閉じこもってしまいます。

そこまでいかなくとも、ほとんどすべての人が何らかの不適切な養育を受けて自尊心を傷つけられ、「ありのままの自分はダメだ」と思い込んで生きているので、「世間」という外的規範のメッセージは強力に作用しているように思います。人々の自尊心の低さと、「世間」の権力は比例するのではないかと思うほどです。自分の感覚を信じられなくなるということは、社会から「良心」が失われ、理不尽を許容してしまい、蔓延する傾向も生まれます。「こんなことで怒っちゃいけない」「反抗しちゃいけない」「上司や先生の言うことは絶対だ」…などと思ってしまうことで、理不尽に対抗する力を失い、生気を奪われ、死んだ目をして虚構の世界に生きることになってしまいます。

不適切な養育を受けた人をアダルトチルドレンと言ったりしますが、総アダルトチルドレン社会では人々の幼児性が問題になることが多く、昨今のカスタマーハラスメント、クレーマー、炎上、何でも人のせいにするなど、精神的に幼い人々による不快な出来事も多発する事態になります。「世間」がどうのとか、「世間体」を気にして生きる人というのも、本質的なことには目を向けず、外的規範を絶対視して生きている精神的に幼い人々であり、不適切な養育による人々の精神的な幼さが、社会全体を疲弊させ、ある時は自らの子の心を殺し、誰かを自殺に追い込んだりしていると言えると思います。

拝金資本主義社会において、ハラスメントが蔓延し、「世間」を絶対視する社会傾向というのは支配者にとってとても都合がよく、人々の支配が容易になります。家庭での養育に加え、学校教育でもそういった刷り込み・洗脳を行っているため、かなり効率的に自尊心が失われた人間を大量生産することが可能です。「理不尽」を「厳しさ」と言い換え、理不尽に耐えることが大人になることだという刷り込みをしたり、良心やモラルに反することでも上司の指示の上でやらせたりなど、やりたい放題できます。仕事・お金が最重要と人々に思わせることで、家庭を破壊し、さらに不適切な養育によって自尊心を欠如した人間が生まれていく悪循環です。この悪循環を止めるには?人々が自分の内側を見つめ、仕事より家庭、お金より愛に価値観をシフトする以外にないのではないかと感じています。

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