ティルドラス公は本日も多忙③ 冬終わる日に人来たる(8)
第二章 パスケルの遺言(その4) 「今回の戦いで、各国が毒気を使った兵器の有効性に気付いてしまった。」フィンケルは続ける。「報せを受けて、早くも一部の国が硫黄の生産や流通を握ろうと動いている。ベルガー伯国では、イヴォンプルでの硫黄採掘と領内での商取引を、自国と、同盟国であるアシュガル領・ミストバル領の者に制限する布令を出したらしい。」ベルガー伯国はハッシバル家から見てエル=ムルグ山地を越えた北西に位置する国であり、その名も「硫黄の山」を意味するイヴォンプルは、そのベルガー領内