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AI vs. 教科書が読めない子どもたち / 新井紀子

AIがついにイラストレーターさんのような絵を自動生成するようになりました。クリエイティブも、機械に場所を譲らなくてはいけないのか。私の書きたい文章も、いつかボタン一つで作られてしまうものに変わっていくのか。そんなじわじわとした焦りをもし感じている人がいたら、この本をおすすめしたいです。

そもそもAIについて勘違いをしていないか。一方で自分や自分のこどもたちは何に向かって努力していけばいいのか。向き合うことのできる本です。

読解力こそ、AIが最も苦手とする分野であることは、この本の中で再三述べてきました。しかし、残念なことに多くの人が、AIに対して優位に立てるはずの読解力で、十分な能力を身につけていません。(p.272)

真の「AI」はできない

AIが将棋でプロに勝った、美しいイラストを生成する、小説の続きを書いてくれる。そんなニュースが近年は次から次へと飛び込んできます。そして私たちの多くは、AIが人間を超える日(つまりシンギュラリティ)が来ると少なからず恐怖を抱いたりします。少なくとも私は、最近のAIの万能感から漠然とそう考えていました。

しかし、本書で教授は、シンギュラリティは来ないと主張します。情報に踊らされる凡人としては、へ?そうなの?という感じです。

シンギュラリティとは、ここではAIが自分だけの力で自分より能力の高いAIをつくれることと定義されています。今私達がAIと呼んでいるのはほとんど「AI技術」のことで、それには能力の高いAIを作成するような技術はないといいます。

じゃあ安心なのか?

それでは仕事を奪われないのか、安心できるのかと思ってしまうそうですが、どうやらこれはまた別問題。近いうちにロボットは仕事を奪います。アメリカでは約半数が仕事を失う恐れがあるという研究もあるのです。日本でも銀行業務へのロボットの進出があったりと、現実に進んでいる現象です。

着実にロボットは人間より機械的業務の生産性がよく、人間は取って代わられます。それではロボットが苦手なことは何なのか。それは東大合格を目指す東ロボくんの挑戦から見えてきます。

スパコンで東ロボくんは賢くはならない

東ロボくんの研究に際して、スーパーコンピュータを使うという話が上がりました。しかし、ある程度のコンピューターでできない問題は、スパコンでも解けないといいます。それは、そもそもの問題文を数式にすること、あるいは前提知識の大量学習がAIの最大の課題だからです。数式さえできれば解けるのです。事象を数式にするのが最大に困難なのです。

人の幸せの数式化はできるでしょうか。多くの人が感覚的にできないというでしょう。そして、事実これはできないと言えると思います。

つまり、文脈を読むことや、例えば「人は死んだらそれ以降行動ができない」のような当たり前が、AIにとっては自然に学ぶことが難しいのです。逆にそれが人間の強みだといいます。

子供達には、AIが苦手な読解力こそ必要だが…

それでは今の子供達に充分な力はあるのでしょうか。本書で教授が行った読解力を図る問題では、危機的な状況が伺えます。ロボットでもできる知識の詰め込みにはもはや意味がないのです。それなのに教育は変わっておらず、将来ロボットと仕事を奪い合う能力をコピーしようともがく時間を生んでしまいます。

教科書なんて読めるだろ、と思っている方は思い出してください。少なくとも私は高校時代、教科書が言ってることがそもそもわかんねぇわ!と試験前に投げ出した記憶があります。そもそも今って文章が読めない人が増えたなんて言われていますよね。子どもたちだけの問題ではなさそうです。

シンギュラリティが来なくても、とっくに人間の仕事は機械に変わられ始めています。機械では代替できない人間の強みを伸ばすため、文章でも行間でも相手の気持ちでも、読み取る力を意識して過ごしてみるのもいいかもしれません。


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