マガジンのカバー画像

story

66
story一覧
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

story 炎と風と、雨と大地と

story 炎と風と、雨と大地と

炎は燃える
上へ上へと

辺りのものを巻き込んで
徐々に盛んになっていく

風を起こして
巻き上がる

俺の力はすごいだろう
今をときめく大将だ

そこへ静かに
雫が落ちる

ポツリポツリと
辺りを濡らす

私を呼ぶのは
何処の誰?

冷まして欲しいと
呻くのは…

雨はそぼ降り
辺りを濡らす

あぁ、何するんだ
俺の火が…

どんどんどんどん
消えていく…

風はいつしか治まって
潤んだ大地が息

もっとみる
story 地の民

story 地の民

儂らはここで生きてきたのだ

あの星が見えるかい

古来あの星は天にあって
変わることなく
儂らを見てきた

儂らもまた
あの星を見てきた

根を張り潜む
蔓草のように

風雪さえも
唄に変えて

儂らはここで生きてきたのだ

story 言の葉と少年

story 言の葉と少年

ただのひとりごとだよ
じぶんでもわからないんだ

少年はポツリと言った

だからあとでよみかえすんだ
それはどこからきたのかと

それからじっくりひたるんだ

このなまあたたかいかんしょくが
ボクもしらないボクなんだ

story My grandma

story My grandma

おばあちゃんはひとり
山で暮らしていた

薬草や香草
木の実なんかを集めて
昔ながらの煎じ薬を作っていた

山道を登って少し開けたところに
おばあちゃんの家はあった

樹々の切れ間に
木漏れ日がさして

近くの沢から
涼やかな風が吹いてくる

時折り小さな動物たちが
家の側を横切って行った

鳥たちは楽しげに
囀りながら空を舞った

幼い頃の私にとって
そこはまるで別の世界に来たようで

少し怖い

もっとみる
story 星の船

story 星の船

少年がひとり
静かな夜の浜辺で
大きな月が波間を照らすのを見ていた

遠く近く打ち寄せる波が
重なり合うように音を響かせている

少年はふと
何かを聞いたような気がした

…まもなく開く…

活気のある慌ただしさが
少年を包み込んでいく

…荷物は積んだか、そろそろ船出だ…

男たちがそれぞれの持ち場で
忙しく働いている

…船員はそろったか…
…まだひとり、来ていません…

少年は不意に
肩を強

もっとみる