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フリー台本(オリジナルSS)

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オリジナルSSまとめ。 フリー台本としてお使い頂けます。 5〜10分ほどで読めます。
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2024年2月の記事一覧

青色のおまじない【オリジナルSS】

青色のおまじない

「ねぇ、リボンこれにしようよ!青色ってちょっとセンス良くない?」

「おそろいにするの?せっかく交換するのに?」

「このリボンがいい!ね?だめ?」

このときの私は半ば強引だったかも知れません。それでも、どうしても彼女に青色のリボンを選ばせたかったのです。

彼女の名前は佳乃(よしの)と言います。高校に入学し、私の一つ前の席に座っていた女の子です。私の目に佳乃は、外見も中身も

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罪と罰【オリジナルSS】

罪と罰

日付が変わる少し前、妙にさっぱりした顔で彼は帰ってきた。

「ただいま〜。あ、起きてた?」

「もう寝るところだったけど…今日は早かったんだね。」

「さすがに毎週部長になんか付き合ってらんないよ。」

彼は緩めたネクタイを外し、冷蔵庫から炭酸水を取り出す。いつもならすぐにシャワーに入ってしまうのに、今日は早く帰ってきたから?私も寝るのをやめて、もう少し起きていることにした。

「酔って

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境界心中【オリジナルSS】

境界心中

彼はごく一般的な常識を持った真人間だった。それと同時にどうしようもない屑でもあった。

「皐月くん、もう私頑張れないよ…。今日まじで怖かったんだから…。」

「ごめんな、俺が遅すぎた。今度は絶対まりんのこと助けに行くから。だから一緒に頑張ろう?」

何度も何度も同じように宥められ、彼は優しく私の頭を撫でた。私はお金のために汚い親父どもの「案件」に出向かう頻度が増えたが、心を保つための薬

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かみともにいまして【オリジナルSS】

かみともにいまして

母と逃げるように越してきたこの町には、真新しい教会があった。近所の人は訝しがって近づかないほうがいいと新参者の私たちに告げていたが、ある時郵便受けに入っていた子ども会の知らせに、私は小学生ながら興味を持った。母はそこに行くことを許してはくれなくて、でもどうしても行ってみたくて、母が仕事で留守にしている隙に教会へ向かった。まだ木の匂いがするその教会にいたのは、背の大きな神父さん

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