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読んだ本/『笹の舟で海をわたる』『いちばんここに似合う人』

じっくり小説をと思い、年末から少しずつ読みました。
長編と短編の2冊です!

『笹の舟で海をわたる』 角田光代

長編。単行本のこの装丁がきれいで、ずっと気になっていました。

文庫だと、表紙は戦後世代をイメージしたワンピース姿の女性。
中身もその通り、幼少期に戦争をくぐり抜けた世代の、東京の女性を主人公とした一代記です。

女性2人のお話だと聞いたことがあり、てっきり女同士のドロドロがメインかと思っていましたが、そうでもなかったです。

主人公がなかなか受け身な性格なのもあって、特に後半は、確かに笹舟に乗って流されていくような、社会が目まぐるしく変わる、何ともいえない感覚がありました。

戦争に大きく影響された時代のせいもあるでしょう。
けれど、もしかしたら現代でも、本当の人生の主役は自分なんかじゃなく、「時間」とか「時代」といった、もっと大きな他の何かなのかも……?  と無常を感じました。

昔は大人が「ああ、もう1年過ぎちゃった」と嘆くのを聞いては、「そんなつまらないこと言わないで!」と反抗的に思っていましたが、今では自分も大人になり「時の流れ、早い……」と実感するようになってしまった。うう。

『いちばんここに似合う人』 ミランダ・ジュライ

短編集です。
幸せなお話ばかりじゃなく、むしろ寂しくて苦いお話がほとんどの印象でしたが、どこかにずっと流れているこの温かさは何だろう。

主人公たちはみな不器用で、結構ピントのずれた(と、社会的には見なされそうな)人物です。

読んでいると、スマートな振る舞いができなかったり、歳に見合うだけの常識や社会経験がなかったりのコンプレックスについて、「そういう人もいていいよね」とふわっと認めてもらえる気がします。
こういう気持ちを正面から描いて、世に出してくれる作家さんがいて、同じ時代に生きていられて良かった…! としみじみ思います。

(※余談ですが、以前ヨシタケシンスケさんの展覧会を観たときも「この後ろめたさを表現してくれる方がいて嬉しい…!」となりました。堂々と言えないような気持ちにも焦点を合わせて、ちゃんと描いてくださってるんですよね)

物語自体も文章もすごくクールでかっこいいんですけど、優しいんです。
表題が「いちばんここに似合う人」なのが嬉しい。

ちなみに、数年前に読んでからの再読でした。
初読時は『何も必要としない何か』みたいな勢いのあるお話が好きでしたが、今回は『その人』『ロマンスだった』のようなやわらかくて強いお話に惹かれたなあ。読書で自分のちょっとした変化を知るのも面白いですね。

同著者では『あなたを選んでくれるもの』(こちらは著者視点のドキュメンタリー)と、監督&出演の映画『ザ・フューチャー』もよかったです。
(映画は以前アマプラで配信されていたので、また配信されるかも)

ひきつづき、ネットサーフィンの時間を少しずつ減らして、読書や創作の楽しいことに打ち込む時間をもっと増やしていきたいなあ。

皆さんおすすめの作品も、ぜひ教えてください!

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