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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2021年4月の記事一覧

TomoPoetry、消えかけた記憶の出発。

TomoPoetry、消えかけた記憶の出発。

角を曲がる
影にはいる
アルバムを閉じる
黒い壁に囲まれた
そのなかにガラスの部屋
一瞬の記憶
笑う目
日焼けした手
そこであなたは産まれた

毎晩見る白い壁
赤い
箒星を従えて
踊る少女
青い陶器には
パッションフルーツのイエロー
ランブタンのホワイト
種は
銀河系の回転に
スムーズに入る
そこからは
誘惑の道
一度舐めた果実は
あなたのなかで
種子を植えていく
喉に
胃に
生殖器に
芽が出るの

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TomoPoetry、空の隙を輝かせ。

TomoPoetry、空の隙を輝かせ。

空を裂く
空の向こう側を覗く
そのために飛ぶのは
鳥ではない
声ではない
時ではない
剣ではない
空が割れる鋭い音ではない
空はすでに裂けている
鳥は
隙間を輝かせるために飛ぶ

世界を裂く
世界の本質を探る
そのために走るのは
風ではない
地軸ではない
欲望ではない
悟りではない
炎ではない
世界はすでに割れている
ひかりは
闇をあきらかにするために射す

ひとは
思いを引き裂くために
線を引く

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TomoPoetry、かなしみのひとかけら。

TomoPoetry、かなしみのひとかけら。

五百年磨かれたナイフが
スペインのハムを
うすく
スライスする
嵐で裂けた
帆のように
切ること
割くこと
千切ること
存在証明書を破るように
危険なことだ
裁断した過去は
クリームソースをかけて
フォークではこぶ
火の窯へ
宣告するのは
飢えた祖先だ
子孫を
スライスする

地球儀を解体する鋏で
ずわい蟹の脚を
ほそく
割いていく
民族が
生き抜いていく道の
細さに
暗さに
湿り気に
干からびた

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TomoPoetry、あなたが去りゆくとき。

TomoPoetry、あなたが去りゆくとき。

あなたが去りゆく時
わたしは飲んだくれていた

あなたともに
ぶら下げた野菜も
底で潰れた希望も
冷凍した絶望も
どろどろに
なっている
多分
あなたの希望と絶望は
誰かが拾いあつめる
躑躅の花弁の
あざやかさ
春雨で
茶色に
溶けはじめ
地にしずむように
顔を
花の色に染めたのは
夢だったのか

ただの夢だったのか
あなたが去っていった空も海も夢だったのか

わたしが目を覚ました時
あたたかい海

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TomoPoetry、鳥が目覚めるとき。

TomoPoetry、鳥が目覚めるとき。

鳥が目覚めるとき
世界は
いつも燃えている あるいは
燃えた黒い炭 あるいは 
灰色のフイルム
純白の
死骸
馬が砕く
装甲車がこなごなにする
そのあとを
ひとびとは托鉢用の
器を持って歩く
器のなかには
忠誠心のバッジ
ウルトラマンのような
裏切りを指摘されたときの
弁明書
東京観光案内のように
カラフルで簡明
死刑宣告を受けたときのための
移植ゴテ
躑躅のような
アイディーカードを立てるため

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TomoPoetry、空から降ってくる。

TomoPoetry、空から降ってくる。

空から降ってきた
炎が
炭が
砕けた万華鏡が
マシンガンを積んだミニカー
葬儀の手配書
貸衣装のチラシ
ゴミ処理の案内
わたしの
記憶は砕いて海へ
名前はジグソーパズルにして幼稚園へ
肉体については
空白
犬の肉体については
月夜の
机解体工場へ
魂についても
空白
戸惑いの跡が
青インクの滴りにある
多分
空あるいは銀河系の外へ
最後に
チラシは
焼却炉へ
空といっしょに入れてください
の一行

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TomoPoetry、どこかで待っているあなた。

TomoPoetry、どこかで待っているあなた。

どこまで歩いたか
あなたは
わたしは片足で立っている
次に
足裏を付けるのは
どの地図
装甲車が曲がった
ギリシャの
次の時代の地図 あるいは
鉄条網の文字を
掘り込む
砂漠の岩
掘りかえすのは
数百年後
だれも読む意思がない頃
既に
昨夜死者から
受け取った石板は
線路に砕かれた
わたしは
あなたの位置を
葬儀のモノクロ写真から
推測する

あなたには既に
両脚はない
あなたはどこに浮いているの

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TomoPoetry、空に欠けている、何かが。

TomoPoetry、空に欠けている、何かが。

朝 眼が覚めると
あなたは
あおく透明な皮膚
透きとおった
肉体
蒸発しつづける記憶
それぞれを掴もうともがき
シーツの上で
溺れている
既に
星の中心の
丸い硝子ボールのなかに
浮いているのは
あなたの恋人 あるいは
父親か
まだ生まれていないこども

生まれてくるのは
こども
とは限らない
茹で卵や
花火やチューリップ
どれにも鋏を入れてはいけない
あなたは探している
白や赤
踏み潰した絵の具

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Tomo Poetry、空のさらに上を渡るもの

Tomo Poetry、空のさらに上を渡るもの

あなたが倒れた時
あなたを棺に横たえた時
棺がなく
湿った泥炭地に
あなたを横たえた時
空を飛ぶものはなく
雲も
太陽もなかった
一枚の回転扉
鏡に写っているラインダンス
青い血が
地図のようにながれる
手のひら
それらの上を
渡っていったのは
何だったのか

未来から
未知の時間の方へ
捻れながら
渡るもの
永遠の端を
引っ張り出すように
海底から
回転する星へ
練り上げられ
炎に投げられるもの

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TomoPoetry、もう生き返りたくない、生きすぎた長く。

TomoPoetry、もう生き返りたくない、生きすぎた長く。

もう生き返りたくない
生きすぎた
長く
深く
母の声
父の声
とおい祖先の声
わたしの頭で
反響する
わたしの頭の世界の
母の声
父の声
とおい祖先の声
顔は
声よりも本物だ
直接確認すれば良かった
カーテンを揺らして
風が言う
もうそろそろ
あなたも呟くはず
あなたの声でなく
星が振動する
音波の声で

四千年の間
鞭打たれた
生きたまま
肉体は裂かれた
皮はランタンとなった
星が語る
腐敗しつ

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TomoPoetry、まだ待ってみるか、しばらく。

TomoPoetry、まだ待ってみるか、しばらく。

もう何年待っただろう
朝の
フレンチトースト
数着のスーツ
棺を釘打ち
骨を集め
マッチを擦って
思い出す
かれは
何を楽しみに
あの地下室で生きていたのか
かのじょは
何を望みつつ
あの工場で死を待っていたか
大切な質問の
答えを
聞いたことがない
大切な質問を
思い出すことがない
食べること
寝ること
抱くこと
稼ぐこと
死者を儀礼とおり
送ること
深夜眼が覚める時
ふと思い出す
キャベツで巻

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TomoPoetry、河は濡れたまま。

TomoPoetry、河は濡れたまま。

都は濡れたまま
いくつもの色ついた時代と
黒く
焼けこがれた歴史を
幾層にも
重ねていく
時にクリームをはさみ
地層のように
パステルを塗りかさねるように
最後に
漆喰をコテで塗り
踏み固める

都の湿りと
歴史の涙は
深くしずみ
河に滲み出てくる
だから
人類から
ながれでるものは
濡れたままだ
ユーラシアの砂漠に沁みた水
乾いた骨は
博物館へ
インスタント食品工場へ
アフリカのジャングルを

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TomoPoetry、世界のほつれ目をぬって。

TomoPoetry、世界のほつれ目をぬって。

コカコーラと寿司
そしてチップスの間を通って
レゲエのリズムで
忘れていた葬儀に
むかう
地下鉄への階段をおり
バビロンの塔に
よじ登り
地下水道を這って
宇治羊羹を目の前に
首か
腹を
出せと要求される
泡立つ欲望
割れる遺産
揺れる肉体
黙った祖先
赤いヒール
紙細工の塔
隠れた墓地
目の前の死まで来てしまった
這って
走って
歩いて
蒸気機関車で
縫いあげた星

まだほつれたいたるところから

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Tomo Poetry、かなしい朝がつづく世界で。

Tomo Poetry、かなしい朝がつづく世界で。

半世紀前
朝のかなしみ
という詩を読んだ
エジプトで死んだローマ人
シベリアの収容所を生きた女優
性器を切られた娘
のように
びっしょり濡れた星
ベランダと風呂場
部屋のなか
台所を
万国旗のように
世界中の半旗のように
しとしと濡らす
洗濯物に戸惑うわたし
一間窓に近いところで
シャツをたたむかれ
わたしはまだ
濡れているが
かれは
もう乾いている
子どもとペルーの豆を食べる
夜のダンスパーティ

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