TomoPoetry、空から降ってくる。
空から降ってきた
炎が
炭が
砕けた万華鏡が
マシンガンを積んだミニカー
葬儀の手配書
貸衣装のチラシ
ゴミ処理の案内
わたしの
記憶は砕いて海へ
名前はジグソーパズルにして幼稚園へ
肉体については
空白
犬の肉体については
月夜の
机解体工場へ
魂についても
空白
戸惑いの跡が
青インクの滴りにある
多分
空あるいは銀河系の外へ
最後に
チラシは
焼却炉へ
空といっしょに入れてください
の一行
焼却炉の
点火スイッチは誰が押すのか
わたしは
魂を残して
すべてを投げ込んだ
最後に青い星を
大切な記念品のように
二度撫でてから
大手町の階段をのぼると
金銀の吹雪
ユーラシア大陸から
型取りした鞄
映画を
編集した生活
数頁をホッチキスで留め
区役所と博物館に
残す
三か月後
倉庫は空っぽにされる
空から煙が
街をながれ
海に
いろいろな記憶が浮いている
泡が割れると
すすり泣きが聞こえる
焼却炉に
銀河系をドーナツのように
宇宙を
遊園地の
錆びたメリーゴーランドのように
ためらいながら
入れる
これはわたしの仕事だ
わたしが決定した最後の仕事だ
あなたは俯いて涙を隠している
あなたが選んだひとつの意思だ
かなしいかい
かなしくはないかい
返事はない
空は雨雲
まだ聞こえてないが
まもなくやってくる
星の叫び
感じることはできないが
わたしたちが見る
宇宙の
祭りの終わり
色とりどりの電球が
くだかれる
空はいつも
わたしたちから見えない側がある
ミサイルが飛ぶ向こう
子どもを売買する向こう
死が
数世紀先に行く向こう側
こちらでは
涙と哀しみが
あなたのあとをついてくる
さあ
向こう側を散歩しよう
ふりかえる必要はない
灰が
ゆらゆら降り続いている
生が
続いているように
地下道をくぐり
見あげると
あたらしい銀河系が
煙突から生まれる
あたらしい宇宙が
焼却炉の
炎から
キラキラと出てくる
あなたは俯いている必要はない
あなたが知らなかった
もうひとつの空だ
あたらしい星には
あたらしい命がある
帽子で受けると
夥しい
星が入っている
いろいろな色
ひとつを
口にいれる
これが
わたしのいのち
一個を
あなたの口にいれる
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