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Tomo Poetry、空のさらに上を渡るもの


あなたが倒れた時
あなたを棺に横たえた時
棺がなく
湿った泥炭地に
あなたを横たえた時
空を飛ぶものはなく
雲も
太陽もなかった
一枚の回転扉
鏡に写っているラインダンス
青い血が
地図のようにながれる
手のひら
それらの上を
渡っていったのは
何だったのか

未来から
未知の時間の方へ
捻れながら
渡るもの
永遠の端を
引っ張り出すように
海底から
回転する星へ
練り上げられ
炎に投げられるもの
罪と裁くもので
果実を実らせるように
わたしたちの
手には届かないもの
わたしたちが
永遠に求めているもの
あるいは 名前も知らず
呼ぶことができないもの
描けないもの
それは
何だったのか

あなたは知っていたのか
わたしたちが知らないことを
横たわった眼が
捉えていたのは
形を持たず
表面を持たず
名前を持たず
指さすことができず
生まれたことがなく
死ぬことがなく
時間は
その呼吸で
宇宙は
その瞬きのようなもの

あなたはそれを見たのか
その香りを知っているのか

何も語らないあなたを
土と花と
砕いた言葉で
おおう
空から
透きとおった羽がさらさらと
さらにそのうえに
記憶にも
記録にもなく
誰にも伝えられてない
透明な布のような
何も揺らさない風のような
誰にも聞こえない音楽のような
見ることのできない鳥の
羽のような
空のさらに上を渡っていくものの
やさしさで
あなたを
おおう

あなたはその名前を知っているのか
あなたはそれに触れたことがあるのか

音楽は演奏されていないが
風は
別れのメロディをはこぶ
あなたは
空を舞いのぼり
さらにうえの空へ
そこで
あなたは出会うだろう
わたしたちが知らない時間の明るさ
その甘い香りに

わたしたちは 多分
希望するより
数日遅れて
のぼっていくだろう
わたしは
その約束が
どこかに記されていないか
あなたが残した
手紙を読み直している
青い紙に
藍色の文字で
星の子午線のように
真っ直ぐに
書かれている
手紙
言葉は
理解できないが

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