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ぼくのPoetry gallery

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かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
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#文学

かつての詩137「白い猫」

「白い猫」

塀の上で寝ていた白猫に
幸せの呼び寄せ方を訊いたんだ
おまえはどうして幸せを招き寄せられるんだ
なんなら俺も招きたいよ
猫は大きなあくびをして
小さな額を洗い出す

Masanao Kata©️ 2011
Anywhere Zero Publication©️ 2023

かつての詩136「黒い猫」

「黒い猫」

前を横切る黒猫に
幸せの在処を訊いたんだ
おまえは何処から運ぶんだ
なんなら俺が取りに行こう
猫は鳴かずに一瞥すると
音もなく去って行った

Masanao Kata©️ 2011
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩135「エンドロールとシンドローム」

「エンドロールとシンドローム」

あなたの小宇宙に入り込むには
わたしの小宇宙をガムシロップみたいに少しずつ溶かさないと
髪を梳かすようにはいかないって
夜を満たすのはほころびの試み

千年のパラダイム
専心の
専念の
先進の
晩年の万年よ
未来などどうでも良い
指先を汚して
夏の匂いを嗅がぬまま
冬の雲間の青空は湖みたいだ

旅立の声を聴いて
しわがれた時を待つ
忌憚のない奇譚を書いて
言語を再

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詩134「二人の男」

「二人の男」

まだ俺は俺自身ではない
灰皿に煙草を押し付けて喫茶店を出るように
この場を変えることすら出来ていないままだった
理想の檻の中から出られないまま
鬱屈した日々を飴玉のようにしゃぶっている

ある男は
不屈の信念で自分であることを味わって
日々を繋ぐ燻された銀の姿で煩悩を翻弄する
その指先でしがらみを解き放つ旅人
その根とあの音を編み合わせて
食いつなぐための鎧を紡ぐ
明日を追う本望

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