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ぼくのPoetry gallery

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かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
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2022年12月の記事一覧

詩135「エンドロールとシンドローム」

「エンドロールとシンドローム」

あなたの小宇宙に入り込むには
わたしの小宇宙をガムシロップみたいに少しずつ溶かさないと
髪を梳かすようにはいかないって
夜を満たすのはほころびの試み

千年のパラダイム
専心の
専念の
先進の
晩年の万年よ
未来などどうでも良い
指先を汚して
夏の匂いを嗅がぬまま
冬の雲間の青空は湖みたいだ

旅立の声を聴いて
しわがれた時を待つ
忌憚のない奇譚を書いて
言語を再

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詩134「二人の男」

「二人の男」

まだ俺は俺自身ではない
灰皿に煙草を押し付けて喫茶店を出るように
この場を変えることすら出来ていないままだった
理想の檻の中から出られないまま
鬱屈した日々を飴玉のようにしゃぶっている

ある男は
不屈の信念で自分であることを味わって
日々を繋ぐ燻された銀の姿で煩悩を翻弄する
その指先でしがらみを解き放つ旅人
その根とあの音を編み合わせて
食いつなぐための鎧を紡ぐ
明日を追う本望

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かつての詩133「HX」

かつての詩133「HX」

「HX」

515,280分目は夜だ
色鮮やかなイルミネーションを目の当たりにしながら
繁華な街を歩いてみれば
半端な気分でモミの木が欲しくなったりする
だけど僕の部屋には置く場所がなくて
飾りを付けてキャンドルも灯してみたいけど
僕の部屋には派手すぎる

358日目の夜には
コバルトブルーの夜空に星が流れたらいいな
薫らぬ寒さが吹き止んで
涙のように星がひとすじ
雪でも降り出してくれたらどうだろ

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かつての詩95「現在地」

「現在地」

誰かの小説が書かれた今から
わたしがそれを読んだ今は
例えそれがいつかの出来事だと省みても
すべては今の中で消化されている

何億光年離れていても眼に映る星の光は今
歩き疲れて立ち止まるのも常に今の中だった
先を見据えた心遣いも今の出来事で
過去も未来も今という時間軸にぶらさがっていることだろう
今は今であり今なのだと
今出来ることがすべてなのだと
もう何も迷うことは必要なかった

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