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ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)~ダイバーシティを阻害する5つの要因とは?
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ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)~ダイバーシティを阻害する5つの要因とは?

1.背景・問題意識

日本におけるダイバーシティへの取り組みは、一部の先進企業を除くと 2000 年ごろから少しずつスタート してきました。現在、何らかの取り組みをしている企業は全体の半数に及んでいますが、そのうちの半数が 2016 年以降に活動を始めたばかりということで、「まだこれから」と感じている組織も多いのではないでし ょうか。

現在、何らかの取り組みをしている組織に「どのようなことに取り組んでいるか」と質問したところ、上位 の回答は、1)女性活躍推進(82.1%)、2)中途採用での多様な経験をもった人材の受け入れ(70.1%)とな っています。ただ、女性管理職の比率は 7 割以上の企業において「10%未満」と、政府目標の 30%を大きく 下回っているのが現状です。

(『人事白書調査レポート 2020』より)

『世界経済フォーラム』が 2021 年 3 月末に発表した 2021 年版の男女平等度ランキングでは、日本は 156 ヵ 国中 120 位でした。企業ごとに固有の背景がある中、どのような着眼点をもって女性活躍推進やダイバーシ ティ&インクルージョンに取り組めばよいのでしょうか。

ここでは、ダイバーシティを阻害する 5 つの要因についてご紹介します。

2.要因・対処法について

図1

①戦略との関連性の欠如

ダイバーシティ推進の必要性や背景等根本的な組織の意志を、自社のビジネス上の重要性と紐づけていなけ れば取り組みは浸透しません。皆さんの組織では、どの程度トップのコミットメントが得られているでしょうか?

DDI/MSC の「ダイバーシティ&インクルージョンレポート 2020」では、

1)業界平均を上回る業績の組織は、多様性に富んだリーダーを有する(図2 参照)
2)働きがいのある会社はダイバーシティ&インクルージョンに優れている(図3参照)

という調査結果が紹介されています。

図2

図2は、このアンケートを実施した時点での人数割合を表しており、業績トップ10%と業界平均以下では差 があることがわかります。一方、ハイポテンシャル人材のプール状況についても、同様の傾向が示されてい ます。

例えば、ハイポテンシャル・プールに占める女性の割合は、業績トップ10%企業では24%を占めるのに対し、 業界平均以下の企業では16%にとどまっています。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、短期的なメリットを組織にもたらすだけでなく、ハイポテン シャル・プールにおいてもこれを実現することで、長期的な財務的メリットを享受することにつながるといえます。

図3

図3は、「働きがいのある会社」で働くリーダーは、ダイバーシティ&インクルージョンに関連する項目にお いて、自社を非常に高く評価していることが示されています。特に、「多様な観点を受け入れること(インク ルージョン)は、我が社の組織文化と価値の強力な構成要素である」という質問への肯定的な回答結果の差 は顕著です。

自社の戦略や将来のありたい姿とダイバーシティ&インクルージョンの関係を改めて整理し、何のために取 り組むのか、目指す姿はどのようなものなのかを具体的なメッセージとして発信し続けることが大切です。

②慣例主義・意図しない妨害

この 2 つは、いずれも組織の中で起こりがちな傾向です。

「慣例主義」は、現状維持バイアスが働いている状態にあたります。変化を不快なものとして避け、本能的 に抵抗する無意識の反応です。このため一般的には、時間が経過しただけでは新しい価値観が自然に根づく ことはないといわれています。粘り強く、意図的に働きかけることが重要です。

「意図しない妨害」とは、いつも同じ人しか発言しない会議などでよく見られるケースです。「限られたいつ ものメンバー」による意思決定が続くと、意図せず「あなたの意見は必要ない」ということが周囲にメッセ ージとして伝わることがあります。このことをダイバーシティ&インクルージョンに当てはめると、「組織の 中で認められている人ほど、自社のダイバーシティは進んでいるととらえがちである。なぜなら、その人は 優秀であると認知されている段階で、“限られたいつものメンバー”として意思決定にかかわるチャンスがあ り、チャンスがない人の存在には気づきにくいから」ということになります。

組織文化や価値観に関わる問題は、一朝一夕には取り除けないでしょう。ただ、先にご紹介した『人事白書 調査レポート 2020』では、次のような調査結果も出ています。

「ダイバーシティによって実現したことのうち、最も多かったのは人材の確保(69.6%)(以下中略)。この結 果を、ダイバーシティに取り組み始めた年とのクロス集計で見ると、2015 年までに取り組み始めた企業は、 人材の確保、企業イメージの向上・PR 効果の他、さまざまなことを実現できているようです。一方で、2016 年以降に取り組み始めた企業では、まだ期待したことが実現できていない傾向にあることがわかります」

図4

5 年以上の継続的な取り組みが不可欠、ということになりそうです。

③無意識の偏見(バイアス)

多様性を阻害する要因の中でもよく取り上げられるものの1つが、「バイアス」でしょう。

私たちは、何らかの「アンコンシャスバイアス(=無意識の思い込み)」をもっているといわれますが、無意 識だけに本人は自覚しにくく、排除が難しい側面があります。ただ、「アンコンシャスバイアス」を排除でき なければ、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みそのものに本来意図しない影響を及ぼす可能性が あることは明らかです。

1 つ例を挙げてみましょう。

管理職を対象とした研修で「理想とするリーダー像」を尋ねると、個々の経験に裏打ちされたとてもユニー クなリーダー像が幅広く語られます。つまり、理想のリーダーやリーダーに必要なポテンシャルについての 見解は個人の経験や考えに基づいており、バイアスを生みやすい種類のものであることがわかります。一方で、採用や昇進に関する判断は、最終段階では一人の意思決定者に委ねられることも多く、その人のもつバ イアスの影響を受ける可能性が高くなります。

これを防ぐためには、採用や昇格の基準を明確にし、意思決定のプロセスを見直して「アンコンシャスバイ アス」が入り込む隙間を極力排除すること、判断にかかわる関係者への注意喚起を行うことが重要です。特 に基準については、客観的なモノサシを導入し、観察による事実情報やデータを用いて判断する仕組みの構築が欠かせません。昨今はオンラインで完結するアセスメントも増えており、スキルやナレッジだけでなくパーソナリティも含めた診断も可能になりました(※EI:Early Identifier 参照)。選択肢は広がっていますので、人材のふるいとしてのアセスメントだけでなく、多様性のあるポテンシャル人材の発掘のためのツールとして活用してはいかがでしょうか?

④「成功した弱者」の神話

どの組織にも、環境が整っていないながらも、本人の努力や周囲の支援によって大きな成果を挙げたり、目指すキャリアを実現したりする人がいるものです。その成功や成果が輝かしいものであればあるほど、「我が 社ではこのような例もあるのだから、いろいろと課題はありながらも制度はうまく機能している(はず)」「環境は不十分ではあるが、このような成功事例があるのだから能力や努力で乗り越えられる(だろう)」という 誤解が生じやすくなります。

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みにおいても、「成功した弱者(マイノリティ)」の事例を取り 上げて、「だから、我が社の仕組みがダイバーシティを阻害しているわけではない」という誤解を生むことが あります。しかし、これらの例は非常にまれなケースであることも多いのです。この成功事例の背後で、どれだけ多くの困難があったかを問う姿勢が求められます。 DDI/MSC の『ダイバーシティ&インクルージョンレポート 2020』によると、管理職層男女比率は以下の通りでした。

図5

この調査では、女性が未だに昇進するのに苦心している理由の一つとして、リーダー職への移行期にあまり 支援を得られないことを挙げています。女性はリーダーの役割へ昇進したときに、男性に比べてコーチング やフィードバックを受けることが少なかったと回答しています。また、アセスメントやトレーニングを受け る機会も少なかったと報告しています。さらに、上司から自分の役割に対する明確で現実的な目標や期待が 設定されなかった傾向が高いことが明らかになりました。

リーダーの職位が高くなると、女性は昇進するために転職する必要性が増すと感じています。実際、女性経 営幹部の45%は、昇進するためには転職する必要があるだろうと回答しています。これは男性経営幹部(32%) と比較しても高い数値といえます。

もし、あなたの組織で同じような傾向が見られるのであれば、女性リーダーの割合を増やすためには何らか の「手当」が必要でしょう。「成功した弱者」の神話に惑わされることなく、本人に自分の持ち味を自覚させ、 上司を巻き込みながら経験を積ませる機会を整える必要があります(※WIL:Women in Leadership 参照)。

ダイバーシティを阻害する 5 つの要因についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

日本国内においてはまだまだ課題も多いダイバーシティ&インクルージョンですが、皆さんの組織内に存在 する阻害要因を特定し、段階的かつ息の長い活動を推進していただきたいと思います。

■執筆者プロフィール

株式会社マネジメントサービスセンター シニアコンサルタント 山崎 瑞子

日本女子大学文学部卒。株式会社オリエンタルランドにて主に人事・教育部門で勤務。テーマ パークで働くキャストを対象とした教育、モチベーション施策、社内広報等を統括するマネー ジャーを経て 2008 年より現職。リーダーシップ開発、課題解決ワークショップ等のファシリ テーションを専門とする他、近年は複数階層に渡る教育カリキュラムの設計、採用プロセスの コンサルティング等、クライアントと密に組んだプロフェクトに取り組む。 専門分野:ヒューマンアセスメント、リーダーシップ開発、CS コンサルティング

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント


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1966年に誕生したMSC。女性社員教育訓練養成講座の展開から始まり、1972年には米国の人材アセスメント手法を国内に取り入れ発展させてきました。上場企業を中心に述べ100万人を超えるリーダーの育成支援の実績がございます。https://www.msc-net.co.jp/