2022カタールW杯試合分析 大会10日目

大会もついに10日目。この日からはGLの最終戦が行われる。
同時刻KOになるため、2018ロシアW杯の日本vsポーランドであったようなFFPも突破のカギになってくる。
試合中に他会場の結果を気にしながらプレーしなければいけないチームの状況も見ものである。


グループA セネガルvsエクアドル




1・2戦目とは中盤の形を変えてきたセネガル


こちらもスタート時の立ち位置は1・2戦目と変えてきたエクアドル


GL3戦目ということもあり、決勝Tに行くためには勝ち点が互いにほしいところ。

そんな中で1・2戦目の闘い方をスカウティングできているからこそ、3戦目は十分な準備ができた上で臨むことができる。

どちらも中盤の枚数は3枚となり、マンツーマンのような形にはなるという予想だが、実際にはセネガルは従来通り4-3-3でスタート。

互いにBUで攻撃の糸口を見つけたいところだが、打開ができずに固いゲーム展開になっていた。

その理由としては先述したGL突破のために「負けない」闘い方が行われていたからだ。

なかなか打開ができない互いのチームは次第にロングパスで敵陣深くまで侵入→相手DFに弾かれても2ndボールを回収してカウンターという流れが色濃く見られた。

2ndボールの奪い合いの部分で、優位性をもっていたのはセネガル。それはCBのクリバリの質が上回っている点でチームの戦術が決まっていたからだ。

セネガルは相手にある程度のボール保持は許しながらも、ロングパスやミスを誘発。そのボールを奪ってカウンターという狙いで1得点目が生まれた。

時間帯も前半終了間際にPKで得点し、良い形で後半を迎え、失点はするものの危なげなく勝利。

エクアドルは1・2戦目と違いBU時のSBの立ち位置が高い位置を取っていたので、攻撃の意志が強く見られたのだが、結果としてはセネガルの手のひらの上で転がされていたこととなる。

MVPはクリバリ。選手一人の質でチームの闘い方(戦術)の方向性を決めてしまう男。圧倒的存在感。


グループA オランダvsカタール



引き分け以上で突破のオランダ



開催国として意地を見せたいカタール

オランダ優位でゲームが進んでいく中、BUの構図は3CB+2WBの外回しで相手の出方を伺う。

中央の2VOにボールが入ったら少ないタッチ(特に1タッチが多い)でテンポを変えながら中央から相手の守備網を崩していた。

オランダは3-5-2と中盤に人数が多く、適切な距離感がとれているため少ないタッチで突破しやすい。相手がマンツーマンでマークをしてきたとしていても3人目や前向きの選手を簡単に使って相手の背後をとることができたいた。

前半26分のプレーは1点目の布石のようなものであり、オランダのチーム戦術が色濃くでていた。

相手にマークをつかませないテンポで人とボールが動いていくので、相手守備をある場所に集めながら、簡単に空いたスペースを使っていくことができる。

2点目は上記のお手本のようなプレーでサイドからクロスで得点を生んだ。

中央に人が多い→守備は中央を分厚く→サイドが空くのでそこから侵入。というような形。

1点目と2点目を違うパターンで得点したことにオランダのサッカーIQの高さが伺える。

対してカタールは5-3-2の守備ブロックの前でボールを回させているなかで、なかなかボールを奪えず保持の局面にうつることができなかった。

相手のミスでボールを保持できる時間はあるものの、マンツーマンでくる相手にロングパスの選択肢が多くなり、ボールロストも早かった。

前半34分のシーンのような形でBUをしたいのだろうというチームの共通理解が見て取れたのだが、それまでに失点してしまっているので時すでに遅し。

カタールは終始チャンスが作り出せず大会を終えた。
アジアカップでカタールに負けた日本は世界での立ち位置はどこにあるのか。アジアと欧州南米との差は開いていくばかりだと危惧する。

MVPはデローン。オランダの中盤の攻撃のキーマンであり、BUでは常に起点となっていた。また、所属クラブで磨き上げられている守備面でも特徴を発揮し、相手の攻撃の芽を摘んでいた。


グループB ウェールズvsイングランド



W杯史上初イギリス対決までこぎ着けたウェールズ


引き分け以上で決勝T進出のイングランド

ウェールズにとっては大量得点での勝利が絶対条件の中、歴史的な一戦を迎える。

守備は4-4-2のミドルブロックで攻撃キーマンへのパスコースを遮断するウェールズ。ブロック前でボールをも当たれることはOK。サイドにボールを追いやり、そこで対応するという意図がある。

対してイングランドはウォーカーがVOの位置に絞って立つことで3-2-2-3のWMシステムを採用。中盤で数的優位に立つことで、底でのボール回しを循環させた。

IHがSB-CB間に降りてきたボールを受けることで相手DFを釣りだし、空いたスペースにケインが入るというようなローテーションができていた。

ボールを失ったとしてもすぐに数人で取り囲める位置でポゼッションをしているので、相手陣地に押し込んだ状態でプレーができていた。

これを観て、サッカーの4局面を理解することでネガトラのデザインを行い、局面の切れ目をできるだけ無くすチームの意図にレベルの高さを感じた。

前半をスコアレスで折り返す中、後半早々でにセットプレーからウェールズは失点。2点目を畳みかけられたことで早々に2-0に。変化が求められる。

対してイングランドは疲労のことを考えて選手を3人交代。余裕をみせた中で勝利を掴んだ。

MVPは途中交代ではあるが、ウォーカー。攻撃面において立ち位置でチームに変化を加えていたベテラン選手は所属クラブで確実に成長し、母国には欠かせない存在になっていた。


グループB イランvsアメリカ



イラン


アメリカ

イランは試合前の予想フォーメーションこそ4-3-3となっているが、4-2-3-1でスタート。
その理由はアメリカの4-3-3に対して中盤をマンツーマンにすることであろう。

イランのトップ下がアメリカのアンカーを常に監視。ある程度非保持を受け入れながら、ローブロックで相手のミスを誘いカウンターへ移行。FWのアズムンにボールをつけたいが、なかなか相手からボールを奪うことができない。

対してアメリカはポケットに侵入→クロスをチームの狙いとし、前半はボディブローのようにじわじわと相手を押し込んでいく。

両SBも同時に高い位置から攻撃参加をすることで、大外からのクロスでも好機を演出。1点目は両SBの関わる得点でピッチを広く使えている証拠になった。

アメリカVOのリスク管理だけは不安が残り、イングランドのように「やりたいこと」をやり続けるためのリスク管理の予測・対策が必要だと感じた。

ただアメリカの選手平均年齢は非常に若く、次回の母国開催に向けて大きな材料となった。

MVPはウェア。チームの狙いであるポケット侵入を何度も繰り返し、それだけでなくシュートも狙い続け、相手DFの嫌な存在になり続けた。

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