うみっぺり

世界はたった五分の即席ラーメンかもしれない。 ――ラッセル「世界五分前仮説」 うみ…

うみっぺり

世界はたった五分の即席ラーメンかもしれない。 ――ラッセル「世界五分前仮説」 うみっぺりのもう少し長い文章たち。Eiのイラスト、写真を添えて。 夢はクソデカキッチンを手に入れることです。フォローやシェアをいただくと発狂メッセージが見られます。

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  • ヨーロッパ旅行記

    2023年のヨーロッパ旅行記/美術館探究をまとめます

  • 芸術雑感

    京都芸術大学の通信学部で芸術学を学び始めました。さしあたり頻繁に美術館や博物館に行きいろいろなことを考えるようになったので、いろいろと書き記しておきます。

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    わたしに関すること、わたしの思考をまとめています。個人のfacebookに投稿していたものも引きずり出して、少し編集して載せもしています。

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    友人を呼んでプライベートなバルを開いている時の記録

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好きなものを探そう

明日から、しばらくの間仕事を休むことにした。 決めづらいことではあったけど、診断が適応障害に変わったこと、自分を大切にしてとたくさん言われたこと、限界を感じたので、お休みにした。いつ戻るかはわからない。 これから先は、会いたい人に会って、ひとりで過ごして、いろんなことを片付けて、ゆっくりしようと思う。 誰かに会うことも疲れるかもしれないけど、回復する時間はたっぷりある。 その間に好きなものを見つけたいと思っている。ひとりでも好きでいられるようなものを探したい。 もちろん今

    • ビルバオグッゲンハイムとビルバオの街

      昨日の昼間、マドリードの街をゆっくりと出てバスでビルバオへと向かった。所要時間はほぼ5時間、それこそ帰りは飛行機で1時間ほどの距離だが、なんとなく陸路がいいなと思ってバスを選んだ。半分は寝てうつらうつらと過ごしていたが、目を覚ますごとに少し遠くには大きなひまわり畑があり、アンダルシアだとかバレンシアだとか、大西洋と地中海の香りを大地から感じた。ひまわりがああも並んでるとひまわりだとわからないものである。 Google Mapsで全くヒットしないAirbnbに泣きそうになりな

      • 移動とマドリードの美術館たち

        昨日は移動ばかりをしていた。だから今日まとめて2日分書いてしまおうという怠惰な策だ。人間は愚かだし怠けられるところは怠けられる。でも怠けられる精神があるうちに怠けておいた方がいいことを私は過去の経験から知っている。無理をしないとは多分そういうことだと思う。 昨日は起き抜けで一番に中庭にでて、曇り空ながらの太陽光を浴びた。流石に窓のない部屋での5日目の朝は堪える。少し朝らしい気持ちになったところで、小雨の気配がする中コインランドリーに向かった。悲しいかな、コインランドリーで売

        • オルセー美術館とピノーコレクション

          友人の飲みすぎた翌日、流石に疲れたなと思ってゆっくりと起きることにした。一度シャワーを浴びてからもう一度ベッドに潜り込み、時間の分からない部屋で夢と現実の間のような何かを頭で描いて、日本から持ち込んだインスタントおにぎりと味噌汁でブランチにし、昨日の旅行記を書いた。 その日は元々オルセー美術館とピノーコレクションに行くことに決めていた。それから先日のムーラン・ルージュについてきたセーヌ川クルーズを夜に足して、パリの最後の夜を飾ろうと思っていた。 オルセー美術館までは宿から

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          ルーブル・ランス美術館

          ランスはパリ北駅から列車で1時間ほど北に行ったところにあるほうのランスである。フランスには二つのランスがあるが、間違えてはいけない。目指すべきはLensのランスである。 ランスまでの道のりはアムステルダムからパリに向かったときとは異なり、農耕地帯が一面に広がる世界だった。アムステルダムからの時はどちらかといえば牧草地帯で、ところどころ牛や羊が群れていて彼らのための牧草が束ねて置かれていた。しかしこちらは農作物が規則正しく並んだ溝がはっきりと見え、刈り込まれたエリアも見て取れ

          ルーブル・ランス美術館

          鑑賞と消費/ルーブル美術館とポンピドゥーセンター

          パリの朝はまだ太陽で温め切られておらず少し肌寒い。朝日に包まれるノートルダムも街並みも美しいのに、街はまだ眠ったことにされていて黙々と道路工事が進められている。 泊まっているところからセーヌ川沿いにバスでシテ島の脇を抜け、最後はバスでセーヌ川を渡る。そこにあるのは世界最大の美術館ルーブル美術館である。 18世紀にできたこの日の殿堂は当時のフランス王朝の権威のために作品が世界中から集められてできた。作品と一口に言っても、今は展示されて作品になっているだけで過去それが「生きて

          鑑賞と消費/ルーブル美術館とポンピドゥーセンター

          パリの地/カルティエ現代美術館

          アムステルダムから3時間半、列車に揺られてパリ北駅にたどり着いた。もっと山の合間を抜けるとかヨーロッパの自然があふれた道中になるかと思っていたが、穏やかな牧草地帯が7割を占める地平線に塗れた道中でうつらうつらするばかりだった。 辿り着いたパリはアムステルダムよりもすこし涼しさが和らいでいてより一層過ごしやすい気候だった。どこか大麻が混じっていそうな街の空気はかつてのニューヨークを思い返す都市らしいごちゃ混ぜな匂いで、浅い感想だが都市だなと思った。 今回の旅ではこの土地に5

          パリの地/カルティエ現代美術館

          アムステルダムの土地

          着陸したとき空はどんよりとした曇天で、冷房の効きすぎた部屋のような気温だった。それが私の最初のアムステルダムという地での体験である。 首都でありながらどこか懐かしさを与える風景は、おそらく線路わきに多い繁る草木に、少し古びた建物に、一方で現代的な落書きのされたトンネルによって構成されているのだと思う。 私にとってオランダという国はフェルメールの国とゴッホの国という二つの側面で出来上がっている(むしろそれしか知らない、それはそれで問題である)(レンブラントもいるが彼はあまり

          アムステルダムの土地

          エゴン・シーレ展がかなりよかったという話

          エゴン・シーレ展がよかった先日1月26日から開幕したエゴン・シーレ展に行ってきました。30年ぶりの来日、かつ東京都美術館のコロナへの憂さ晴らしを思わせる見事な展覧会でした。 エゴン・シーレをはじめウィーン分離派は芸術学の教科書でも深く立ち入られることのない領域で、私も初めて知る事ばかりでした。貴重な機会、ぜひ行ってほしい気持ちを詰めこみました。 まず展示の構成がいい よくある来日型の展覧会では、その美術館が所蔵する作品を時系列順に並べたりすることがほとんどかと思います。今

          エゴン・シーレ展がかなりよかったという話

          ラム肉グリル

          そういえば先日生まれて初めてフランベをしました。 ラム肉のグリルのとどめにフランベという、まあフランベらしいいるのかどうかわからないタイミングでのフランベ。ラム肉をはじめ下味をつけるときは直前で問題ないしむしろ直前が良いとのことだったのでその通りに以下をまぶしました。 ・オリーブオイル ・塩(肉総重量の1%) ・コショウ ・ローズマリー ・セージ(パウダー) ・パセリ ・バジル たしかに味をしっかりしみこませたいわけではなくて、臭み消しとかほんのり香るハーブくらいで肉感

          ラム肉グリル

          雲の合間に見える空の色

          晴れた空の日なら、この夜明けはきっとレモン色を抜いた強烈な青と濃い黄色のグラデーションだったろうなと思う。ハイになっているときに抑えてしまった旅程で、にわかに信じがたい早朝に空港に来ている。所要時間がわからなくて早めに抑えた定額タクシーにはきっかり出発1時間前に空港に到着してもらった。待っている間のカードラウンジには朝には少しヘビーなアレンジがされた洋楽のピアノアレンジがそこそこの音量で流れている。 空港に向かうまでの間、大半が地下に埋もれた高速道路を使うのが我が家の立地で

          雲の合間に見える空の色

          はじまりの話

          体を壊したきっかけが何かという話になる時がある。私は私の病状のこととかこれまでの変遷を赤裸々開けっぴろげに語ることはそんなに苦ではないからそんな話をして、その延長線上で原因の話になるのは自然なことである。 まだカウンセリングには行っていないけれど、根詰めてしまうところとかまあまあ完璧主義なところとか、その辺りは今回の始まりのしんどさの原因になっていたと思う。それは自分で自覚している。昔からそうだったし、まとめてやってしまいたいし、終えられるならそれが何時になろうとやり続けて

          はじまりの話

          引き継がれる手

          最悪な日の次の日は、きれいさっぱり最悪から脱せているわけではない。最悪から気持ち悪くぬるりと起き上がり始めるか、最悪が続いているか、最悪なケースは最悪がさらに最悪になっているかだ。 不幸中の幸いか、私は最悪をとどめるまでに済んだ。片道2時間半をかけて目指した美術館は閉まっていて、日の出を見ようとしたらバッテリーは上がっていて、出てきた太陽の逆行で岩を見逃してレンタカーの未来を破壊した。世界中のすべてに生きていることを否定された気持ちになって、ハンドルを握りながら何度も泣いた

          引き継がれる手

          最悪は止まるところを知らない

          底なし沼が本当にあるならそれは実際の沼を指すのではなくて最悪の比喩なんじゃないかと思う。 最悪の程度や質は人によってそれぞれで電車で隣り合った人のほうがわたしより絶対評価でより最悪な日常を送っているかもしれないけれど、今わたしは私の最悪で手一杯である。 恋人として一緒に住み始めた同居人からは、昨夜、恋人としてみない覚悟をした以降好きかどうかわからないといわれた。これは私が悪かった。引っ越してすぐ、病状も安定しないままにいろんなことを進めないと行けず、当の恋人はすいすい進め

          最悪は止まるところを知らない

          町田洋『夜とコンクリート』

          本というくくりに漫画を入れ込むとき、どこかくすぐったい感じがするのは気のせいだろうか。本のはなしを書き始めて3本目で漫画に触れる懐の太さを見せていきたい。 平らでつやつやとした面に、静かでさらさらとした砂を少しずつ落として円を描くような、そんな短編たちが詰められたのが本作である。PopeyeかCasa Brutusの本特集で取り上げられて、表紙のなんとも緻密で儚い雰囲気にやられてしまいお買い上げした。その後無事に中身の雰囲気にもやられてしまった。 漫画というよりも、朴訥と

          町田洋『夜とコンクリート』

          トンネルのこと

          昔は歩いて街と街を行き来していたから、きっと違う街同士が織りなす地面の上の濃度勾配であるとか街とそうでない部分のグラデーションをねっとりと肌で感じることができただろうけど、 いまはトンネルで一度すべてがリセットされてしまうから、不思議に孤立した街のその周りを見ることはできないんだよなあと思います。

          トンネルのこと