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オルセー美術館とピノーコレクション

友人の飲みすぎた翌日、流石に疲れたなと思ってゆっくりと起きることにした。一度シャワーを浴びてからもう一度ベッドに潜り込み、時間の分からない部屋で夢と現実の間のような何かを頭で描いて、日本から持ち込んだインスタントおにぎりと味噌汁でブランチにし、昨日の旅行記を書いた。

その日は元々オルセー美術館とピノーコレクションに行くことに決めていた。それから先日のムーラン・ルージュについてきたセーヌ川クルーズを夜に足して、パリの最後の夜を飾ろうと思っていた。

オルセー美術館までは宿から歩いて25分、いろいろ館内を歩き回ることを思うとバスで行こうと思い、セーヌ川沿いにオルセー美術館まで連れていってくれるバスを待った。待ちに待った。待てど暮らせど来なかった。これだからパリはと言いたくなったが、私はたかだかパリ4日目の女である。結局いつも使っているメトロからものすごく変な移動の仕方をしてオルセー美術館に辿り着いた。

ルーブル美術館が18世紀ごろまでの作品を収集展示しているのに対し、オルセーは18世紀から20世紀直前、印象派が花開く頃を中心に展示している。二つの館の役割は違うのだ。
日本でも何回か印象派展が開催されているように、印象派は日本人に馴染み深いものとなっている。そういった意味でオルセーのほうが知っている作品も多いしなんとなく知っている気のする作品を多く目にすることができるだろう。

オルセーの建物内部の構造は複雑で、一見シンプルな直方体のように見えて自身の動線をどう取るかの選択が難しい。館の持つ名作はあれど、ルーブルのようにそればかりを推すことはしないため、見たい作品があれば練り歩くほかない(ヒントはフロアの階数だけだ)。

なかなか骨の折れる鑑賞だが、しかしさすがはオルセーだ、日本だったらなかなか展示されない画家はもちろんのことこんな作品まで残していたのかというものを多数展示している。たとえばモネが若かった頃は、睡蓮の頃とは異なり、まるで写真のようにコントラストがはっきりとして人やものもくっきりと描かれた作品が多数描かれている。こういうものがどっさり惜しげもなく展示されている。

若い頃のモネ、コントラストや色使いがはっきりしている
モネで一番好きな作品は、儚げな色調へと転じている

また展示壁面に余裕があるのもオルセーの良さだった。先日も書いたように一枚の絵にどれほどの壁面を費やすかは絵の大きさ、密度、他の絵との関連性による。ゴッホの星の降る夜では、私が見た限り最も贅沢な壁の使い方をしていた。

大きな壁面にこれしか飾られない贅沢である。「夜空はいつだって最高密度の青だ」というフレーズが蘇る

調子になってオルセーで本を買いすぎてしまったしポンポンのシロクマのミニチュアフィギュアまで買ってしまった。本類があまりにも重くなったので郵送した。手伝ってくれたお兄さんありがとう。

そのままピノーコレクションへと梯子したのだが、さすがは気鋭のコレクションに安藤忠雄建築を合わせるだけのことはある、現代美術を古き(といっても思ったより新しい作りになっていた)建物に展示する斬新かつ見事な展示だった。と言いつつなんだかんだお気に入りはこの小さなネズミである。

このあとセーヌ川のクルーズに出かけようとしていたのだが、あいにくの雨で泣く泣く断念した。来年まで使えるチケットなのでもし一年以内にパリに来ることがあれば乗ろうと思う。パリ最後の夜は雨に打たれこじんまりとした仕舞いになった。
これを書いている今日にはパリを出て空の足でマドリードへと向かう。パリにはまた来ると思う。少し耳がフランス語に馴染んできた頃に出るのが惜しい。

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