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『風が何色か知るべきでしょう?』 2023.#6 アルビレックス新潟vs名古屋グランパス マッチレビュー

負けました。連敗。『11人で』披露したフットボールは素晴らしく、勝ち点3に値するものでした。というか同数で進んでいたら普通に勝ってた。新潟サポーターから外れた1フットボールファンの視点でもそう捉えられる試合展開でしたが、前と後を分ける大きな出来事によって戦況は大きく一変。押し込まれ続けて後半に3失点。スタンドのあれこれも含めて後味の悪いロストとなってしまいました。

軽率なプレーで勝ち筋の9割を絶ってしまう。退場した選手には正直かなり失望しました。ミスはつきものという類には決して含めてはいけない退場劇、11vs11で行うのを前提に取り組むスポーツの中で1人減るのがどれだけ痛い事か。筆者はまあ家でキレてました。『仕方ない、次が大事!』とはとてもじゃないけど今は思えないです (土曜深夜時点)

もう少しこういうふうにできたんじゃないか」という話は選手の間でも、試合が終わったあとに出た。そういうのをゲーム中に気づいてやれるように。こういった事態はサッカーにつきものなので、今後またあるかもしれない。そういったときはうまく対処できるように、今日の反省を糧にしたいと思います。

修介

ただ、上記のように人数差に敗因を押し付ける事なく冷静に試合を振り返る姿が現場から感じ取れます。サポーター目線ですらかなり悔しいのなら選手達は相当な感情を抱えているはず。それでも『自分達』に主語を置きながら現実に目を向けてレベルアップの糸口を探る姿勢は本当に素晴らしいの一言。つくづく松橋アルビはプロフェッショナルな集団だなと思い知らされます。

ならばサポーター目線でも今回の試合を冷静に振り返ってみようじゃないか。敗因がゴール裏(?)という頭を抱えるようなTLの論調ですが、フットボールに対して建設的な意見が少しでも増えてくるといいなと思います。声は試合を構成する要素ではあるけど実際に勝敗を決するのは選手達。ピッチ上を理解する事で次回以降のより良いサポートにも繋がっていくはず、それでは行ってみよう!



優勢。理想通りの35分間

序盤は保持する新潟、攻め返す名古屋という構図。その中でも優勢に試合を進めたのは新潟でした。

名古屋の守備時は基本的に5-2-3気味。前の3枚で規制をかけながらボールサイドにスライドして人を嚙み合わせてきます。名古屋STが中を消しながら新潟CBもSBも見れる位置。ここでサイドに限定出来るため、相手WBはパスコースを読みながら新潟SBに寄せてくる。

ただ、全体的なスライドを前提に成り立つ守り方なので、一人一人に自分のエリアを空けて動く事が求められます。それが一つでも遅れると相手チームにスペースを明け渡す事に。この仕組みを利用しながら少しづつアタッキングの糸口を見つけたのが新潟。

5:35~

上記のシーンでは相手を見ながらプレーの色を変えた堀米。野上のスライドが間に合わないWBの裏を突いてクロス→シュートチャンスまで繋げました。『偽SB』やらなんやら言われてますが、元来のSBの位置から自然に,効果的に振る舞いを変えられるのが新潟のキャプテン。枠にとらわれないオフの動きで名古屋攻略に一役買っていました。

5-2-3で構えながら奪いに来る名古屋に対し、相手の出足が届かない距離を保ちながらパスコースが無かったら後ろへ逆へやり直す。そのように落ち着いてボールを持つ新潟。その中でオーバーロードやポジショニングの駆け引きで相手を崩しにかかります。

新井が内側に入ってダニーロへのパスコースを空ける事でシュートチャンスに繋げたシーン。ここでも見られたように、ダニーロは常に前向きでボールを引き出すので、相手の足を止めながら高い位置で相手と駆け引きできるウインガーです。

ここでは新井や涼太郎が並行or斜めのサポートを高い位置で行えるのでお得意の連携→フィニッシュに繋がりました。後ろ向きに受けても折角届けたボールがまた下がるだけ。そう考えると当たり前のように行う彼のプレーには本当に助けられています

・守備では背中で相手を消しながらプレッシャーに行ける
・押し込んだら逆サイドに近い所にも顔を出してオーバーロードに絡める(25:50~)
・効果的に繰り出すカットインではボールウォッチャーになった相手DFの目を盗んだ孝司が裏抜け→背後をとる(29:48~)

--今日先発したダニーロ ゴメス選手を右サイド、太田 修介選手を左サイドに起用した意図は。
『(ダニーロについて)中にカットインしていくことが得意で、そこからシュートまで持っていく形と、そのモーションに入って相手がパタっと止まる瞬間に、中央にいる鈴木(孝司)や(伊藤)涼太郎との関係性が作りやすいかなと』

松橋力蔵

このように彼のプレーの数々がチームに還元されるようになってきました。確実性があって出来る事の種類が多いブラジリアン、本当に良い選手を獲ってきてくれたと思います。次節以降は更なるキーパーソンになっていくでしょう。


名古屋のビルドアップでは

あまり嚙み合わせをずらそうとしてこない=新潟として楽
人同士のポジション変更が少ない=見る人がある程度はっきりする
パスコースが大体1個先=読みやすい

ので、規制をかけながらチームとして奪いに行く守備を敢行できました。下記のシーンでは例えば早川がマテウスと対峙してスペースに晒されるという懸念点はありますが、自由にボールを蹴らせない上に見る人(マテウス)とパスコースが分かっている状態。そういった要素もあって対応にはさほど問題を感じていなかったように見えました。前半の内にブラジリアンを倒して1枚貰ったけど、まあ想定内(強気)

非常に新潟がアグレッシブに、エネルギーを持ってきていたし、プレッシングが非常に素晴らしかったです。そこに苦しんでしまったし、自分たちはもっと準備段階からできたこともあるかもしれないですが、それは次の課題

ユンカー

やるべき事が分かりやすいのでエネルギーを持ちながらプレッシングに出ていけた新潟。ボールを保持しながら奪ってショートカウンターを多く繰り出す、そして名古屋には1.2度のカウンターによる攻撃機会しか与えず。完全に押し込みました

そんな中で堀米の頭脳的なドリブル突破からダニーロ→最後は太田。優勢な中で素晴らしい先制点。正直これはもういけるなと思っていました。この時間までは



退場

先制点から息つく間も無く舞行龍ジェームズが退場。擁護しようがない足裏タックル。むしろ目の前で見ていて何故一発で赤色が出なかったのかとまで思ってしまうプレーでした。

得点直後という事もあり出足が良くなった結果なのでしょうか。ただ、J2時代から彼のそういった類のプレーは頻出していたのでwithVARとなった今ようやく可視化されたと言えます。足裏を見せるのはもはや癖になってる節があるので本当に治してもらいたい。そしてそういった選手は決して一人ではないのでチーム全体で共有して欲しいなと思います。



10vs11

CBが欠けたので孝司→田上。4-4-1で涼太郎を最前線に置きながら戦う新潟。ビルドアップの際に+1を作ったり、FWが最終ラインと駆け引きして相手DF-MFを空ける事で2列目がボールを引き出したりと11人で戦う利点を存分に活用するのが新潟。そんな中で一人減ったダメージは計り知れず。ボールを持てずに押し込まれる展開が続きました。

単純に数的優位な名古屋、そこで後半開始から人に人を当てる積極的なプレッシングを敢行。新潟としては出す先出す先に相手がいて、いつものようにひっくり返したくても前には人がいない。時折ボール保持の局面が訪れますが、最終的な終着点(ゴール前,最終ラインの手前)に人を置けない上に守備に追われていつも以上に走らされる展開。攻撃参加もボール保持者へのサポートも間に合わず、押し込まれながら遂に決壊してしまいました。

ダニーロのロストが起点となりましたが、その前から苦し紛れのパスが続いていた事と、そもそも簡単に蹴っても何を起こせるんだ?という事。

数的不利なら少しでも相手を引き付けてボールリリースして欲しい。そうすると次に持つ味方としては、自分に付く敵が減ってボールを受けるまでの時間も増える、要は余裕を持ってプレーする事に繋がります。当然奪われたらピンチになりますが、このようなリスクを許容してでもボールを持つしかない。そうした駆け引きがある中で選択したプレーが裏目に出てしまいました。こればっかりはもう仕方ない

後半、ハーフタイムに指示をして、そこから押し込む展開を作ることができて、そういう中で同点ゴール、逆転ゴールにつながったと思います。

長谷川健太

奪いに行く所では人を当てて機能不全に陥れて、アタッキングでは焦れずにゴールへ迫ってくる名古屋。HTを経て本格的に新潟を崩しにかかってきました。

中央を意識させて大外を空ける
中央にも活路を。62:30~

流石にプレスには走れない新潟。となると基本的にはCBに制限がかからないので持ち運び自由、その先の出しどころに中央・大外と2択を設けながらじわじわとゴール期待値を上げていきます。そしてここで焦って縦に加速しない辺りが流石に長谷川健太監督。

新潟としては数的不利を覆せるカウンターが大きな(というか殆どの)得点源になるので、相手が焦れてきて無理やりパスを打ち込んできた時こそチャンスに。しかし、名古屋はゆったりと新潟の出方を見ながら崩しを選択し続けました。最悪失っても押し込んだ状態なのでボールの周辺には鯱のユニフォームが多数。そうなるとカウンタープレスが機能するので新潟のやりたい事は殆ど繰り出せませんでした。

また、いやらしいなと思ったのがクロスの狙いどころ。退場者が出ても崩せずに負けるケースでは、大体が中を固める相手に愚直にクロスを放り込み続けて何も起こせず…という形に終始します。

名古屋は中からも外からも崩す姿勢を見せつつ、最終的な手段は大外からのファーサイド狙い。ニアや中央の山を越えたファーサイドは守りにくく、その上新潟WGが一列前のケアに追われる=最終ラインに落ちて守れないので手薄なエリアになります。新潟の泣き所となる箇所を突きながらゴールを脅かし続ける長谷川健太監督のチーム。

ガンバを3冠に導いた時には現役時代の裏付けからクロスへの入り方・狙いどころを徹底したという元ウインガーの指揮官。今日も新潟の嫌がる攻撃を随所に仕込んできました。



こうした劣勢を受けて、64分には三枚替えを敢行した新潟。

・逆サイドのWGが出張してボールサイドのCF役に。◇の頂点を作りながらボールの預け所を増やす
・高が左のバイタルを埋めて三戸が大外の選手へアタックできるようにする (交代直後の時間帯を見てもらえれば)

これらのように、前者ではボールを前進するため、後者では少しでも相手の自由を奪うために人も戦況も手を加えてきました。積極的に見せた松田のスペースランからカウンターに繋げて三戸のフィニッシュなど少しづつ反撃の色を強めます。

ただ、守勢に回る時間帯が続くのは流石に厳しかった。身体的・精神的な疲労からか、ボールホルダーへの制限どころかブロックにも隙間が生まれ始めて80分に逆転弾を献上。田上がSB裏の対応に走り、それに伴いゴール前のマークもずれて浮いたキャスパーユンカーのボレー弾。これにより何とか繋ぎ止めてきた糸が完全に断たれてしまいました。

タラればはありますが、やはり一人欠けると厳しいよなというのが正直な所。それにCFがリザーブに居ない等のメンバーの偏りもあって自分自身『こうすれば勝てたかも』という考えには至りませんでした。それ程やれる最大限の事を発揮して名古屋に立ち向かっていたと評価しています。

追記
堀米が『5バックにすれば良かったかな』と試合後に話し合った様子を明かしていました。

確かに上記のような形なら数的不利だろうとスペースを消しながらボールにアタックする前向きな守備ができます。ただ、守から攻の際にWBの位置から前に出るとなると相当な労力を費やすことに。『意思決定にまで踏み込む』赤野分析官がいたりと、そういった類の提案も出たのかもしれませんが、松橋監督としては4-4を維持して攻守のバランスを崩したくなかったという事でしょうか。

ただスピードに乗って背後にアクションできる太田や松田ボールを運べる三戸がいるので、一層の負荷がかかるWBに彼らを組み込めばこのやり方も全然ありだと個人的に思います。今節を機に戦術的なオプションが増えると良いですね。

神戸戦に向けて

次節はリーグ首位のヴィッセル神戸。またしても強敵相手ですが、11人で示す新潟のフットボールはちょっとやそっとで揺らぐことはありません。後味の悪い印象に引っ張られた方が多いと思いますが、前半の35分間で見せたパフォーマンスは間違いなく勝利に値していたと自信を持って言えます。下を向くこと無く前向きに取り組む現場と目線がずれないよう、更なる向上に期待しながら次節以降もサポートしたいところ。

そしてフットボールは22人で行う競技。くどいですがその前提条件を壊す事を無いようお願いしたいです。数的不利になってからも選手達はハードワークを止めませんでしたが、正直エンタメとしては最悪な試合でした。しかもホームゲーム。今後はこんな展開を見たくないので、とりあえず足裏を見せるタックルは早急に矯正して欲しい。ではでは




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