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『相手を変えるには自分達が変わる事』 2023.#5 浦和レッズvsアルビレックス新潟 マッチレビュー

負けました!相変わらずのアウェイ浦和戦での相性の悪さ。新潟としてはリーグ戦の今季初黒星を喫する形となりました。

『個の質』『チームとして下回った』色々な見方がある試合だったと思います。上手くいった序盤と停滞感のある後半、何があったのか・何をすべきだったのか。そんな、決して目を逸らしてはいけない試合を振り返っていきます。


ハマった1stプラン

4-4-2で構えてプレスに来る浦和相手に新潟はいつも通りのビルドアップの形。開幕戦同様に相手FWの脇・背後にフリーマンを置いてGK.CB.DMでひし形を作るように前進しました。

浦和WGが新潟SBを、浦和DMが中央を埋めるので4vs2の数的優位発生 5:35~

その中でも左を向く事で相手を動かして中央に出来たパスコースや、浦和WGが新潟CBにジャンプアップする事で浮いた新潟SBにロブパスを通し続けた小島が際立っていました。人ではなくエリアを守る基準に置く浦和、前進の局面ではDMの岩尾-伊藤敦が前に出てこないので新潟が常に数的優位。かなり余裕を持ってボールを進めていました。

進められた先ではボールサイドに圧縮して守る浦和。そこで新潟はボールを隠しながらターンできる伊藤涼太郎を経由しながら逆サイドへ逃げて起点を作りました。パスが繋がる毎に盛り上がったのもそういった背景が。

6:38~
こういう事が出来るSB超好き

その過程で、同サイドでの崩しに泰基が関わって島田がLSBの位置に降りる。アンカーの位置は逆サイドへの経由地.カウンターの防波堤となるので誰もいないのはまずい。そこで『それなら俺が!』と新井が顔を出すスムーズなポジション変換を見せるシーンも。こんな事も出来るのか…

そんな状況を結果に結びつけたのが新潟。4-4-2ゾーンディフェンス崩しの定石ともいえる形で新井直人→太田修介。アウェイ浦和戦での初白星を現実的にする見事な先制点でした。


 ボールと人を基準にしてスペースを守る浦和。この場合は中央も大外にも行ける位置を取りたいWG小泉。そこで、新井は小泉の後ろにポジションをとる。そうなると守備者のスライドが間に合わず⬇

 SB明本が新井をケアする必要性。そうなると新潟SH・太田が…

浮いた!

ディフレクトしたパスでしたが、相手に当たらなくても中央でフリーで待ち構えた太田に通っていました

相手WGの外側+後ろに立ってフリーで受ける、相手SBの意識を集中させて浮いた自軍アタッカーを使う。こうした442崩しは再現性が高く、これまで新潟もやられる側に立ったことがありました。

前進、脱出、破壊。ボールを保持しながら狙い通りに球も試合も進めた新潟。序盤までは『今日はいける!』と思っていました。そう、序盤までは…



苦しめられたボランチ、構造編

『ボランチがダメだ!』『補強しろ!』『層が薄い!』。皆さんの試合後のTLではこのように騒がれていたと思います。確かに自分自身もボランチの所は試合を通じて気になりました。一体何があったのか、何故上手くいかなかったのか。個の力不足?構造の問題?

その原因としてはどちらもあったと思います。

まずは構造の面から。浦和は配置と動きで新潟を広げる→空いたスペースに顔を出してボールを受けるまでが明確に整備されていました。新潟は4-4-2のゾーンディフェンス、こちらも人というよりはスペースを埋めながらじわじわ人にアタックする守り方。『だったらポジショニングでそれを乱してやるよ!』とボランチ周辺に負荷をかけながら仕掛けてきました。例えば⇩のシーン。

島田と三戸の間で受ける伊藤敦樹。三戸は酒井に意識がいってるので、そこは実質的な島田の管轄内。そこでベテランDMより後ろで受ける事で圧から逃れてスムーズにターンした伊藤敦。そう、走らされると島田は中々追いつけないのだ。

張っていた関根へ。泰基を釣りだし…
空いたSB-CB間へ伊藤敦が攻撃参加。島田置いてけぼり!

上記のように島田の脇を突かれるのは開幕からの頻出事例⇩。ゾーンで守る以上、ボランチの担当出来るエリアが狭いのは気になるところ。ここは人で解決すべきなので補強が欲しいかなと思います。正直それしかない。

それならカバーエリアの広い高宇洋がいれば…と思う方もいるでしょう。ただ、今節の浦和は例え高であっても対応が難しかったと思います。彼らは構造でも上回り、新潟のボランチ周辺を狙って意図して崩しにかかりました

浦和は新潟の中央にボールの出口を見出せるとスカウティングしていたのか、ボランチの脇・間に入れ替わり立ち替わり顔を出す事で綻びのきっかけを作っていました。

例えば先程のシーンに繋がる前ですが、島田は間に顔を出した大久保をケアしていました。そうなると伊藤への対応も遅れて先程のシーンに繋がってしまいます。

センターサークルに注目。


26:40~

このシーンでは星の横で上下動しながらボールを引き出す小泉。手前で受けられる分には脅威は無いのですが、星が食いついてしまうが故にボランチの間にスペースが。降りてきた大久保.興梠にボールを付けられてCBが飛び出して守らざるを得ない…というシーンが特に前半は多発しました。ボランチの脇で惑わせて間を空ける。この動きには相当負荷をかけられたはず。

手前に位置する興梠に星が引っ張られる。新井も芋づる式に小泉へ…
浮いた明本を走らされた。この後の展開で酒井宏樹のスーペルゴラッソ

 大久保-興梠の2トップ(と称していい)は互いに互いを活かし合える関係性が構築されており、一方が新潟DM・DFの手前.間に顔を出したら一方がその背後をとる。或いは逆の順序で新潟プレイヤーの手前.間をとる。DAZNでは映りきっていませんでしたが、現地からだとボールの無い所で常に駆け引きを行う2人の姿を確認できました。超厄介だったと思う。

04:10~

こういった事から、ピッチ全体を使いながらポジショニングで守備を惑わすようなチームに対しては、ある程度ボールサイドに圧縮しながら人が人を見れる守り方が好ましいのかなと思いました。特に高みたいな選手がいないのなら尚更。CL観れる環境がある方はPSG-BAYERNの1stレグを観て欲しい。PSGの4-4-2ブロックがお手本のようでした


(序盤は相手のアンカーの島田 譲選手に苦労していたと思うが〜(中略)~前半の途中ではどのようなところが改善されたのか?) 
「今日はハイプレスのところで、少しハイなところがありました。特にゴールキックのところで、新潟の選手は動いて伊藤涼太郎選手のスペースをつくることをしてきました。練習もしたのですが、もしかしたら十分ではなかったかもしれません。あまりうまくいっていませんでした。そこで通常の守り方に戻しましたが、センターバックやボランチの選手にとっては、よりやりやすくなったのではないかと思います」

スコルジャ監督

新潟に好き放題やられていたビルドアップに対しては、新潟GK.CBを放置して彼らからの出しどころを消したり、自軍DM(岩尾.伊藤敦)の位置を上げて島田や星の自由を奪うように変化させたスコルジャ監督。


サイドを変えながらボールを長くキープするという、相手がやろうとしていることをやらせてしまった流れになってしまいました。そうした流れの中で、相手陣内でボールを奪ってサイドチェンジをしながら攻撃をしかけ、(酒井)宏樹が長い距離のシュートを打つ判断を下し、それがゴールにつながりました。

https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/196429/

これにより新潟のボランチには余裕が無くなり、CBは運んでもパスの方向が限定されており、その上蹴った先にはショルツ.マリウス葉.明本.酒井。回収されてターンエンドとなる展開、相手チームに修正された事で効果的なボール保持が殆ど出来なくなってしまいました。




苦しめられたボランチ もっとやれただろ編

 最後にして今回一番大事な箇所。点を獲らないと勝てない前半の終盤~後半ではボールを持つものの、効果的に相手陣地まで進めてゴールを脅かすには全く至りませんでした。ゴール期待値は0.27。(確認してないけど)ハイライトに映るような事象は同点弾後だと2.3個くらい。はっきり言って停滞しました。現地で観ていてもとても寒かった。

とはいえ何もしていなかった訳ではなく、何かを試みたけど上手くいかなかった。それでは何をしたのか、どうすればよかったのか?ボランチの選手には『もっと出来たよね』と言いたいくらいです。

(ルキアン・マテウスみたいな)スペースに走って陣地回復してくれるアタッカーはおらず、浦和レベルの個で4-4ブロックに守られたら崩すのは至難の業。新潟としてはビルドアップで相手のプレッシャーを剥がして前線の選手達にストレスなく攻撃させてあげたいところ。そうする事で相手DF陣の手前.背後のいずれかにスペースが出来るので、プレーの余裕も選択肢も生まれます。

そして、そんなビルドアップでは中央を経由したいです。外回りのパスだとボールの循環が常に外だけ、U字のようにパスを回しても相手は中を固めればよいので何も怖くありません。クロスやドリブルをするにしても既に分かり切ってるので事前準備は完璧。要は何も生まれないのです


マルティ・ペラルナウの著作『ペップ・グアルディオラキミにすべてを語ろう』の中では、いわゆる“U字型のパスの循環”を読み取ることができる。それは、バイエルンのビルドアップから創造性と構築性を奪い取ってしまうものだった。

バイエルン時代に刊行された密着本では上記のような現象に対して『中央』の大切さを説いていたペップグアルディオラ。中央でボールを持てば左右両側に縦方向も加えて前方180度にプレーの選択肢が生まれます。ゴールへの最短距離は真ん中から攻める事。当然そんな危険なエリアには相手が密集して自由を奪います。そう来たら中央で相手を引き付ける事により外側が空いてきます。一定方向で回すよりも中を経由すれば外側をより有効に使えるようになるのです。

それでは新潟のボール運びはどうだったでしょうか。

流石に小島を絡められないエリアでは島田が降りて浦和の2枚に対して数的優位を形成する新潟。浦和DMが少し位置を上げてきたので、降りて圧から逃げる事で少し余裕を持ってボール出しに参加したい狙いもあったと思います。

ここでは前進してスムーズに攻めるために『ビルドアップの出口を作る』事に主眼を置いてプレーすべきところ。ところが『最終ラインで数的優位を形成する事』に目的が移行して、中々ボールをゴール前まで上手く運べませんでした。

ここでは相手のプレスラインが捉えきれない位置にいて欲しい、そうすれば脱出経路が1つでも増えることに。しかし小泉の真後ろに立ってボールを引き出せない星。この後に涼太郎が降りて脱出経路を増やしますが、こういったシーンでアタッカーは極力降ろしたくない、何故ならその後の崩しに人を割けずに詰まるから。アルベルト新潟の良くない時は大体そんな感じでした。

また、島田が降りて3枚を形成しても何も変化が生まれず、ただ後方で繋げるだけになってしまいました。有利なはずなのに有利に動かせない。それならどうすればよかったのか? 試合中に見えた解決策も交えながら今回の最後の最後、進めていきます。

3枚を有効活用

島田が降りてCBが開く。彼らに運ぶスペースを与える事で相手の中盤を少し広げられます。そこで星が受けられる位置をとるのは勿論、後方からの出口をもう一つ増やして前進の糸口を作る。チームとして3枚形成を優位に進められるようになるといいのかなと思いました。

56:40~では舞行龍から太田に縦パスが入り、落としを受けた新井→鈴木→新井→伊藤で前進→ファイナルサードまで辿り着きましたが、最終ラインに鈴木がいない。こういった状況ではやはりFWには最終ラインで勝負させたい。相手CBと駆け引きする事で伊藤涼太郎に更なる選択肢と余裕を与える事ができたと思います。

組み立てに関与したので崩しに入れない鈴木。

そこで前方は極力降ろさずに、SB(新井)-SH(太田)-OH(涼太郎)の関係性を作りたかった。この形ならサイドにボールが出ても横と斜めのサポートが出来るのでボール方向が縦オンリーにはなりません。それに新井.藤原のように各ポジションと互換性があるSBがいるので、このような位置取りの変化とボール出しについては自然と循環出来ると思います。実際に67:10~ではその片鱗が見えました。もっと出したかった

試合の中でビルドアップの形を変えるのはもはや当たり前の時代。個人個人で判断できるならそれが望ましいですが、『11人』でプレーしてゴール前まで迫りたいのが新潟なので、出方に応じて後出しじゃんけんが出来る程度の共有意識みたいなのはあってもいいと思いました。


Take me higher

V6の中で一番好きな歌はやはりこれ。ウルトラマンを観て育ってきたのでやはり思い入れがありますね。

さて、新潟としてはより高い位置でボールを受けたいところです。何故なら低い位置で受けても相手からしたらとても楽だから。ロングパスの名手やエンバぺ級のアタッカーでもない限り、低い位置の敵は放置orいけそうなら潰すで十分対応できます。

65:22~

浦和が少しギアを抑えてボランチが後ろ目に守るようになり、興梠-大久保の背後に使えるスペースが。興梠の脇で受けて関根を引き付ける→星→浮いた泰基で前進に成功しました。

試合を通じて、ボランチにはやはり相手FWの背後にいてほしかった。ここで駆け引きすると、相手FWを引き付ける事になるのでCBに運ぶスペースと時間を与えられるかつアタッカーを前方で勝負させる事が出来ます。69:56~では涼太郎が相手FWの背後に降りる、けどやはりその先にいて欲しい。てか星は何してた!笑

欠場した高はそのエリアで待ってCBに運ぶ余裕を与えたり、サイドに出たら横のサポートに走るなど、自身の存在で周りを助ける動きが出来ます。アルベルトの調教もあって国内屈指のアンカーに成長した高、ビルドアップの循環において彼の不在を感じてしまいました。


19:10~

星のこのプレーは超良かった。降りてFWを引き付けて小島へ。小島までプレスに行くFWの背後に上がってフリーマン化。舞行龍が使えていれば完璧に運べたシーン。最終的に上がるために一旦降りる。意図があるプレーならこのように効果的に相手を動かせるのです。


というように長くなりましたが浦和戦について書いていきました。崩しのフェーズによりよく移行するためのビルドアップ。自分達が変わる事で相手を変化させて、もっともっとやりたいプレーが出来るようになるはずですし、今節のような停滞感も打破できます。『アルビレックス新潟』を表現するための伸びしろはまだまだ沢山。ロッカールームの様子からもこのチームなら大丈夫だと思いました。

来週はルヴァン杯・ホーム鹿島戦。新顔(陣平.秋山を観たい!!!)を使いながら古豪を打ち破れるか。個人的にも今季初のホーム参戦なので楽しみです。ではでは


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