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【#119】長野県・松本市長選挙レポート(2024 3.17)


 この記事は選挙期間中も書き進めていましたが、書き始めと書き終わりでこんなにも想定感情が変わるのは初めてかもしれません。 まさか、こんな結果になるなんて・・・

 2期目を目指す現職に4名の新人が挑む選挙。 本来、現職にとって盤石であるハズの構図であるのに何故あんなにも “荒れた” のか。 この選挙を通じて現在の市民、現在の社会が求めている「首長像」が見えたような気がします。 是非ご覧ください。




◆松本(まつもと)市・概要

国宝・松本城 (※まちフォトFREE 様によるフリー素材です)
  • 面積:978.47㎢(長野県 第1位/77市町村)

  • 人口:235,130人(第2位)※2024年3月1日現在

  • 人口密度:240.30人/㎢(第19位)※2024年3月1日現在

  • 平均年齢:47.40歳(若い順 第3位)※2019年10月1日現在

  • 衆議院は長野2区に属し、


◆立候補者

竹内 貴也  (58) 無所属 新 河川問題を訴え続ける人
菱山 晋一  (68) 無所属 新 元信越放送専務
臥雲 義尚  (60) 無所属 現 2期目を目指す
赤羽 俊太郎 (41) 無所属 新 衆院議員元秘書
上條 邦樹  (54) 無所属 新 会社社長

 2期目を目指す現職に新人4人が挑む、「全員無所属」(←ここ重要)の選挙です。 このような構図では対抗候補が出にくい傾向が有る中、この乱立っぷりは際立ちます。


◆前回(2020年)の選挙結果

[当]臥雲 義尚 (56) 無所属 新 36,357票
 -------------------------------------
[落]大月 良則 (59)  無所属 新 26,238票
[落]花村 恵子 (52)  無所属 新 15,841票
[落]百瀬 智之 (37)  無所属 新 13,561票
[落]上條 邦樹 (50)  無所属 新   1,101票
[落]米田 龍二 (75)  無所属 新      646票

投票率:48.38%

 2004年から4期務めた菅谷(すげのや)市長が退任。 次の座を巡り6名が争う大混戦となった選挙は、2016年の市長選で2位に敗れた臥雲氏が再び立候補し当選。 雪辱を果たし、県職員を辞して出馬した大月氏、元テレビ朝日記者の花村氏、県議を辞して出馬した百瀬氏、以下、上條氏、米田氏は敗れました。
 その後、大月氏は松本市に本社が有る「キッセイ薬品工業㈱」の取締役に就任。 花村氏は2023年の市議選に出馬し初当選。

 百瀬氏は何故か2021年の東京都議選に維新公認で出馬し落選したあと、同年10月の自ら手放した議席を争う県議補選に出馬し当選。

 2023年の県議選本選でも当選し、現在通算3期目です。

 上條氏は今回も立候補し、米田氏は告示直前までは名前が挙がっていましたが出馬しませんでした。


◆POINT

①松本パルコ閉店と後利用問題

 松本市の中心部に建つ松本パルコ。 1984年に開業し、市が誇る商業施設として営業してきましたが、無料駐車場を完備した郊外店が充実し始めると中心部の他店舗と同様に客足が減り始め、更に2017年にはパルコから徒歩10分の場所にイオンモール松本がOPENし客を奪われ、そして2020年からのコロナ禍が決定打となり、2025年2月末閉店するコトになりました。
 松本市の “象徴” のひとつでもあり市民にとってのアイデンティティーとも言えたパルコの閉店は大きな衝撃を地元に与えましたが、その跡地利用を巡って意見が割れています。
 臥雲市長はパルコ側(親会社は松坂屋や大丸を運営する「J.フロント リテイリング」)と「年3億円 × 20年間 = 60億円」の賃貸契約を既に結んでおり、解体や改築をパルコ側が行ない、改築後の1,2階を商業施設としてパルコ側が運営。 3階より上階を松本市が使用し図書館などの施設を入れた「複合施設」として使用する方針を示していますが、それに対する各候補の意見は分かれています。
 主なトコロで言うと菱山候補は「土地を行政が買い取り行政主導で跡地利用をイチからスタートさせたい」と主張し、上條候補は「民間施設に市が関与し公金を支出するなど中止すべき」と訴えます。 具体策は掲げていないものの竹内、赤羽候補も現状の方針に疑問を呈しており、誰が当選するかによって計画が大きく変わる可能性が有ります。
 私が思うのは、中心街の商業施設が撤退し跡地利用に行政が入るというケースは何度も見たコトがありますが、それによって中心街が発展した例など見たコトがありません。 図書館が入ったり自習スペースが入るなど一定の効果は有るでしょうがそれにより賑わいが戻るコトは無いでしょう。
 ただ、行政がノータッチとなると建物は解体され土地は売却、跡地にはマンションが建つ、ってのが関の山。 そうなってしまってはあまりにも勿体ないので、もし行政に跡地利用のビジョンが有るのなら土地を買い取るのがベターかなと考えます。 イチ民間企業に今後20年間の使用方法を “握られる” 現状のプランはリスクが有るのではないでしょうか。


②松本市役所建て替え問題

 コチラが松本市役所。 県下第二の市にしては随分くたびれた建物に見えますが、それもそのハズ。 写真の「本庁舎」1959年に建設された、築55年と年季が入ったものです。  2006年から耐震補強工事(窓の外を覆う「丙」に似た形の外材)を行ないましたが現在建て替えが計画されています。 それに対しては全候補異論は無いのですが、臥雲市長は本庁舎は解体する一方、

 「東庁舎」(1969年建設)を残し、「子育て」「教育」「福祉」に関する部局を切り離し南松本に建設する分庁舎に移すとする「分散型市役所構想」を示しましたが、市民の使い勝手や職員の仕事能率が悪くなる懸念が有り、各候補から異論が出ています。
 竹内候補は「分散型でなく一体型。 現地または近隣で」と主張、菱山候補も現在地での建て替え、赤羽候補は何処に建てるにせよ集中型で、上條候補も現地建て替えの集中型を主張しており現構想を支持する候補はいません。 コチラも選挙結果によっては方針が大きく転換する、と思われたのですが、

 昨年12月の議会で「分散型」の方針を事実上撤回。 南松本に建設する分庁舎は「保健所」として使用するとし、部局は本庁に集中させる方針に転換するとし、市長は「分散型市役所という言葉にはこだわらない」と述べました。 これにより「市役所建て替え問題」は選挙の争点としては一歩後退したのでした。
 ただ私が松本市役所周辺に来る度に感じるのが、

(Google Map より引用)

 そのアクセスの悪さ。 国宝・松本城の隣で目の前の道は片道一車線慢性的な渋滞に加えインバウンドの賑わいによる観光客増で更に混雑するこのエリアに市役所を置く意味が有るのかという疑問が湧きます。
 「◆概要」に書いた通り松本市は県下最大の面積を持つ自治体。 いわゆる “平成の大合併” で1町4村吸収合併しています。 旧町村には「支所」が有るものの用件によっては本庁舎に来なければならないコトも有るでしょう。 その際はクルマで来るコトになるでしょうが、現在地はあまりにも不便。 例えば先述のパルコが建つ場所は交通の便という点では現在地よりは分かりやすいですし(駐車場をどうするか問題は残りますが・・・)、またパルコとは別に、

 パルコとほぼ同時期に閉店するイトーヨーカドー南松本店が建つ場所なら目の前が国道ですしクルマによるアクセスも容易だとも思ったりするのですが、(分散型を撤回した現職含め)全候補が現在地にこだわっています。 どうしても市の中心部でなければいけないのでしょうか・・・

 それでは、各候補の選挙運動を見ていきましょう。
 無料部分では1候補を御紹介します。


◆竹内 貴也(たけうち たかや)候補

 竹内候補は市内を流れる奈良井川沿いに建つ実家で生まれ育った影響から河川問題に興味を持ち、立命館大学で法律を学び卒業。 これまで奈良井川流域の安全確保を求め市、県、国の機関を訪ね訴えてきたが遅々として進まない現状を打破するため告示直前に市長選に立候補。「防災・治水 安全な松本へ」と掲げます。

 今回の取材は全て告示日に行なったのですが、きっとポスターは全候補揃わないだろうと考えていました。 特に竹内候補のポスターは貼られるかどうかすら分からないぞと。 しかしながらご覧の通り告示日に撮影成功。 しかも竹内候補のポスターも他候補と同様の早さで貼られていたのに驚愕!
 ワンイシューを訴えたいがため立候補した独立系候補かと思われましたが、もしかすると強力なスタッフを備えているのでは? と思いつつ、新聞に発表されていた演説場所に向かったのですが、

 そこに居たのは竹内候補ただ一人。 演説をするに表示が必要な「街頭演説用標旗」「選挙運動用拡声機表示」も全て持ち、徒歩で移動するスタイル。 スタッフなど誰ひとりいません。
 話によるとポスター貼りは業者に依頼して貼ってもらったとのコト。 もちろん資金を要しますが、候補者としての自分を知ってもらわなければ意味が無いのでその判断は正しいと私は考えます。

 奈良井川沿いで、殆ど効果の無い小さすぎるトラメガを使って演説をする戦略をとっていた竹内候補。 その主張ですが、

(クリックやタップで拡大してご覧ください)

 この選挙公報を見て把握いただければ、と。

  もしくは演説動画を直接見ていただければ。 私が河川問題に対し不勉強なせいですが、何度聞いても主張の趣旨がよく分かりません

 とにかく、手元の原稿(兼ビラ)を読み上げ「河川の安全」を訴えていました。

 NHKのテレビクルーが取材に来ていて記者がイロイロ質問するのですが、何を聞かれても公報の「1.」に書いている「1/100を1/80に・・・」と繰り返すのみ。 慣れないインタビューに竹内候補は四苦八苦していましたが、その内容にその場にいた取材陣(NHK+私)も四苦八苦したのでした。
 先に結果を書いてしまえば、得票率1.3%最下位供託金没収となったのは予想通りですが、もしポスターを自分で貼っていたら千票を大きく下回っていたと思われ、他候補が誰も取り上げなかった河川問題を市民に訴えるコトが出来たのはきっと竹内候補にとって大きな成果なのでしょう。

 それが、「供託金100万円+ポスター制作費+ポスター貼り依頼費」をかけてでもやるべきコトなのかどうかは、そんな大金持っていない私には分かりませんが・・・

 それでは残り(3+1=)4候補については有料部分で。 告示日に取材し「これでイイや」と思い取材を終えた私の判断が如何に愚かだったか、自戒を込めて綴っていきます。 もし宜しければ御購読ください・・・


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