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「歩いていて」
「ええ、どこでしょう」
「そこにあるから蹴った」
「どこです」
「蹴ったら、蹴れるもんだね」
「まァ、そんなものです」
「何が」
「それは、まァ。だいたい蹴ったら、蹴れるものですから。何がです」
「岩だよ」
「岩ですか」
「そうだよ」
「岩を蹴りますか」
「蹴るよ。蹴って、向こうまで転がったさ」
「そんなことがありますか。けれど、ちょっと、いいですか足」
「——おい、アハハ、止めないか。くすぐったいじゃないか。アハ、お、アハハハハハ」
「——なかなか繊細だなァ」
「岩が砕けてみろ!」
「なんです。びっくりしたァ」
「散らばって、それは石だよ。僕の蹴った石なんてそれで岩なんだから……石田さんなんて言っても聞けば岩田さんで、子供の遊ぶ砂場はやっぱり砂利場で、砂利は石なんだから、やっぱり危険な岩場で、それもこれも岩が砕けるんだから……」

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