グンジ君、おにぎりをギュ！とね。

グンジ君を泣く泣く採用して、トレーニング初日。彼はやってきました。相変わらずの幼児体型。まーそこはどうでもよく、契約書類関係を話して制服を用意してあげ、店内の説明から始めました。

グンジ君は、ポカンとしていましたが、まあいいでしょう。出勤初日は、フェイスアップを叩きこみます。フェイスアップというのは、商品の顔をお客様に見えやすくすることです。

【フェイスアップ＝顔を上げる】

ですね。

コンビニに買い物に来るお客さんの滞在時間は10分以内と言われています。この10分の中で全ての商品をアピールするのは難しい。だからお客さんが商品を少しでも探しやすくするために、商品が倒れていたり、商品パッケージが見えにくいという状態を減らそう。

そのために商品の顔を上げようというのが目的です。実際に、このフェイスアップを死ぬほどやると、売上が上がります。アパレルショップでお買い物をするとき、シャツなどしっかりたたんでいる店員さんがいると思いますが、考え方は同じようなものです。

まずは、おにぎりとお弁当のフェイスアップトレーニングです。

具体的には、

・おにぎりが横に転がっていたら、それを立たせてパッケージを売り場側へ並べる
・お弁当もかなり売れてしまったので、７段の什器にお弁当がまばらに並べられている
・これを中央の段に残りのお弁当を並べて選びやすく整える

これをやってもらうと思いました。

グンジ君は、まずおにぎりからフェイスアップしていきます。ちょっとぎこちないですが、まあいいでしょうと思ったら、チャーハンおにぎりをギュ！と力強く握りました。

（？？？　なぜそんなに力いっぱい　？？？）

私「グンジ君、なんでチャーハンおにぎりをギュッとしたの？それ商品なんだよ。」
グンジ「あ、あ、すんません。持ち上げたら落ちそうになったので、とっさに。」
私「なるほど。グンジ君、手が小さいね、でも気をつけてね。」

という感じでした。おにぎりを終えて、次はお弁当です。さっき私がやって見せた通りにお弁当のフェイスアップをしていきます。これは全く問題ありませんでした。

そんなこんなで他の商品もフェイスアップをしてもらいました。そして、最後の１時間はレジトレーニングです。

レジトレーニングは次の通り。

・お客さんが来たら、「いらっしゃいませ」と言う。
・商品をお預かりして、１商品づつスキャン。
・そのときには、１商品づつ「150円が１点」と言う。
・すべてのスキャンが終わったら、「合計で1500円になります」と言う。
・お客さんからお金をお預かりする時も「2000円お預かりします」と言う。
（※このとき「2000円からお預かりします」と言う馬鹿がいるが「から」は付けないこと。）

という順序で、何度も練習。でもグンジ君は、意外なところでつまづきました。さすが想定外の男。

レジトレーニングをしていましたが、グンジ君は、最初の「いらっしゃいませ」がうまく言えませんでした。

マジか。何度練習しても、

「いらっさませー」
「いらっしゃすー」
「らっしゃせー」

どんどんダメになる。なんだ最後の「らっしゃせー」って。原型がないじゃないか。まったくレジトレーニングにならないので、一旦、店長室に戻りました。

グンジ君は、「すいやせん」と何でも言ってました。
そしてモジモジ。

「モジモジすんなーーー！」

と言いたいところをグッと堪えて、仕方ないですね。初めてのバイトですからと切りかえました。そして、接客用語の練習。

「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
「またお越しくださいませ」

すべて、うまく言えないことが判明。高校２年生だろ！と言いたい。でも言わない。「はい。もう１回言ってみて」と練習。練習。

グンジ君のトレーニング中、そんな自分との戦いをしていると、トレーニング終了時間になりました。

「じゃあ、練習をしてきてね、次のトレーニング日は明後日ね。今日はお疲れさまでした。」

と宿題を出して、１日目が終了しました。これはやっかいだ。疲れる。そうだ副店長にやらせよう。そんなことを考えました。

そして、トレーニング２日目、軽い事件が起こりました。

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