ウナギを食べた日

先日の土用の丑の日は、久しぶりにウナギを食べた。たまたま商店街の魚屋に閉店間際に駆け込んだら半額になっていたので、即購入。
ウナギには日本酒が合う。俺はしっかり味の濃い酒よりは、ドライな酒に合わせるのが好きだ。今回は定番の日高見で一杯。冷たい辛口の酒が、ウナギのたれとふわふわの香りを引き立ててくれる。

日本では縄文時代からウナギを食べていたという。その証拠に貝塚にはウナギの骨が混ざっていることもあるようで、太平洋沿いの遺跡を中心に、北海道から沖縄まで見つかっている。もちろん当時は調味料なんかもなかったろうから、シンプルに焼いたりしていたのだろうか。ちょっと気になるところだ。
そして文芸作品やアートにも登場し、江戸時代の「醒睡笑」には山芋が変化してウナギになるという話が出てくるし、斎藤茂吉のウナギ好きは有名だ。それだけ古くから食べられ、愛されてきたウナギ。調べてみると百を超える呼び方があるらしく、日本文化への浸透の深さが伺える。

名前の多さはその生物が文化の中でどう人々の生活に溶け合っているかを表す指標になる。モンゴルでは馬を性別や年齢の近いで呼び分けているし、アラブ圏では多様な呼び方でラクダを表すという。

日本でほかにそういうものがあるとしたら、雨だろうか。夕立、五月雨、卯の花腐し。春霖、秋霖、村時雨。虎が雨や狐の嫁入りといった言葉もある。
最近よく聞くゲリラ豪雨だってそうだ。もうとても「夕立」なんてレベルで済まない雨のことを、現代人はそう名付けたということなんだろう。

光とか風とか季節とか色とか、どこか昔の誰かが「そう名付けた」ものを、もう少し感じられたらいいな。と、ウナギを食べてそう思ったのでした。

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