読むたびに色変わりするもの
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山月記
中島敦
中島敦が卒論のテーマが「耽美派の研究」だっからなのか、数多くの資料が私が住む神奈川の神奈川近代文学館に残っている事を知ったからなのか、33才歳の若さで去った事を知ったからなのか。どれも不確かで動機を覚えていないが、読みたいと手に取った。
もしかしたら、教科書で読んだ事があるかもしれない。どこかで触れた記憶が微かに読みながら少しづつ思い出すが、いつどこでがわからない。
山月記。今読むと、とても大事な事を伝えてくる。
自惚れ、自尊心、嫉妬心、挫折、初心、年齢を重ねて時の経過と共に増えていくし忘れるもの。
独りよがりの発展は行き詰まる。
自惚れから人との関わりを自ら断って競い合わなかった事による怠惰。
それは、一人の人間のみで成長出来る訳ではなく、人間は、人間と関わり何か変化する事を伝える。
虎になってしまった主人公は、人間時代に考えていた自分の自慢の詩を自らが放棄して、なり損ねた立場の古い友人に託す。
友人は、心の中で確かに良い出来だけど何か足りない気がすると感じる。
この部分。
大成すると信じていた自分の詩をどうにかして託したのに、この友人の素直な感想。
これが、惹き付けられた。現実とはそれだ。
自分が感じる事を相手も感じると思うな。
才能も切磋琢磨して磨かなければ伝える事、発揮する事は出来ない。
自分の高過ぎたプライドにより、他人との比較、批評、戦いを避けたために本物にはなれなかったということを伝えてくるように感じる。
これは、何回も読むべきだ。
おそらくその時の立場や感情で引っ掛かる場所が変わってくると思う。
こんな教え方もあるのか。
今までの読了後の感覚と何か違う。
面白い。
昔、教科書で読んでいた記憶が確かだったとしたら、その時の思慮の浅さと根拠のない自尊心の塊だった自分に今何と言えば伝わるか考えたい。
四半世紀経過して、そんな事を考える大人になってるってわりといい方向よ。と、自分を慰めながら、腰労りながら。自惚れ満載の秋味。
神奈川近代文学館。行かなきゃ。
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