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小説  「大きな桜の木の下で」

(暑い)
人がごった返す満員電車の中で、僕は思った。
毎朝毎朝、出勤のたびにこうなのだから
いくらなんでも参ってしまう
車内の冷房もなんの意味もなさず
密室の中、人々の熱気が集いに集った
ここはまるでサウナだ
(暑い、、、、臭い、、、、どうにかして中央から脱出しないと)耐えきれなかった僕は、人の波をかき分けかき分けなんとか、車窓側に出ることができた
ふと車窓の外を見ると、河川敷が見えた。
見事なまでの桜並木が立ち並んでいる
(あぁ、桜か、久しぶりに見た
そういえば、、、、、あれからもう、6年か、、)
桜を見ると思い出す、、
まるで桜のように可憐で、儚く、美しかった
彼女のことを、、、、、


第一話   種

遡ること8年前、桜がもう散り始めている四月の頃
僕は高校に入学した。
春、出会いの季節、誰もが期待に胸を膨らませ
新たな出会いに心を躍らせる、そんな季節だ
でも、それは、陽のあたる人たちに限っての話だ
僕のような、生まれてこの方目立ったことのない
ような人間にとって、春なんていうのは、
ただのどうでもいい季節のひとつに過ぎなかった、まぁ、要するに言うと僕は冷めていたのだ

暑苦しい体育館で、どうでもいい校長の話も終わり、入学式は終了した、やっとあのかったるい場から解放されたのと、外の空気の気持ちの良さに
僕は思いっきり伸びをした
(あったかい日差しが心地いい)
そんなことを思っていると、不意に背中を叩かれた、
「よっ!優一(ゆういち)!なーにやってんだ?」
ツンツンと上に上がった黒髪に、少し着崩した
制服、いかにもやんちゃそうなこの青年の名は
哲也(てつや)僕とは小学校からの数少ない親友の1人である
「うわっ!なにすんだよ哲也!急に脅かすなよな」
「アッハハ、お前相変わらずビビリだなぁ」
「ビビリなの知ってんなら、やめろよな、、
心臓に悪いだろ、、、、、」
「いやー、わり〜わり〜、お前の驚く姿見たくて、ついな」
手を合わせて謝る哲也
ほんっと、こいつはお調子者だ
でも、誰に対しても分け隔てなく優しく
そして、明るか元気な哲也は、いろんな人たちから人気があった、そのため友達も多く意外とモテる(ムカつくけど)
そう、お調子者だがいいやつなのだ
そんな哲也に、僕自身、何度も救われたこともあった。だから、驚かされても別に特段腹が立つとかそういうことはなかった。
「で?なに?哲也、僕になんか用?」
「いんやぁ?とくにねぇけど?」
「ないのかよ、、、、わかっちゃいたけど」
「あー、そういえば一つ思い出した!
優一さ、絵を描くの好きだったろ?」
「んー?まぁ、好きっちゃ好きだけど、、、、」
「この学校の校庭の隅っこにさめっちゃでっかい
桜の木があるらしいのよ!どーよ!風景画の対象にめっちゃ良さそうじゃねぇ?」
「桜??そんなもの見飽きてるんだけど」
「相変わらず冷めてんなーお前、いいから見に行ってみろよ、なんでもスッゲーでっかいらしいぜ」
「ふーん、、、、」
「あぁ、お前!興味ないんだろ?顔見りゃわかんぞ!!まぁ、いいけどよ、、俺この後ちょい用あるから、また明日な!優一!」
「え、おい、ちょ、まっ!はっや、、あいつ」
本当に嵐のようなやつだ
(しかし、大きな桜の木か、、、、あれだけ騒ぐくらいだ、、、、よっぽど大きいのか?、、、興味がない、、
訳でもない、、)
昔からどうしてか、風景画を描くことが好きだった僕は、風景画を描くのが趣味だった、その関係で入った美術部では、何度か賞をもらったこともある、そんな無類の風景マニアの僕は、大きな桜の木というのは、少しそそられる話であった。
「どうせ、暇だし、、行くだけ行ってみるか」
そうしてぼくは、体育館を後にし
その桜の木とやらの場所へ向かった。
体育館からしばらく歩いた後、曲がり角を曲がった先に、あった、、桜が、、、、
(これ、、、、でかい、、のか?)
確かに桜はあった、だが、話に聞いていたほどものすごく大きな木という訳でもなかった、、、
確かに、大きいのは大きいのだが、通常の桜のせいぜいふたまわり大きい程度だった。
僕は、深くため息をついた
「はぁぁ、哲也のやつ、これのなにがすっごいんだよ」
確かにでかいにはでかいけれど、僕の想像の中では、鹿児島の屋久杉のような、大木をイメージだのであったから、現実との差に拍子抜けするのは
仕方ない。
(でも、確かに、、、良い絵はかけそうだな、
どれ、もうちょい近くにっ、、て、ん?なんだ?人?)
桜の木ばかりに目を向けていて気づかなかったが
桜の木の下にはポツンとベンチが置かれていた
そこに誰か座っている
肩につくかつかないかのショートヘア
どこか悲しげな顔をしてその人は、桜を見上げていた。
(どーしよう、出直すか?)
そう思った僕は、元来た道を戻ろうとした、、
がしかし、落ちていた枝を踏んでしまい
パキッといい音を立ててしまった。
その音に気付いたのか、その人は、僕の方をびっくりした目で見つめていた、、
(やばい!やらかした!)
「あ、、すいません、見てたのに、、桜
邪魔をするつもりじゃなくて」
僕は恐る恐る彼女の方を見た
初めこそ驚いた顔をしていた顔していたものの
すぐさまその顔は、笑顔になった。
まるで、満開の桜のような、、
そして彼女は言った
「君?新入生だよね?私も一緒なの!
もしかして君も桜の木を見に来たの?」
彼女は明るくそう言った
「え、あぁ、まぁ、そんなとこです。
友人に勧められて見に来たんです、、
でもまぁ、思ってたほど大きくなくて
拍子抜けしたんですけど、あはは、、」
冴えない声で僕は答える
すると彼女は言った
「えええぇ?そんなことないでしょ?
おっきくない?この桜の木
普通のと比べたらすっごいおっきいよ?」
意外だった、てっきり、僕と同じようなことを思ってるのかと思ってた。
桜を見つめる彼女はどこか悲しい顔だったから
「あぁ、まあ、人それぞれですよね、
それより、好きなんですか?桜?」
彼女は笑って答えた
「うん!大好きだよ!桜!
しかもね!この桜私とおんなじ名前なの!」
「ソメイヨシノ、、、、ですか?」
「え!?すっごー!なんでわかるの??
君なに?植物学者?」
「いや、風景画をたまに少し描くので、
それで、植物を調べたりしたことがあって
それで、、」
「なるほどねぇ!ふーん、君、絵上手いんだ!?
すっごいなぁ、憧れちゃうよぉ!」
「まぁ、上手いかは、別として、、、、
それより、え?ソメイ ヨシノって名前なんですか?」
「なわけ!!たしかに私はヨシノだけど!
桜宮(おうみや)ヨシノ!これが私の名前!
君は?」
「、、、、清田優一です」
「ふーーん、優一くんっていうんだ!
これからよろしくね!!」
「え、、?あ、あぁよろしくお願いします」
「むーーー!敬語禁止ー!あと!呼び捨てでいいからね!同い年なんだから!次使ったら怒るよ」
「もう怒ってるじゃないですか!?」
「あーーーー!使ったあ!!
怒るぞおぉ!」
「わかった!わかったよ、、、
よろしく、、、、ヨシノ」
「んふふ!それでよーし!」
彼女はニコッとそう言った
最初の悲しい顔は嘘かのように
満面の笑みだった
「ねぇ!優一くん!ここ座って!」
少し、スペースを開けながら彼女は言った、
言われた通り僕はベンチに座る
僕が隣に座ると数センチ先に彼女がいる
女性慣れしてない僕は、顔が赤くなるのを感じた
バレないように違うところを見ていたが
「あれぇぇ?優一くん、顔あっかくなーい?
もしかして!照れちゃってる!?やだぁ
ゆーいーちかーわーいーい!」
一気に顔が赤くなってしまった
「からかうなよ、、、、」
「あーごめんごめん!優一くん可愛くってつい、、ね?」
(この人、哲也に似てるな)
「ところでさ、優一くん!君は桜好き?」
「好きか嫌いかで言われたら好きです、、、、」
「ふーん、そーなんだ、私はね、桜だーいすきなんだー!」
「さっきも言ってたよね、、、、それ」
「うん!なんか、儚い感じがすっごい好き!
私ね!将来旦那さんができたら、
一緒にこーやって、桜の木下で寄り添って座るのが夢なんだ〜」
彼女は頭を僕の肩に預けようとしてきた
シャンプーのいい匂いがする。
僕は思わずベンチから落ちそうになった。
「あー優一くん動揺してるぅ!かーわーいいー」
「人をからかうのもいい加減にしろよ、、」
「わーーー優一くんが怒ったぁ!こーわーいよーー逃げろーー」
彼女はそういって立ち上がり、楽しそうに走り出した。
「え、ちょっと、どこ行くんだよ!?」
彼女は少し離れたところで振り返り言った
「優一くん、私のこと、捕まえてね?」
また彼女は笑顔を見せた、しかしそれは、
先ほどまでの笑顔と違った。その笑顔は、
最初と同じどこか寂しげな笑顔だった
そして彼女は、走ってどこかへ行ってしまった
(なんだったんだ?あいつ、変なやつ)
体力に、自信のない僕は、無駄な労力を使いたくはなかったので、追いかけるのはやめた

しかし、この時の僕は知るよしもなかった。
あの笑顔が彼女からのメッセージだなんて
思えばこの時にはもう、僕の中には植え付けられていたのだろう、、、
君に対する心の種が、、、、
その種は、その時から着実と成長を始めていたんだ


第2話     発芽

「オラァ!このくそインキャ野郎!」
僕は、腹に衝撃を覚える
「カハッ!、、、、オェオェエェェ」
あまりの衝撃と当たりどころの悪さに
僕は思わず嘔吐してしまう
「うぅえ!こいつ吐いてるぜ!ギャハハ
きったねぇなぁ!」
(この、、、、クソ野郎ども)
僕は心の中でそう呟いた
彼女との出会いから一ヶ月
あれから彼女に出会うことはなく
普段通りの生活を送る、、、、つもりだった
僕は元々社交的な性格ではなかったし
友達も少ない僕は、
すぐに学校では浮いている存在になった、
そのせいか、今では時々こういう、
スクールカースト上位気取りの
馬鹿な奴らに絡まれてサンドバックにされているってわけだ。
「おいオイィ!いつまで下向いてんだ?このゴミカス陰キャ!!早く顔上げろよ?お?お?」
頭を踏みつけられて地面に顔を擦りつかされる
(くそっ!くそっ!俺がなにをしたんだよ!
なにが悪いんだよ!)
「もー〜ういいわぁ、めんどくせぇ
その顔面の鼻折ってやるわ」
「いや、アニキィ、流石にそいつはやりすぎなんじゃ、、、、」
「ああぁん!?文句あんのかよ?テメェよ?
お前もこうしてやってもいいんだぜ?」
「ヒィ、すみません、」
「なぁに心配するな、鉄棒に鼻をぶつけたとでも言わせておけばいいんだよぉ
んじゃ、いくぞおおおお!」
クソ野郎の足が僕の鼻めがけて蹴り込まれる
その瞬間だった
「おい!お前ら!優一に何してんだよ!」
「チィッ!見つかったかくそが!
逃げるぞ!!」
「待ってくだせえや!アニキィ!」
クソ野郎どもは、走ってどこかへ消えていった
「あ!おいこら!待て!このクソやろうどもーー!」
「い、、いいんだテツヤ、」
「はあ?いいわけねぇだろ!親友傷つけられた見過ごせるかよ!」
「俺、、、、、は大丈夫だから」
「はぁ、、お前ってなんか変なとこ強情だよな」
「そ、、、、うかな?」
「あーーそうだよ!お前は昔からそうだ!
ところで、お前はなんであいつらにいじめられたんだ?」
「、、、、特に何もないよ、、、、陰キャラは目障りなんだろ」
「それだけでここまでするわけねぇーじゃんか!
顔腫れてるぞ!理由を言えよ!」
「ッ!いいんだ、、、、大丈夫だから!
ちょっと顔洗ってくる!!」
僕はその場から逃げるように走り出した
「あ!?おい待てよ!優一!
せんせぇーには、伝えておいてやるからなぁ!!おーーーい!」
(ごめん!、、、、哲也!)
蛇口を捻り顔を洗う
「いったぁ、、、、」
傷口に水が染みて痛い
(はぁ、言えるわけないよな、いじめられっ子を庇ったらいじめられてるなんてみっともないこと)
そう、なぜいじめられているのか、
それは、遡ること一週間前ほどのこと
例のクソ野郎どもがさっきの僕と同じように
他のおとなしい子をいじめているところに遭遇してしまった、地獄のような光景に見ていられなくなった僕は、思わず止めに入った、
元々目はつけられていたため
ターゲットが変わるのは容易だった
次の日からいじめられるのは僕の方になった
でも、これでいいんだと思った
僕が傷つけばあの子は傷つかないから
それで十分だ
そんなことを思いながら空を仰いでいると
曲がり角の先から声が聞こえた
(なんだ?何か聞こえる、、、、歌、か?
この先は桜の木がある場所のはずだけど)
その声に導かれるように、僕は歩いて行った
近づけば近づくほど、その歌の内容は鮮明にわかってきた、
「ぉ、、、、きな、、、、、下で、、、、、あなた、、、、わたし
なかよ、、、、く過ごしましょう」
そして曲がり角を曲がった
そこには、彼女がいた、
桜の木はもう花を全て落とし、緑のただの木になっていた。
しかし、彼女はあの時と変わらず、桜の木を見上げながら歌を歌っていた
「大きな桜の木の下でー♪あーなーたとわーたしーなかよーく過ごしましょー大きな桜のきのしたでえー」
それは、童謡の大きな栗の木下での歌詞を変えたものであった
歌う彼女は、どこか楽しげでそしてなぜか
儚く見えた
気配に気付いたのか、彼女は僕の方に気づいた
「え?優一くん?どしたの?その傷」
僕はハッとした
「これは、なんでもないよ、、、、」
「絶対嘘だよ!ほらみして!絆創膏貼るから
こっち座って!」
最初の時と同じように彼女はベンチのスペースを
空けてくれた
流されるままに僕は隣に座った
「あちゃーーこれは派手に怪我しちゃってるねぇ
どったのさ?これ」
「転んだだけだよ」
彼女の絆創膏を貼る手が止まった
「、、、、、、、、殴られたんでしょ?」
「え?」
「知ってるよ、、、、、私見ちゃったもん」
「見たって、、、、僕がされたいじめを?」
「ううん、その前の子のことから知ってたよ
優一くんが、庇ってあげたことだって知ってる」
「どうゆうこと?」
「そのまんまの意味、、ある日、授業の移動してる時に声が聞こえてきだの、のぞいたら、あの子がいじめられていた、、、、、。私、怖くてどうしようもできなくて、ただ見てることしかできなかった。、、、、
でも、そこに、優一くんがきた。
ほんとにすごいなって思った。
それに比べて私は、何もすることができなかった
私、最低だよね、優一くんがいじめられてるのも知っていながら、何にもしてあげられなかった
ほんと、軽蔑するでしょ?、、、、」
彼女は、俯きながらそう言った。

確かに、怒る人なら彼女に対し怒るのかもしれない、でも僕は、彼女に腹が立つことはなかった
むしろ、知っていてくれてありがたかった
真実を知ってくれている人がいるだけで
随分と心が楽になるからだ
「ヨシノ、、、、さん、軽蔑なんてしないよ、、、、」
「え?」顔を上げた彼女の目は潤んでいた
「むしろ、ありがたいよ、真実を知っている人がいるだけで僕の心は軽くなるから!」
「な、、、、何言ってるの?優一くん
私見てて何もしなかったんだよ!?」
「勝手に止めに行ったのは僕だし
君が責任感を負う必要はないよ」
「、、、、、、、、優一くん、、、、変わってるよね
普通の人ならもっと怒るはずなのに」
「そうかな?自業自得ってやつだよ」
「お人好しというか、なんというか、
とにかく変だよう!」
「人を変人呼ばわりするなよ、、、、」
「ふふっ、、、アハハハッ!
変人ってアハハッ!」
「おい、何笑ってんだよ」
「いやー、優一くんって面白いね」
「それはどーも」
しばらくの沈黙の後彼女は言った
「私を許してくれたお礼に
私からのプレゼントがありまーーす!」
「?プレゼント?」
「そ!なーーーんとーーーー!?
昼休みの間私とここでお話しできる権利をプレゼントシマーース!!」
「は?え?それがプレゼント?
それ俺にメリットあるの?」
「ええーあるよ!ありまくりだよう!
こーーんな超絶可愛い子と話せるんだぞぅ!」
「それ、自分で言うなよ、、、、」
「むー!素直じゃないなぁ!
それにさ、、、、、ここって人がほんっとにこないんだよね、ほら、しかもここのベンチが校舎側から見ると木で隠れるから死角になってるんだよね
だからさ、昼休みの間ここに来れば
あいつらから隠れられるんじゃないかな?」
(その考えはなかった、、、、)
「確かに、、一理ある、、、、」
「でしょおお!だからさ!毎日昼休みはここにきて、私とここでしゃべろうよう!相手いなくて暇なんだよう!」
「でも、、、、、僕が逃げたら
前いじめられてた子が、またいじめられるんじゃ」
「あーーそれならだいじょぶ!あの子ちゃんと先生に相談してさ、転校したんだよねぇ他校に」
「なっ!、、、、そうだったのか、、、、、」
(俺は一体なんのために身代わりを、、、、トホホ)
「さぁ!清田優一よ選べ!!
美少女と話すか?それともゴリラ野郎のサンドバックになるか!」
そんなの、選択は一つしかない
「わかったよ、、、、ヨシノと喋るよ」
「んふふふふふふ!そっかあ!うっれしいなぁ!
じゃあゆびきりげんまんね!」
彼女は小指を差し出した
「え?」
「いいから、ほら!はやくおだし!」
僕は咄嗟に彼女と指を結んでいた
彼女の指は小さく細く
しっかりつかまえないとどこかへ行ってしまいそうな儚さを感じた。
「ゆーーびきりーげーんまーんうそついーたらはりせんぼんのーーます!指切った!
えへへ!これで優一くんは私と喋ることが決定しましたぁ!」
彼女は満面の笑みでそう言った
「でも、よかったの?そのヨシノさんは、
僕なんかで、」
そう、ほんとに僕なんかと話すのは楽しいのか?
そこがどうしても気になってしまう
「コーーラー!敬語禁止!呼び捨てしろぉ!
さっきもさん付け使ってたし!」
「あ、それはごめん、、」
「うむ!わかればよろしいー!」
「それとね!優一くん!
優一くんだから私は話したいんだよ!」
また僕は顔が赤くなるのを感じた
「あっれぇ?ゆーいちーくーんまた照れてるぅ」
意地悪く彼女は僕の顔を覗き込む
「や、やめろよ」
僕は手で顔を隠す
「えっへへぇ!ほんとに優一くんは可愛いなぁ」
そう言って笑う彼女も、少し頬が赤く見えるのは
気のせいだろうか?
「あれ、もうこんな時間だ!授業始まるね!
戻らなくっちゃあ!」
そう言って彼女はスッと立ち上がった
そして数歩歩いた時、彼女は僕の方を振り返って言った
「それじゃあ、優一くん!また明日ね!」
そう言って彼女は校舎の方に戻って行った

それからと言うもの、毎日の昼休みに彼女と桜の木の下で話すことが日課となった
不良どもは哲也が先生に報告してくれたことで
大目玉を食らい少しの間停学処分を食らったらしい
そのおかげで僕は、安心して彼女と話をすることができていた。
そこで僕は彼女のいろんなことを知った
趣味や、食べ物、スポーツ、ゲーム
芸能、音楽、家族構成など、、、、
とにかくいろんなことを知った
そしてまた、彼女も僕のことを知っていった
僕の言うことに彼女はいろんな表情を見せてくれた。それを見るのが楽しくてついつい僕もいろんなことを話してしまう、
彼女には不思議な魅力があったのだ
その魅力に僕の心の中で、何かが芽生えた気がした。
そうして、僕と彼女だけの秘密の昼休みを過ごす毎日は、光のように過ぎていった。

そして気づけば春は終わり
暑い暑い夏がやってきたのであった。



PS!!

今回は2話までですが
次回は4話までできれば5話までかきます
お楽しみに!!

















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