利用する皆の安心のため 保育園の行政監査
行政からの補助金で運営をおこなう認可保育園では、
年に1回かならず行政監査というものがあります。
補助金つまり国民の皆さまの税金をつかっているということで、
どんなお金のつかい方をしているのか、
どんな運営をしているのか、
しっかりとチェックされるというわけです。
今回は、そんな監査について
その内容をすこしご紹介してみようと思います。
まずは膨大な書類提出
各行政機関によって違いがあるかもしれませんが、
監査の第1ステップは書類の提出です。
職員の配置状況から給食の栄養計算の資料まで、
この時点でもたくさんの書類を提出します。
この書類をもとに、
あらかじめ決められた日程に
行政の担当の職員さんたちが実際に園に調査に来られることになります。
調査の当日は複数の職員さんが分担して、おもに
必要書類関連、
財務関連、
労務関連、
施設・設備関連、
保育内容関連、
給食関連、
といった具合にそれぞれ調査していかれます。
当日は立ち合いの施設検分から
まずは施設や設備の検分から。
園長や主任などの立ち合いのもと、
各保育室や事務室、給食室、トイレなど全室をまわります。
掃除や消毒は行きとどいているか、
地震などで落下してくるような危険物はないか、
避難経路は安全に確保されているか、
火災報知機や誘導灯、消火器などの設備は故障なく備わっているかなど、
こまかくチェックされます。
また、おもちゃやトイレの消毒はされているか、
手洗い場のタオルや手拭きなどは共有されていないかなど、
感染症や食中毒への対策もちゃんとおこなわれているか確認されます。
iPadなどを使用しているところは、
データの取り扱いについても確認が。
個人情報の流出に関して、
近年はとくに厳しくチェックされるようになっています。
保育内容についての調査
施設を立ち合い検査しながら、
同時に保育の内容についての確認も始まります。
遊びが安全に配慮しながら実施されているか、
お昼寝のときにはSIDS防止のために呼吸チェックがされているか、
お薬をあずかるときには飲み間違いがないように対策されているか、
防災・防犯の避難訓練はおこなわれているか、
事故の防止のためにヒヤリハットなどは共有されて対策されているか、
などなど。
実際の現場や事前に提出しておいた書類と照らしあわせながら、
こまかくチェックされます。
保育の内容に関しては、
現場チェックの後、
園全体としての保育計画や年齢ごとの年間カリキュラム、
毎日つけている一人ひとりの日誌、
水遊びの記録や避難訓練の記録、
ケガの報告やお薬のチェック表、
健康診断の結果や給食の検食
( 保育園では子どもが食べる前にまず大人がひと口食べてみて、
安全か、味は適切かなど確かめるんですよ )の記録なども
しっかりと確認されます。
もれがあったり、記入が不十分だったりすると、
改善をもとめられます。
保育の内容の話で書類チェックの段階に進んでしまいましたが、
現場での立ち合いの検査が終わると、
このように今度は書類の検査に入っていきます。
大体、保育関連の書類担当、給食関連の書類担当、
補助金・財務労務関係の書類担当と、
3手にわかれて検査されることが多いです。
給食に関しての調査も
給食については、
献立、栄養計算表、
アレルギーの子どもに対しての医師からの指示書、
給食担当の職員の検便結果の記録、
伝票の綴りや日々の温度管理の記録表などの書類調査と同時に、
食器の管理やキッチンの衛生管理の仕方などもヒアリングされます。
まな板や包丁の使いわけや、
アレルギーの子どもに対しての食品提供の仕方についても
こまかく確認されます。
食中毒や感染症、食物アレルギーの事故を防ぐために、
いろんな対策がとられているというわけです。
ちなみに保育園では、
提供した給食を過去2週間までさかのぼれるように冷凍庫で保管します。
食中毒などの問題が起きたとき、
なにが原因なのか調べられるようになっているのです。
保育園での給食というと、
献立を立てて調理をするだけと思われがちなのですが、
その裏側には子どもの安全・安心のために
調理以外のたくさんの業務があるんです。
補助金・財務労務関係の調査
最後は補助金・財務労務関係の書類の確認です。
保育園はだいたいのところがほぼ100%、補助金が運営資金。
つまるところ皆さまの税金です。
ですからその使い道に関しては、とくに厳しく調査されます。
職員の賃金台帳や法人の決算資料、
請求書・領収書の綴り、工事や修理、保険などの契約関係の書類、
園の運営記録など膨大な書類をチェックされます。
不適切な支出などがある場合は、
補助金の返還をしなければいけないことも。
皆の税金がちゃんと適切につかわれるように、
厳格なシステムがつくられているというわけです。
園ではたらく人も健全で健康生活を送るため
また、福祉の仕事は「 きつい・安い・休めない 」など、
どうしてもブラックな労務環境のイメージが先行してしまいがち。
ひと昔前までは保育業界においても
「 書類の仕事が多すぎて保育が終わっても家に帰れない 」や
「 つくりものが多くて、家にもってかえらないといけない 」
なんて声も聞かれましたが、
近頃はそういったブラック体質な園は少なくなっていると思います。
保育業界の労務環境のさらなる改善を進めるために、
行政監査でも重点的に調査されるポイントにもなっています。
就業規則や雇用契約書、
出勤簿、出張や超勤命令簿、
社会保険の加入資料などに加え、
園での職員配置体制などの資料もチェックされ、
行政が定めた適切な人数で業務がおこなわれているかの確認もされます。
職員の健康診断の実施や有給休暇の取得なども調査され、
保育園ではたらく人自身が
健全で健康的な生活を送れるよう配慮されています。
当日の最後は講評で〆
こうしてひと通りの調査が終わると、
調査の結果やそれをふまえての改善点の指摘などが
おこなわれる講評があります。
大きな指摘は後ほど行政から書面で送られてきて、
それに対してどのように改善をおこなったか
報告書を提出するというしくみになっています。
保育園を利用する方の安心のため
監査は、朝いちばんから始まって、
すべて終えるまでほんとうに一日仕事。
保育園も大変ですが、監査担当の行政の職員さんも大変です。
ですが、保育はたいせつなたいせつな命をあずかる仕事。
そしてたいせつなお金を用いる仕事。
その命を責任をもってしっかりまもるため、
そしてそのために適切にお金がつかわれるよう、
こんな風にさまざまな面から厳しく管理されているのです。
認可されている保育園が
こうして一定の運営水準を確保していること、
すこしでも知っていただけると、
利用の際の安心にもつながるかと思います。
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