mosoyaro

想いを伝えるのは難しく、毎日あーでもないこーでもないと気持ちが揺れるけど、やっぱり伝え…

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想いを伝えるのは難しく、毎日あーでもないこーでもないと気持ちが揺れるけど、やっぱり伝えたい。色んな境遇の人の人生を妄想中。

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マリアになれない僕  最終回

mosoyaro  2時間くらいして結衣さんは戻ってきた。 結衣さんから話をしてくるまで僕は自分から聞かないことにきめていたので、どんな話をしたのか、その日は聞くことが出来なかった。 次の日もまた次の日も。 一週間位した時結衣さんが話をしてきた。 創さん、どんな話をしたか聞かないんですね。お客様の時と同じで相手が話し出すまできかないんだ。 僕はうなずいて 話をしてもいい気持ちになりましたか? 結衣さんはゆっくりと話始めた。 4年前まで私達は付き合っていて、結婚の

    • リリー  後編

                 mosoyaro 2週間後 パートの仕事が終わり子供達を迎えに車で小学校に向かった。小学校近くの路地は道が狭くカーブになっていので見通しが悪い。いつも気をつけて運転していた。 正門近くに来た時、赤い服をきた小さな女の子が急に飛び出してきた。 ボール遊びをしていたのだろう、咄嗟に急ブレーキをかけてハンドルを横に切ったが道路脇の電柱にぶつかってしまい車が前半分潰れてしまった。 幸い女の子に怪我はなかったが車と電柱の破損がひどい。車の保険には加入してはいるが

      • リリー   前編

                  mosoyaro 私の名前は華百合子、百貨店に勤務する39歳。 地元福岡の老舗百貨店に勤務し出して5年、コロナも落ち着いて以前の活気が戻り売り上げが好調だ。毎日接客に追われている。 売り場を離れる昼休みの休憩所は気兼ねなくホッと息が抜ける場所だった。 いつものように長椅子に腰掛けお弁当を食べていた時 「お疲れ様、これ今日から始まった北海道展で買ってきた。一緒に食べよう」 涼子が声をかけてきた。チョコの箱を見せながら嬉しそうに笑ってる。 「もう行ってきたんだ

        • おだまり  4

          最終話              mosoyaro  ロデムの横を一緒に歩いてきたその人には、ロデムの姿が見えているのだろう。 子供の私から見ても若いお姉さん、切長の大きな目がとても印象的で、栗色の長い髪が風になびいていた。 白いレースのブラウスに膝丈より少し短いチェックの赤いスカートを履いている。 とても可愛い。だけど、、、どこかアンバランスな感じがした。 すぐにその違和感が何なのかわかった。 スカートから出ている左足は金属だ。 義足? 右手には火のついたタバコを持ってい

        • 固定された記事

        マリアになれない僕  最終回

          おだまり  3

                        mosoyaro  春一番がふいて庭先には色とりどりの春の花が咲き始めた。 ヒバリが子育てしているのだろう、巣の近くに人間が近づくと高く飛んでうるさく鳴く。 この時期、春の暖かい日差しと冬の冷たい風が交互にやってくる。 毎年 希望と不安が交差するこの季節は心のバランスがうまくとれず朝起きるのが億劫になる。 春休みが間近に迫り小学校の卒業式の練習が始まった頃、源の母親が見知らぬ男と一緒に園にやってきた。 母親は今まで色々な男と付き合ってきたが、

          おだまり  3

          おだまり  2

                         mosoyaro  私は自分の親を知らない。何故なら生まれてすぐに捨てられたからだ。 27年前、福岡市から車で1時間ほどの山沿いの小さな町に 町が運営する児童養護施設があった。 親のいない子供や色々な事情で親とは一緒に暮らせない子供達がそこで暮らしていた。 クリスマスイブの夜、雪がちらつきとても寒い中、その施設の園長が門の前に何か荷物が置かれている事に気づいた。 中を見てみたら白い布に包まれた赤ちゃんが入っていた。 まだ臍の緒がついて

          おだまり  2

          おだまり  1

                   mosoyaro  「これとこれ、あとコーヒー牛乳も」 「ありがとうございます、千円です」 「大好きなアボカドサンドがこっちに残ってて良かった 社長は元気?よろしく言っといて」   女性が会計を済ませて店の外に出ようとした時、若い男性2人が道路の向こうから走ってくるのが見えた。 息を弾ませ店の中へ。2人とも慌てている。 「まりさん 1人で出てきちゃダメです。何度も言いますが僕らSPの意味がないじゃないですか」 「全く同感です。僕らを困らせないでください。

          おだまり  1

          名もなき者の声 

               オリーブのように           mosoyaro  桜が咲く春   2人だけの結婚式が終わって幸せの頂点にいた頃の私 彼とずっと一緒に幸せに暮らしていくものだと思っていた。 それは幻だと気づいた頃 そこから抜け出すことが出来なくなっていた。 私の名前は冨田美桜 26歳 夫は冨田陸 29歳  気づけなかった彼の本当の姿  結婚生活が始まると彼は今まで隠していた本性を現した。 最初はコップの洗い方が汚いとか洗濯物のたたみ方が違うとかそんな感じから始まっ

          名もなき者の声 

          ジャッカロープを探して 最終話

                     mosoyaro  陶芸教室はまず土の種類、菊煉の説明から始まり、ロクロでの棒立て土殺しへ。 これが出来るようになることが基本で、人にもよるけど普通に習得するには3年位かかる。 体験教室なのでその日は菊煉も棒立てもやってもらい電動ロクロをゆっくり回しながら湯呑みに挑戦した。 初めての体験で思うようにはいかなかったけど楽しかった。 すみれさんもそうだったに違いない。よく笑っていた。 仙さんと川島さんはとても仲が良く 息が合っていた。何も知らない人が見た

          ジャッカロープを探して 最終話

          ジャッカロープを探して 3

                     mosoyaro  次の休日 私はすみれさんとの約束通り市内にある女子刑務所に来ていた。 面会の手続きを終え中に入るとそこはドラマでよく見る光景が目の前にあり、透明のアクリル板の向こうに仙さんは座って待っていた。 化粧っけのない無愛想な顔でこっちを見ている。 おかっぱ頭の白髪が目立つ。 相変わらず目だけギラギラ光っていた  こっちを真っ直ぐに見ている。 私は簡素なパイプ椅子に腰掛け、急いで鞄の中から紙を取り出した。 緊張で手が震えているのがわかる。

          ジャッカロープを探して 3

          ジャッカロープを探して 2

                     mosoyaro  私の名前は松山紗里、27歳福岡市内の会社で働いている。独身。 実を言うと私も現在進行形で最低な男と付き合っていて縁を切れずに悩んでいる。 男の名前は貴一、5歳年上の32歳、2年前から付き合い始めた。 元々は私の高校の時からの親友 さとみ の彼氏だった。 貴一は今、音楽関係の照明の仕事をしているがその前はロックバンドのボーカルだった。 歌が上手く、見た目もカッコいい。 バンドをやめた今でもすごくモテる。 そのせいか女癖が悪く金使いも荒

          ジャッカロープを探して 2

          ジャッカロープを探して 1

          mosoyaro  休日の昼前私はカフェでコーヒーを飲んでいた。 待ち合わせの時間までまだ30分以上ある。 一人でゆっくりコーヒーを飲む時間が好きでわざわざ早く来ている。 場所は大名、お洒落なカフェやショップが立ち並ぶスポットで若い人に人気だ。近くには広くて綺麗な公園もある。 待ち合わせに選んだ店はメインの通りから一本中に入った細い路地沿いにある。 その店はタピオカブームの時には行列ができていた。 ブームが終わった今もパン

          ジャッカロープを探して 1

          黒とグレーと少しだけ白 最終話

                    mosoyaro  椎名さんから話を聞いた次の日から、柊は熱心に勉強し始めた。 そしてある日家族にこう言った。 「俺、司法試験に挑戦しようと思う、いいかな。 高校は認定試験を受けて、大学は法学部を目指す。 受かるかどうかはわからないし、それを職業にするかも今は決めてないけど、法律の勉強がしたくなった。 また心配かけるかもしれないけど、応援してくれないかな」 それを聞いて母は泣き出した。 「柊、良かった。目標ができたね。 とりあえずでも良いよ。 ゆっくり考

          黒とグレーと少しだけ白 最終話

          黒とグレーと少しだけ白 4

          mosoyaro  僕は両親と交代しながら目を覚ますのを待っていた。 脱水症状をおこしていた柊。 怖くて眠れなかったのだろう、あれから眠り続けている。 待っている間色々な事を思い出した。 まだ僕たちが2人とも小さかった頃、柊が 「にいちゃん、誰にも言うなよ、オレ大きくなったらウルトラマンになる。 にいちゃんはウルトラ隊員になって 一緒に地球を守ろう」 と言ってきた。 かと思うと 「やっぱりウルトラマンはやめた」

          黒とグレーと少しだけ白 4

          黒とグレーと少しだけ白   3

          mosoyaro  職員室では話が聞きにくいので校長室を開放してもらう。 女は何も喋らず下を向いたままだ。 焦る気持ちを、抑えろ、と叔父さんに言われ指示に従った。 柳さんの出番だ。 「何であなたを捕まえたかわかりますか?」  「いいえ、わからないのでびっくりしています。こんな事許されて良いんですか」 しらばっくれた。 「石田柊君を知ってますよね? 居なくなって今探しています。2日前からです。 あなたとコンビニで話をした後、柊君の姿が見えなくなったんです。心当たりありますよ

          黒とグレーと少しだけ白   3

          黒とグレーと少しだけ白 2

                     mosoyaro 母が帰ると叔父さんは優しい顔で僕の方を見た。 ゆっくりとタバコに火をつけ煙をはきだす。 「将暉ありがとな。子供の頃からなんだけど、お前の母親は思うようにいかないと癇癪を起こして泣くんだよ。 熱も出すし、、、 だけど今は由美に構っていられない、柊を探す方が先だ。 やらなくてはいけない事がたくさんあるからな。 確認だけど、警察には行ったんだよな。だけど相手にされなかった?」 「そう全然だった。いなくなった当日だったからか、

          黒とグレーと少しだけ白 2