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山本しのぶさん/古民家ゲストハウスやまねこ

これは、これからの働き方・暮らし方を考えていく人のためのインタビュー記事です。 「働き方・暮らし方を変えたい」と感じたとき、旅先で出会う案内版のような地図があったらいいな…と思ったことがきっかけで、この記事を書くことにしました。働き方と暮らし方が多様になった今、これからの一歩を踏みだすために、どんな道しるべがあったらよいのでしょうか。 多様な視点を求めて、新しい働き方と暮らし方を実践する10人の方にお話をうかがってきました。

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私にとって「働くこと」は、身の回りにあるものを使って衣食住を自分の手で作ること、生きるための仕事全部です。

山本しのぶ|やまもと・しのぶ
千葉県⽣まれ/東京で特許庁の検索外注業務を請け負う登録調査機関に勤務後、フリーランスに。現在は⼗⽇町市の古⺠家で、特許調査の受託業務と「古⺠家ゲストハウスやまねこ」の運営や「周りにあるものを活かして⾐⾷住を作る暮らし方」をテーマとしたイベント等を⾏っている。

Her works

しのぶさんは携わる活動全てを「やまねこ⼯房」と名付けている。やまねこ⼯房の活動の目的は「周りにいる⼈たちと自分たちのできることを分かち合い、ゆっくり楽しく⽣活する」こと。自分と家族の⾐⾷住を賄う「⽣業」として暮らしに必要な糸、⾷べ物、住む所をつくる。お⾦を稼ぐための仕事をする。村を運営し活性化する。全てが彼⼥にとって大切な活動である。写真は、稲わらを燃料にしてご飯が炊ける釜。⾝近な資源を活用するための道具の⼀つだ。 

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Her point of view

東京に居た頃、いつか地方で暮らしたいと思っていました。」というしのぶさん。現在暮らす村に住んでいるのは9世帯と少ないため、自分のように、集落に移住する⼈が増えて欲しいと思っている。「移住を考える⼈たちが、自分たちの住む村を知る拠点としてゲストハウスを利用してもらえたら」と彼⼥は⾔う。 

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どんな経緯でその仕事をすることになりましたか

 東京で事務の仕事をしていたのですが、歳を取ったら、契約を切られてしまうだろうと思っていました。そこで⼿に職をつけようと、知的財産の専門職大学院に⼊学。1年間勉強しました。

卒業後、学校から紹介された特許調査会社に就職できたのは良かったのですが、仕事量が多くて…。スキルアップはできましたが、過酷な職場でした。 「東京での⽣活は自分に合わないな」と感じて、地方への移住を考えていました。東京にいるうちに「お⾦がかからないような⽣活ができる下地」を作り始めました。

栃⽊県那須町で非電化⼯房※1を主催する藤村靖之⽒の「⽉3万円ビジネス※2」という本にも影響を受けています。「⽉3万円ビジネス」を実践しながら暮らせる場所を探し、現在住んでいる⼗⽇町市船坂集落を⾒つけました。 ゲストハウスを始めたのは、⾝近なものを活かして何かできないか、という発想です。ゲストハウス以外にも⾝の回りのものを活かしてできることを増やしていきたいと思っています。

大切にしたいことは何ですか

会社に固執しないで、好きなことをしながら暮らしていけたらいいなと思っています。今の私にとって「働くこと」は、⾝の回りにあるものを使って⾐⾷住を自分の⼿で作ること、⽣きるための仕事全部です。 東京に居た頃は、会社員としてストレスが多い仕事をしていました。きつい時期を経て「これまで頑張ったから、好きなことをして暮らしても良いんじゃないかな」と、ゆるい感じで今の形にシフトしました。 

あなたの原点を教えてください

私の原点は、⼩さいときの遊びで、⾍を捕まえたり、土をいじったりすることです。だから自然に近いところで⽣活をしたい思いが強くて。そういう意味で今の⽣活には満足しています。もともと村に住んでいた⼈達には「東京の⼈たちがなんで ここに?」と思われていたと思うのですが、私にはとても合う環境だと思っています。 

時間の使い方について意識していることを教えてください

 仕事・プライベートという形ではあまり意識していないです。強いて挙げるなら特許調査の時間を9時から17時で取るようにしていることです。こぎん刺し※3等を作って売ることもあるけれど、好きでやっていることで趣味の延⻑上だから、仕事という認識は無いですね。自分が欲しいと思うものを作って、たくさん作ったら販売する、という感じです。 

お⾦の使い方について意識していることを教えてください

 ⾝近な関係で消費することが増えました。作り⼿のこだわりが感じられるもの、地域の経済を担うものにお⾦を払うようにしています。最近お⾦使って良かったのはソーラーフードドライヤー※4のワークショップで講師の方をお呼びしたことです。 

働き方・暮らし方を変えようとしている⼈に伝えたいことはどんなことですか

やりたいことはその⼈によって違うから、悩む時間があるなら、失敗しても良いからやってみたらと思います。私たち夫婦が出会った「さんビズ※5」がそういう考え方でした。すぐにやってみることが不安であれば、まずは興味のあることを調べたり、「さんビズ」みたいな講座に参加してみると良いと思います。 

(取材⽇:2018年11⽉24⽇)

※1非電化製品の発明を通して、電気でなくても 快適・便利はホドホド実現できることを追及する⼯房。
 ※2 「⽉3万円稼げる仕事の複業」「地方で持続的に経済が循環する仕事づくり」「〈奪い合い〉ではなく〈分かち合い〉」など、藤村⽒の考え方とその実例を紹介する書籍。
 ※3⻘森県津軽に伝わる刺し⼦の技法。
 ※4非電化⼯房住み込み弟⼦修了⽣の阿部由佳⽒による、太陽光を利用した、⾷品乾燥器のこと。各地でワークショップが開催されている。
 ※5「⽉3万円ビジネス」の考えを新潟の中山間地域向けにアレンジした講座。しのぶさんはその⼀期⽣。 

▼さらに詳しく知りたい方へ

古⺠家ゲストハウスやまねこ
(http://guesthouse-yamaneko.com/) 

読んだ方へのお願い

あなたがこの記事を読み、働き方や暮らし方について考えたことは、わたしたちがこれからを考えるための大切な道しるべになります。感想をお送りいただけることを、心からお待ちしています。 感想の送付先は、moshimo.theater.info@gmail.comまでお願いいたします。 

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