牛肉の特性 煮込み
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煮込むについて考える
肉を煮込む料理と聞くと、カレーやビーフシチューを思いつくだろう。
そして、直感的に理解していることは煮込むと肉は柔らかくなる・・・・
まずは、肉を煮込むとなぜ柔らかくなるか考えていく。
よく、肉はじっくりコトコト煮込むと柔らかくなるイメージが、実は全ての肉に当てはまる訳ではない。
上図のように、肉は筋線維と呼ばれる細胞がコラーゲンの膜で束ねられた構造をしている。
この筋線維は、長い繊維状の筋原線維タンパク質と水溶性で球状の筋形質タンパク質で構成され、筋原線維タンパク質の間に筋形質タンパク質が詰まった構造をしている。
①45~50℃付近で、筋原線維タンパク質が熱で凝固する。
②56~62℃付近で、筋形質タンパク質が熱で凝固する。
②65℃付近で、コラーゲンはいったん縮んで最初の長さの約1/3になる。
③75℃付近で、コラーゲンが分解されゼラチン化する。
つまり、筋肉を構成する三種類のタンパク質は、熱で変性する温度がそれぞれ違う。
①加熱を開始して肉の温度が高くなってくると、最初に筋原線維タンパク質が熱で固まる。このとき、筋原線維タンパク質の間を満たしている水溶性の筋形質タンパク質は固まっていないため柔らかく感じる。
②筋原線維タンパク質どうしが熱凝固して固くなる。さらに、コラーゲンが急激に縮むことで一段と固くなる。
③75℃を超えると、コラーゲンが分解、ゼラチン化が急速に進んでいき肉はやわらかくなる。
つまり、いくら煮込んでもコラーゲンの少ない肉は柔らかくならない。
「なぜ、強火ではなく弱火でじっくりコトコト煮込むのか?」
この理由は
1.鍋が焦げるから
2.スープが濁るから(対流によりアクがスープに混ざる)
3.高温の液体に肉を入れると急激に縮み、肉が固くなる(柔らかくならない)から
ちなみに、一般的な圧力鍋は120℃まで温度が上がる。
コラーゲンの熱分解も表のように温度が上がるほど進むため、圧力鍋で肉を調理すると柔らかくなるのである。
他の肉を柔らかくする方法
タンパク質分解酵素
煮込む以外にも肉を柔らかく調理する方法がある。
一つがタンパク質分解酵素である。
酢豚などにパイナップルが入っている場合がある。
これは、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)により、肉を柔らかくするためである。
プロテアーゼには、微生物由来のものと植物性由来のものがある。
しかし、家庭や個人料理店で考えると、酵素類の入手や取り扱いの点から植物性由来のものを使う事になる。
一般的には、パパイヤ、イチジク、パイナップル、キウイフルーツ、しょうがのしぼり汁などがあげられる。
これらを振りかけてから調理すれば効果があるが、肉の塊では搾り汁のかかったところだけが部分的に加水分解が起こり、表面のみ柔らかくなってしまう。
そこで、フォークや串なので刺して中心部まで搾り汁を浸透させることが必要となる。
※上記の表より、加熱処理された缶詰のパイナップルには肉を柔らかくする効果がないことが分かる。
マリネ処理
肉を柔らかくする方法の一つにマリネ処理があげられる。
マリネ処理とは、酢、ブドウ酒、油、香辛料、ハーブなどを調合したものに肉などを漬け込む調理方法である。
マリネ処理をすると、肉の筋線維、結合組織が膨潤(ぼうじゅん)するため、調理肉の柔らかさが増す。
この理由は、pHに関係する。マリネ主要液のpHをみると
ワインビネガー pH2.5
ワイン pH2.3
レモン汁 pH2.8
醤油 pH4.7
酢 pH3.0
※肉のpH5.5
となっており、かなり酸性を示す。肉が酸性状態になった時、肉の軟化に関係ある3つの変化が起こる。
①保水性の向上
②筋肉に内在する酸性プロテアーゼの活性化(上記の表より)
③コラーゲンが膨潤する
①については、pH5付近で最低値を示し、それより酸性側でもアルカリ性側でも増大する。マリネ処理によって肉のpHは4前後に低下することで肉が保水性が上がり肉が柔らかくなる。(アルカリ性でも柔らかくなるが、人間は酸性を好む)
②では、低pH(pH3~4)で活性化する筋肉内酸性プロテアーゼにより肉の軟化が起こる。
③では、酸性になると肉の硬い筋に含まれるコラーゲンが膨潤し、ゼラチン化が速まって柔らかくなる。
つまり、肉は酸性に傾けると柔らかくなる。
ちなみに、レシピを見てみると、肉をコーラに漬ける調理方法などもある。
コーラのpHは2.4となっているため、肉を柔らかくすることができる。
一方でみりんには肉を軟化させる作用が無くて、日本酒には軟化させる作用がある
これは、みりんのpHが他と比べて低くないからと考えられる
みりんのpH 5.0~6.0
日本酒のpH 4.0~4.5
ビールのpH 4.0~5.0
ワインのpH 2.3~3.3
ヨーグルトのpH 4
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