みりんの特性①~⑤
現状の勉強の進み具合
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【料理のさしすせそ】 ←済
【調味料】
●砂糖 ←済
●塩 ←済
●酢 ←済
●醤油 ←済
●味噌 ←済
●みりん ←今回はここ
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今回は「みりん」についての話になる。
まず、「みりん」とは何かというと、
みりんは米を熟成させてつくる調味料となっている。
みりんの特徴として
●アミノ酸を中心とするエキス分や有機酸、香り成分が含まれている
●甘い(糖分が約50%)
●アルコールが含まれる(約14度)
また、みりんを使った料理が、色づく理由は、以前説明したメイラード反応によるものである。
【メイラード反応】
タンパク質(アミノ酸)+ 糖 → 加熱 → 焼き色 + こうばしい香り
スーパーに買いに行くと、
「みりん(本みりん)」「みりん風調味料」「発酵調味液」など、色々な商品が並んでいる。
直感的に、「普通のみりん」が良いものと思ってしまう。
また、「酒と砂糖を混ぜたものは、みりんの代用にならないか?」という話もあるので、整理してみていこう。
【みりん】
アルコール分 約14%
塩分 0%
【みりん風調味料】
アルコール分 1%未満
塩分 0~0.2%未満
【発酵調味料(みりんタイプ)】
アルコール分 約10%
塩分 約1.5%
【発酵調味料(料理酒)】
アルコール分 約14%
塩分 約2%
まず、発酵調味料に塩分が含まれている理由は、酒税がかからなくなるためである。
つまり、安く買えるのである。
次に、みりん風調味料のアルコール分が1%未満なのは、みりんを煮切らなくても(加熱しなくても)酒臭くならないというメリットがある。
そもそも煮切る必要があるのか?
ここで少し、煮切るについて話をする。
「煮切る(にきる)」とは、みりんや酒などを加熱してアルコールを飛ばすテクニックのことである。
純粋なアルコールは78.3℃で沸騰し、純粋な水は100℃で沸騰する。
しかし、アルコールと水を混ぜた混合液を沸騰させた場合、78℃でアルコールが全て揮発し、その後100℃で残った水が沸騰するわけではない。
実際には、水とアルコールはお互いの沸点に影響を与えるため、水とアルコールの混合液の沸点は、78℃と100℃の間のどこかになる。(※水とアルコールの比率による。)
そして、水蒸気とアルコール蒸気の混合物が、一緒に蒸発する。
鍋に残るアルコールの正確な量は、あまりにも多くの要因があるため答えがあるわけではない。
実験で牛肉の赤ワイン煮、鶏肉の赤ワイン煮などを作り調理の前後でアルコール量を計測した場合、出来上がった料理には、食材の種類や調理方法によって最初のアルコール分の4~49%が残っている結果となった。(赤ワイン煮を三時間半煮込んでも、全体の約5%のアルコールが料理に残る)
このように、料理に混ぜたアルコールを100%飛ばすのは困難であるため、「煮切り」というテクニックが存在する。
つまり、大量にみりんや酒を調理過程で加えた場合、先に煮切っておかないとアルコールが料理に残って酒臭くなってしまうのである。
一般的な話で言えば、
【みりん】は、風味がよい
【みりん風調味料】は、煮切らなくてよいので便利
【発酵調味料】は、値段が安い
となっている
みりんの特性について
《みりん》や《酒》を使う事の調理上の効果は
①臭みを消す
②風味をつける
③照りをつける
④焦げ色をつける
⑤煮崩れを防ぐ
があげられる。
①臭みを消す
酒類に含まれるアルコール類やカルボニル化合物、有機酸によって生臭いにおい成分のアミノ酸と反応して一部が不揮発性になると同時に、酒類のにおい成分によってマスキングされるため。
もう少し分かりやすく説明すると、みりんのpHは約4.9の酸性である。
以前、魚臭くなるののを防ぐ方法として、酢(酸性)を加えて中和するという話を説明したが、それと同じ原理である。
また、酒類のにおいによって、上からかき消すことができる。
加えて、アルコールの沸点は78℃であるため、加熱によってアルコールが揮発するときに魚の嫌な臭いも同時に揮発させる。
つまり、《みりん》を煮切ってから使ったり、《みりん風調味料》のようなアルコールを含まない場合は、臭みを消す点では少し効果が弱くなってしまう。
②風味をつける
風味については、一般的に《みりん》の方が上品でまろやかなコクとうま味があると言われている。
③照りをつける
これは、みりんには糖分が多く含まれているため照りがつく。
④焦げ色をつける
メイラード反応によるものであり、同時に良い香りも生じる。さらに高い温度での加熱では、糖質のカラメル化が起こり、香ばしい香りと色を生じる。《みりん》を煮切るとき、火をつけてアルコール分を燃やし軽く焦がすことで香りが高まる。
ちなみに、料理やアルコールに火をつけることをフランベと呼ぶ。
フランベ(フランス語で“燃やす”という意味)とは、度数の高い蒸留酒やワインをふりかけ、温まった蒸気に火をつけてアルコールを燃やしてしまう方法である。
1.燃えているのは液体ではなく、蒸発するアルコールの蒸気である。この時の炎の温度は260℃に達することがあるが、実際には熱のほとんどは食材の表面より上へ行ってしまう。また、ブラインドテスト(官能評価)では、炎が味を向上させることはないとされている。
2.フランベは、アルコールを全て飛ばすイメージがあるが、嘘である。
これは、フライパンの上の空気中に濃縮されたアルコール分が3%以下に落ちると、火は消えてしまうため。この時、加えたアルコールの70%以上がまだフライパンには残っている。
3.多くのシェフはフランベを調理というより、ショーのような感覚で行っており、それによって食欲をそそり、人々を楽しませている。
フランベをすると、香ばしい香りがするイメージがありますが、実際には香ばしい香りがしているのは食材の方でフランベ自体にはあまり意味がない。アルコールを飛ばすという点でも、すでに蒸発しているアルコールに火をつけているのであって、料理の中に入り込んでいるアルコールが燃えているわけではないということになる。
⑤煮崩れを防ぐ
煮崩れを防ぐは、アルコールと糖の働きにより食材の細胞膜の損傷が防げるため。
砂糖+酒で代用できるか?
みりんの代わりに砂糖で甘味を付ける場合、重量でみりんの1/3にする。
みりんの糖分は約45%だが、そのうち70~90%はブドウ糖であり、ブドウ糖の甘味は砂糖の半分程度なので、結果として《みりん》の甘味は砂糖の1/3程度になる。
つまり、みりん100ccを砂糖と酒で代用すると、砂糖33gと酒67gになる。
ただし、あくまでも甘味を基準にしているので、当然同じものにはならない。
調味料編完
これで、日本で一般的に使う調味料
砂糖
塩
酢
醤油
味噌
みりん(酒)
の解説は、ひとまず終了となる
色々なことを解説したから、覚えるのが大変かもしれないが難しく考える必要はない。
全ての調味料は、意味もなく加えることはない。
そのため使うときに、「何故この調味料を加えるのか?」っと少し考えてみるとよい。
次からは、食材についての話となる、一緒に頑張っていこう~(^^)/
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