切手という小宇宙 その1
かつて私は、かなり熱烈な切手コレクターだった。
切手に目覚めたのは、その頃ちょうど到来した新たな切手ブームがきっかけだった。
それまでは切手収集というと、おじさんの趣味という印象が強かったが、その頃から人気が出始めたのはデザイン性の高い世界中の可愛い切手であり、とくにサブカル界隈で注目されたのだ。
そのブームを牽引していたのがプチグラパブリッシング代表の伊藤高さんで、彼が出版した切手本「It's a Stamp World~切手に恋して~」(現在は絶版)は、可愛い切手コレクター達のバイブルとなった。
後を追うように何冊もの切手本が続々と出版され、ますます若い収集家はコレクター魂を刺激され、ネットショップやヤフオクなどでも切手売買は加熱し、人気のある切手は今考えても相当な高値で競り落とされていた。
私も切手収集のブログを始め、そこで切手商の方や切手も販売する雑貨屋を営む方などともお知り合いになり、各国の欲しい切手を取り寄せてもらったりもしていた。
それだけでは飽き足らずに、日本郵趣協会が主催し年1回開催されるスタンプショウ、JAPEXにも欠かさず行き、5時間耐久レース並みに飲まず食わず立ちっぱなしでフラフラになりながら欲しい切手を選んだり、新宿駅近くの切手センターでおじさん達に混ざってお目当の切手探し、目白の切手博物館はその頃の職場近くだったので昼休みに猛ダッシュして足繁く通った。
他にも古本市、ガラクタ市、フリーマーケットなどなど、いつどこでグッとくる切手と遭遇するかわからないので、切手コレクターの三種の神器である、ピンセット、ルーペ(拡大鏡)、グラシン紙は常に持参していた。
あの頃は毎日切手のことばかり考えていた。そう、まさに切手に恋してた(笑)
熱に浮かされたように、とにかく集めて、集めて、集めまくっていた。
あんなエネルギー自分のどこにあったのか…何冊にも渡る切手帖の山を前に、今は過ぎ去りし日々に思い馳せるのみ…。
トピカル沼
切手には色々な集め方がある。国別だったり、年代別だったり。
私が一番ハマったのがトピカルというもので、簡単に言えばテーマ別に収集することだ。トピカル沼は、とってもとーっても深くて、私はズブズブと溺れていった。
特に力を入れて集めたのは次のようなテーマだった。
童話・子ども・児童福祉
可愛い切手がほしい!という気持ちが昂まった時、真っ先に飛びついたテーマがこれだった。
懐かしい色合いのカラフルでレトロな可愛らしさのある絵柄が多い。
ピオニールというのは共産圏のボーイ&ガールスカウトのことを指す。
レース
世界中に美しいレース切手がある。
どれも眺めているだけで、うっとりとする。乙女切手と言えばレースなのだ。
ブルガリアン デザイン
ブルガリアのデザイン切手も絶品。
とくにブルガリアを代表するグラフィックデザイナー Stefan Kanchev(ステファン・カンチェフ)がデザインしたものは、アートと言っていいレベル。
民族衣装
世界の民族衣装にもともと興味があったので、切手でもハマッた。
とくに中欧・東欧の衣装に惹かれた。
キノコ
キノコは食べるのも、見るのも、採るのも、集めるのも大好きである。
花
猫
猫飼いの猫好きなら絶対に集めてしまうニャンコ切手。
小鳥
手紙をくわえた鳩は、世界各国で発行されているモチーフ。
こうして見てゆくと、ブルガリアは美しい切手大国だ。
他にも今回はあまり載せられなかったけど、チェコスロバキアの銅版画切手も芸術的なレベルの高さなのだ。
DDR(旧東ドイツ)にも切手を通して興味を持つようになった。今はもうない国の切手というのが、尚更ロマンを感じてしまう。
切手という極小の世界に描かれている、緻密な模様と装飾、色、様々な意匠の数々は、まるでそこに小さな宇宙を封じ込めたような、唯一無二の美しさがある。
それは時代を超えて、人々の心を惹きつけて離さないものなのだ。
ここまで見ていただいた皆様、お付き合いありがとうございます。
かなりの量を一挙に載せたので、もうお腹いっぱいですよね?
今回はトピカル沼だけで満杯になってしまい、まだまだ他の沼も沢山あるんですが、それはまた日を改めまして、ご紹介したいと思います(笑)
※ 当記事に掲載している切手画像は、私個人のコレクションからのスキャン、写真撮影によるものです。無断転載・印刷は固くお断りします。
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