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民話と伝説と

「こころの時代」

口伝されてきた民話を聞き集めて記録する探訪を続けてきた民話採集家の小野和子さん。語りにより救われたり、その土地を歩く実感が変わったり。 民話には語り手の人生、先祖の切実な現実や知恵が蓄積されている。小野さんの民話採集の道のりそのものが民話のようだった。

物語に人間や自然の残酷さ、優しさが潜んでいて、実生活に響く。
自然のすぐ近くで、山や森、海や川と共に生きてきた人々によって語り継がれてきた物語。それは教訓だったり、悲劇を乗り越えるすべであったりする。

鬼打ち木、オオカミのまつ毛、印象深い民話たち。

都市において民話は生まれるのだろうか。
それはまさに民話というよりは都市伝説などの形として生まれては語り継がれているように思う。マンションの、団地の、坂道の、タクシーの、電車や駅の、そうした都市の民話として都市伝説が生まれては形を変え、日本中に広がっていく。口裂け女など、コートやマスクといった現代的なアイテムにアップデートされて心に残っていく。

人間は「物語」にめっぽう弱い。物語の形式になると耳を傾けてしまうし、耳触りが良いのでしっくりくる。でも世界はそんなにスッキリ起承転結をもたらしてはくれないから、時になんのオチもない不条理で不気味なエピソードも発生する。そうしたものの方が逆にリアリティーがあってしっくりとくるものの、それでは語り継ぎにくいのでパーツが足され、要素が削られ、「物語」として出荷されていく。面白い。

例えば原子力発電所の事故なんて、1000年くらいしたら、本当によく分からない伝説として語られそうだ。殺生石のように「あの地には毒を吐く呪いの岩があるから近づいてはならない」とか。

寒いので頭がぼんやりしてそんなことを考えたりしていた。

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