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ウィーンでガチ目に音楽の都を堪能しドライヤーと戦う【一人旅海外編①-2】

【二日目 ウィーン市内ホテル 朝食】

翌朝はすっきり目覚めた。少し飛行機の疲労が残っているものの許容範囲内だ。
ウィーンにおける一般的なホテルの朝食のレベルがどんなものか、確認しておこうかな。そう思って食べた朝食は、意外にも(失礼)美味しかった。

特にチーズとソーセージがマジで美味い。チーズとソーセージに本気出しすぎだろ。日本のホテル朝食とは真逆だ。日本のホテルはおかずとか卵料理がおいしいけど、チーズはプロセスチーズ、ソーセージも市販のレベルを超えない、という所が多いのに対し、このホテルはおかずがそこそこなるほどね、という味で、パンはドイツパンらしく黒くてめちゃくちゃ硬いけど、チーズとソーセージが本気の味。面白いです。

ホテルの朝食会場

朝食会場から町並みの日常が見えるのもいい。
バイキングのおかずの中にぽつんと置かれている謎の瓶に何が入っているか分からず、忙しそうな給仕のお姉さんに「What's this?」と尋ねて返って来た「Milk.」という返答を、ミルクだと認識するのに5秒かかった。まだ頭が英語に慣れていない。

その後部屋に戻り、洗面所で支度をしようとしたところ、昨夜は起動したはずのドライヤーが起動しない。あーはいはい海外ホテルクオリティですね。早速おでましですね。フロントを呼ぶとすぐ部屋に来て一緒にドライヤーを確認してくれる。すぐ来るのだけはちゃんとしてるんだよなあ。

いや起動するんかい。
なんで教師が見てるときだけ良い子になる生徒みたいなんだよ。

「でも、さっきは付かなかった!」と精一杯状況を伝えるが、「メインブレーカーのスイッチを入れないと付きませんよ」とか「また付かなくなったら呼んで」としか言われない。仕方ねえ……とりあえず後で考えるか。

今回の私の旅には、タイムスケジュールがない。一日一箇所程度、行きたい観光スポットを見繕ってはいるけれど、あとは完全に私の自由だ。朝は寝ていてもいいし、電車に乗って予定にない遠出をしてもいい。なんたってウィーンに“住んでいる”のだから。

【ホーフブルク(王宮)】

事前にシシィチケット(シェーンブルン宮殿などの主要スポットとセットになったチケット。シェーンブルン宮殿の入場に日時指定がなくいつでも行けるので便利。)を買っていて、それでホーフブルクにも入れるようなので、手始めにホテルの近所の散歩がてら、メイン観光予定スポットの一つ目、ホーフブルクまで歩く。

シュテファン寺院

昨夜も今朝もガンガン鐘を鳴らしていた寺院、こんなにでっかかったんだ! これがホテルの隣にあったことに今気付いてビビる。私、ウィーンにいるんだなあ……。(まだ全然実感がない)

ホテルから徒歩30秒の地下鉄入り口。便利すぎる。
かわいすぎる。

朝のお散歩気持ちいい! ショーウィンドウがかわいい! どこを歩いても絵になる!

おお〜これがウィーンのハプスブルク家の宮殿ですか。温室と宮殿の間を抜け、博物館になっている建物の方に歩いていってみる。

間違って入ったところ

途中何箇所か博物館っぽい入口があって、どれが本体の王宮博物館なのかよくわからない。ここだ!と思って入り、「シシィチケット使えますか?」と聞くものの、「ここでは使えないわよ」と言われて引き返す。難しい~。目当ての博物館に入るのすら難しい。

あ、なんかここっぽくない?(正解)

中はシシィ(皇后エリザベート)のドレスなど最後のハプスブルク家に関するものがいっぱい。レースや刺繍が狂気の沙汰。でも建築的にはあっさりとしており、感動まではいかず、全体としての満足度はまあまあといったところ。あと通路がめちゃくちゃ狭くて不便。

ササッと見終えたところで、王宮周辺を散歩する。観光用の馬車がカランカランと走っている光景はとても素敵だ。私、ウィーンにいるんだなぁ。(まだ実感がない)

あ、これホーフブルク宮殿の表側だ!私、裏側から来ちゃったんだね!

ああ〜〜〜いい天気〜〜〜ウィーンの休日〜〜〜

ここの広場のベンチで30分くらいだらだらした。次、どこ行こうかな……そうだな……なんとなく、やっぱりこの街にいると、音楽に触れたくなってきた気がする……音楽、ウィーンでやりたいこと……そりゃやっぱ、黄金のホール行っとかなきゃでしょ……

【黄金のホール】

ということで急遽、黄金のホールへ向かうことに決定。Googleマップで探したところ、ホーフブルクから全然徒歩で行ける。ウィーンの観光スポットってめちゃくちゃ徒歩圏内に固まってるんですよね。

途中、オペラ座の横を通りかかった。

あっ、これがウィーンのオペラ座かぁ〜! オペラ座は明日の夜のカルメンのチケットを取ってあるので、今日は素通りだ。
オペラ座の周りはチケット売りのお兄ちゃんがめちゃくちゃいっぱいいて、通過するだけで3回くらい声をかけられた。

チケット売り兄ちゃん「ハロー! オペラのチケット買わない?」
私「ステージはここ(オペラ座)?」
兄ちゃん「そうだよ、今日はローエングリンだよ」
私「私、ここに戻って来ます、明日! カルメン観る!」
兄ちゃん「あぁ、それはいいね。楽しんでね!」

オペラだけは絶対にそこそこのいい席で見たかったので、事前に買ってありました。明日のチケット持ってる!って言ったら解放してくれた。後日、他の楽隊のチケット売りにも遭遇するが、オペラ座のチケット売りがマジで一番アグレッシブだし手慣れていたと思う。流石。

そのまま暫く歩いて、

これが黄金のホールちゃん(がある建物)ですか。
意外と小さいね君!

あのウィーンフィルハーモニーが毎年1月1日にシュトラウスまみれのニューイヤーコンサートをやってNHKがそれを中継してアンコールは必ずラデツキー行進曲が演奏され観客みんなが手拍子をして超盛り上がるのが恒例となっているクラシックオタク憧れのコンサートが行われる会場がこれですか。私シュトラウス大好き。

普段はウィーン楽友協会という団体のアジト(アジトではない)らしい。知らなかったです。ウィーンフィルのもんだと思ってました(失礼)。すみませんでした。

確か見学ツアーとかやってた気がする。とりあえず入ってみるか。と思って入ると、ちょうど20分後くらいに英語ツアーガイドが始まるらしくベストタイミングでツアーチケットが買えた。やったーーー!!!!!

ガイドのお姉さんは、わかりやすいニュートラルな英語を話してくれる方で、愉快で話も上手くて、でも悲しいかな英語は3割くらいしか聞き取れなかったけど、それでも新しく知ることも多くてとてもよかった。
楽友協会の建物の、裏動線の内装は意外とシンプル。もっとギンギラギンにさりげない的な装飾なのかと……(偏見) 他にも練習用中ホールとか、小ホールも見せてもらった。子供から大人まで、地元の団体がカジュアルな演奏会をすることもよくあるらしい。イメージ変わるなあ。なんか荘厳で格式張ったイメージがあったけど、こんなに広く親しまれてる建物なんだ。

黄金のホールのステージ
天井
ホール後方

黄金のホールだけは撮影OKでした。
天井近くにいっぱい並んでる彫刻は全部音楽家らしい。
ステージのすぐ傍まで近寄ることもできる。

ステージ、狭すぎんか……?

なんかウィーンフィルの中継を見たときフルオケの椅子の並びがやけにギッチギチだなあと思ってたけど、これはギッチギチにもなるわ。めっちゃ狭い。実際に目にすると、本当にここにフルオケが並ぶのでしょうか……?と正気を疑うような狭さ。ホール自体も、規模だけで言えばなんというか中学生合唱コンクールの県大会をやるくらいの大きさ。更にステージの縁には背の低い柵が立っており、おそらくギリギリまで椅子を並べるので人がステージから落ちないようにするためなんだろう、ということが想像できる。ステージの端に柵があるホール初めて見た。……あっ、この柵はあれか! ニューイヤーコンサートのときにお花でめいっぱい飾り付けられてるかわいいあれが、この柵というわけだな!
記憶の中のステージと今目の前にあるステージが頭の中で繋がりました。感動です。

綺麗だなあ。
今朝の時点で自分がこんなとこにいるなんて思いもしなかったなあ。
来てよかったなあ。
残響時間が長いなあ。(手をパァン!と叩きながら)

同じガイドツアー客の、とても紳士的なおじちゃんにお願いして写真も撮ってもらえました。満足!

ガイドが終わり、楽友協会の建物を出て100mほど歩いたところで、ふと欲が湧く。
黄金のホールの音、聞きたくない?
楽器がどんなふうに鳴るのか、聞いときたくない?
聞きてえーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
急いで楽友協会に戻り、入口にあるコンサートスケジュールを見る。もしチケット買うなら、今夜か3日後がいいな。ええーーーでもタイトルが「モーツァルトコンサート」なんだよなぁ〜〜バリバリ観光客向けのカジュアルプログラムっぽいんだよなあ〜〜私はウィーンで聞くなら絶対シュトラウスが聞きたいんだよなあ〜〜いやでも黄金のホールで行われるプログラムこれしかないし、買っとくか……
と思ってチケットカウンターに戻ると、「ここからこう行ってこう行ったとこに専用のチケット売り場があるからそこで買え」と言われる。はい。わかりました。

200mほど歩いて、宮廷音楽家のコスプレをした見るからに陽気な兄ちゃんがいるアイスクリーム売り屋台みたいなとこに辿り着いた。わかり易すぎる。

私「ハロー!」
兄ちゃん「モーツァルトコンサートのチケットを売ってるよ。いつのチケットが欲しい?」
私「今夜!」
兄ちゃん「そしたら、(座席表を開く)グレードはいくつがいい?」
私「うーん…………Cで」
兄ちゃん「このへんはどうかな?(座席表の後方を指差す)」
私(かなり後ろだな……もう少し前のほうがいい……)
兄ちゃん「これね、ここから二階席なの」
私(あ、そしたら二階席の最前から3列目じゃん!)
兄ちゃん「貴女の身長なら、一階のフラット席ではなく絶対二階の傾斜席がおすすめ! 一階には傾斜がないから、ステージが見づらくなるよ。あ、僕くらい高ければ一階でもいけるけどね☆」
私(確かに、音を聞くならむしろ二階のほうがいい……というか二階席の張り出した真下の一階席を選ぶところだった、危ない)「二階のそこで!」
兄ちゃん「オッケー」

クレジットカードで支払って、その場でチケットを印刷してくれます。

兄ちゃん「アリガトウ! ホールは、ここの二つ先の角を曲がって。楽しんでね。(全て日本語)」
私「!?!? うわ〜〜ありがとう!(日本語) ダンケ! バーイ!」

買えた。やったー!
いや日本語喋れるんかい。
慣れてる人から見れば見ただけで日本人だってわかるんですね。

気付くと時刻はすっかり14時で、お昼ご飯を食べなければならない。オペラ座近くのカフェやレストランを覗いてみるけれど、混んでたり高そう(円安はクソ)だったりして色々歩いた末、お手頃なタコスバーがあったのでそこに入る。

めっちゃ気品のあるマダムがやってる店でした。ブリトーめっちゃおいしい。ウィーンでここまで高クオリティなブリトーが食べれるのか。もしかして、ウィーンの飯って、美味い……?

そのあとはお高いチョコレート屋さんでチョコを袋詰めしてもらって幸せになったりして、

早めにホテルに帰りました。さっき買ったチケットのコンサートは20時15分から。

【ドライヤー戦記】

と、一息ついてドライヤーのことを思い出し、動作を確認する。付かない。ほら付かねえじゃねえか!
フロントに電話して来てもらうが、またしてもホテルマンの前でだけドライヤーは大人しく起動。ファーwww
「付くときと付かないときがある! 壊れてる!」「予備のドライヤーはないの!?」と訴えるが、「予備はない」「また付かなくなったら呼んで」の一点張り。いや、髪の毛濡れてる状態で付かなくなったらホテルマン呼んでるどころじゃないから。待ってる間に風邪引いて死ゾ。ここにあと4泊もするのにそんなリスクを侵すわけにはいかない。
もうやだ。絶対迷惑客と思われたじゃん。

どうにもならないのでドライヤーを買いに行くことに。調べると、地下鉄で二駅のミッテ‐ラントシュトラッセ駅に家電量販店があるらしい。閉店は17:00。現在時刻16:10。急げーーーーーーー!!!!!!!
初めて地下鉄乗るんだけど切符ってどうやって買うの!?!? うわー画面ドイツ語やーーー!!! あ、英語表示の切り替えボタンある!!! ポチッとな! これ一回一回乗車券買うのめんどくさすぎるからコスパ未調査だけどもう72時間乗車券買ったろ! 買えたぜ! え、入口に電動の改札がないんだけど……みんな素通りしていくんだけど……(田舎の駅みたいな勝手に出入りできる感じのやつがあるだけ) えぇ……なにこれ……。(後で調べたところによると仕様らしいです。改札はなく、今その電車に乗ってる乗客が本当に切符を持ってるかどうか誰もわからないのが通常運転とのこと。ただし抜き打ち巡回があり、切符を持ってないことが発覚したら罰金らしい。) とりあえず打刻機で72時間券の使用開始時間を打刻してホームへ。

ホームには、今いる駅の名前は表示してあるのだが、日本のようにどっち側の隣が何駅かという表示がなく、どっち方向に乗ればいいか判別するのに一苦労。怒涛の初めてを繰り返して、それでも無事二駅隣に辿り着きました。時刻は16:30。

めっちゃショッピングモールだしめっちゃ家電量販店。
なんで私はウィーンに来てまで家電量販店にいるんだ。暮らすように旅するってそういうことじゃないぞ。

買えたー! 3000円くらいのちっちゃなドライヤーです。ヨーロッパの電圧とコンセントに直接対応した小さなドライヤーが手に入ったので、もしまたヨーロッパに来たときのためと考えると、むしろ買ってよかったかも。

遊戯王とポケカも売ってる家電量販店

帰り道で買ったTOFUサラダライスボウルなるものをホテルで食べて、軽めの晩御飯にする。豆腐は豆腐というより大豆を潰して和風味で固めたソテーだったけど、米はちゃんとジャポニカ米だし、サウザンアイランドドレッシング的な味をベースにほのかに醤油が香るソースもおいしい。もしかして、ウィーンの飯って、美味い……?

ベッドに転がってひとやすみしたら、黄金のホールを目指して再びのんびりと夕方の街へ出掛ける。この季節だと夜20時くらいまでずっと明るいので、夕方も余裕で安全に歩けるのだ。

【黄金のホール(二回目)】

開演前の写真

黄金のホールの二階からの景色。昼間も来たなあ!

構成は30人くらいの小さなオケ。フルオケほどの迫力はないが、それでも黄金のホールは十分に鳴る。流石に音のまとまりがよく聞こえる。中でも個人的にフルートの音がとても好みで、(奏者が上手かったのかもしれないが)キンキンした音がなく、ホールの壁全体に貼り付くようなソフトタッチふんわり感であった。反対に弦楽器の音は粒立っており、ザワザワした弦特有の音がはっきりと聴こえる感じで、もう少しまろやかに聞こえるほうが好みではあった。

強いてコンサートのよくなかったところを挙げるなら、世界各地の観光客が集まっているのでマナーが悪かったことかな。日本のコンサートのマナーがとんでもなく良いことを実感した。

序盤は滞りなくモーツァルトが流れ、ソプラノのお姉さんや愉快なテナーのお兄さんの歌で盛り上がっていたが、突然ホルンが鳴り響いたと思ったら、青く美しきドナウが始まる。え!? それやってくれるの? 流石観光客向け! テンション爆上がりウィーン拗らせネキの私。その後、モーツァルト以外の曲もちゃんと演りつつプログラム最後の曲も終了。周囲にスタンディングオベーションパリピ指笛ニキもちらほらいるがまだ気が早い。拍手しながら大人しくアンコールを待っていると……。

テテテッ、テテテッ、テッテッテッ、テ、テテテテテッテッテ!

ラ、ラデツキーだと……!?
あ、指揮者がこっち(客席)向いて煽ってる……
我、手、叩いていいんだ!!


そこからはもう夢中で手拍子です。私いま黄金のホールでラデツキー行進曲に手拍子してる……! 毎年正月に世界中のセレブがやるやつやってる……! これ以上の黄金のホールファンサがあるだろうか、いや、ない。

スタンディングオベーションした。
ありがとう。ウィーンありがとう。疑似とはいえ夢が叶ったよ。
来てよかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ちなみにニューイヤーのチケットは十数万円するうえ争奪戦が血みどろだって昼間のガイドのお姉さんが言ってた。

ラデツキーの興奮も覚めやらぬまま、ホテルに帰ってぐっすり寝ました。
ウィーンでの暮らしはまだ始まったばかりなのに、こんなにフルスロットルで満喫してよかったのだろうか。
3日目に続く。

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