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取材した奇談

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心霊的・不可思議現象以外の、珍しい話、奇妙な話、人が怖い話などで、かつ取材した話です。
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#怖い話

【取材した人怖話26】事後報告

十年以上、前の話。 女性Kさんの兄は、中型バイクの交通事故に遭って亡くなった。 その後、警察から返還されたバイクを販売店に引き渡し、処分を依頼した。兄はその販売店でバイクを購入し、いつもその店でメンテナンスしてもらっていた。 引き渡しの際、販売店のオーナーは兄の事故に関して「ヘルメットが真っ二つになるなんて見たことがない。有り得ないです」と、かなり動揺していた。(販売店は警察からも連絡を受けており、事故の詳細を把握している)。 バイクを引き渡してから、およそ一か月後。

【人が怖い実話25】値下げ

S子さんが、とあるビルに出向いた時の話。 上階で用事を済ませてエレベーターに乗り、一階に到着した。 箱から降りてフロアに出ると、誰かがブツブツと呟く声が耳に入ってきた。 その声の在り処に視線を向けると、フロアの奥の暗がりに立っている男が目に入った。五十代くらいの男で、「サラリーマンではなく、普通のオヤジ」という風貌。下を向きながら、何やら呟いている。 S子さんは立ち止まり、耳をそばだてた。 「……します……お願いします……お願いします……」 え? なに? この人……

【人が怖い実話23】殺してるよ(笑)

※動物好きな方は閲覧注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 大学時代の部活の同期らと呑んでいるとき、皆の仕事の話になったことがある。 製薬会社の研究開発職に就いている同期の男が、満面の笑みを浮かべなからこう言い放った。 「毎日、イヌ6

【人が怖い実話20】こんな部屋に入りました

孝弘さんが不動産管理会社に勤務していた頃の話。 二〇〇六年に消防法が改正され、全ての住宅に火災報知器の設置が義務付けられた。この法改正を受け、報知器の設置のために管轄の部屋を訪ねて周ったことがあった。 たいがいの住人が気を遣って部屋を綺麗にしてくれるのだが、汚部屋を他人に見せても全く意に介さない入居者も多い。ゴミだらけ、本だらけの部屋はもちろん、女性の部屋で、床に散乱しているブラジャーを掻き分けながら報知器を設置したこともあるそう。だが、そんなのは序の口だ。 特に印象深い

【人が怖い実話19】誘う女(中国)

「子供の頃に、嫌な体験してますね」 と流暢な日本語を話すのは、中国人留学生の李さんだ。 2006年、中国の東北部。 当時小学2年の彼が放課後、学校の砂場でひとりで遊んでいたとき。 「こんにちは、ケンちゃん。元気かい」 ひとりの長身の老女が腰をかがめて、優しそうな口調で話しかけてきた。 だがしかし、自分の名はケンでもないし、その老婆も知らない人だ。 学校の関係者だろうか? でもこんな人は見たことない。 彼がどう対応していいか困惑していると、作ったような笑顔で彼女が続

【人が怖い実話17】地下鉄の男(フランス)

『バリ島のホテル(インドネシア)』(実話怪談7)の体験をされた健介さんの話。今度はフランス旅行中の出来事だ。 夜11時ごろにパリ市内の地下鉄でひとり、ホームでベンチに座って電車を待っていた。ホームには彼しかいなかった。反対側のホームも男性がひとり見えるくらいで、がらんとしていた。 「突然、反対側のホームにいる男が大声で何やら喚きだしたんだ。中年の男で、フランス語だったと思う。ちょうど自分の一直線上に立って、こっち向かって話しかけてる感じ」 言葉が解らない。周囲には誰もい

【人が怖い実話15】防犯カメラを買いに来た女

「あのぅ。防犯カメラを探してるんだけど」 元家電量販店勤務の男性Sさんが販売員としてカメラ売り場を担当していたとき、60〜70代くらいの女性客が細い声をかけてきた。 彼女は一軒家でひとり暮らしをしているが、自宅の金品が紛失することが多いそうだ。最初は気の所為と思っていたが、紛失の頻度が尋常でないという。そこで空き巣を疑い、防犯カメラを求めて来店したようだった。 「確かに、泥棒かも知れませんね」 「でしょう。警察の人にドアの鍵交換してもらったから、大丈夫だと思ってたんだけ

【人が怖い実話14】電車内で

60代女性Cさんは、10年ほど前に神奈川県の某私鉄駅付近にあるカルチャースクールに通っていた。 ある日の受講帰り。 帰宅のため、いつものようにスクール仲間とお喋りに興じながら、その駅に向かう。これもスクールに通う楽しみの1つだ。ホームで電車を待っている間も、雑談は止まらない。 駅の近くに高校があり、帰途につく学生も目につく時間帯だった。 電車がホームに到着し、仲間と乗車する。 座席はあらかた埋まっていたため、車内で立って歓談していた。 そのときだ。 Cさんは背中に強烈な

【人が怖い実話13】オンラインゲームのプレイヤー

私は3年前から、「陰陽師」というスマホアプリに夢中である。妖怪を育成するゲームだ。 最近はこちらの活動が忙しくたまにしかログインしてないが、多いときは1日8時間くらいインしていた。30時間ぶっ通しでプレイし続ける猛者もいるので、私など大したことない。 なぜ「陰陽師」を始めたかといえば、妖怪が好きだからだ。 子供のころ、水木しげる先生の妖怪本が好きで、親にねだっていた。「こないだ妖怪の本買ったでしょ(怒)」「いや、こないだのは日本編で、これは世界編で全然違うから(懇願)」

【人が怖い実話12】陸上競技の闇

陸上競技の関係者から聴いた裏話をまとめる。 〇 駅伝の強豪の私立高校は、全国各地の中学生を勧誘して入学させる。その場合は推薦入学となり、学費は完全免除、つまりタダである。 ある東日本の私立高校(駅伝以外も強い超有名高)のスカウトが、西日本の女子中学生(全国大会上位の常連)を勧誘すべく、本人・ご両親と交渉しに自宅に赴いた。 その際、交渉の材料として現金200万円を持参したそうだ。ちなみにこの勧誘は失敗し、その中学生は地元の公立高校に進学した。 〇 高校のスポーツ推薦入

【人が怖い実話11】傘を○本溜めた住人

以下の写真を見てほしい。 街でたまたま見かけた、消防法違反の公告である。 建物の屋外に火災の予防に危険なものや消防活動の支障をきたすものがある場合、消防署から整理または除去の命令がされるようだ。 写真の公告に記載されているのは、マンションの屋外階段に傘が1042本置いてあるから除去しろという命令だ。 集める(?)ほうも凄いが、数えた人も凄い。 「消防の活動に支障になる」ほどだから、おそらく階段の踏み板や踊り場に大量の傘が放置してあるのだろう。 壊れた傘だと余計

【人が怖い実話10】ヤクザを殺したカタギの男

1952年(昭和27年)、私の父方の祖父が47歳のときに体験した話。 その祖父は私が幼い頃に亡くなったため、ほとんど記憶にない。本エピソードは父親からの伝聞録となる。祖父は島根の田舎で酒屋を営んでおり、その地域では顔が広かったらしい。 ・・・ それは、夏祭りの日だった。 「かくまってごせ(かくまってくれ)」 知人の農家の男性Aさんが、青ざめた顔で祖父の酒屋に駆け込んできた。とりあえず祖父はAさんを店の奥の居住スペースに連れていき、事情を聴く。 当時、島根の東部には

【人が怖い実話9】元日本記録保持者の男

40代の男性A君から伺った話。 彼とは怪談収集目的で出会ったわけではなく、もともとの知人である。本話は、彼が酒の席で零したエピソードだ。 A君は公立高校時代にあるスポーツに打ち込んでおり、Xという男性教諭から指導を受けていた。 小柄だが色黒で精悍な面構えのX氏は当時30代で、その競技の元日本記録保持者だ。Wikipediaにも掲載されている。地元の高校生競技者にとっては神のような存在であった。 あるとき、遠征のためA君はX氏、別の高校の教諭Y氏と3人で遠方に移動したこ

【人が怖い実話8】ネパールのガイド

20代のバーテンダーSさんの体験談。 彼はネパールに旅行中に、トレッキング(山頂を目指さずに、ヒマラヤの麓を街から街まで山歩きすること)をすることにした。トレッキング前に、街で見知らぬ現地の青年から英語で話しかけられた。 「ガイドしてやるから金よこせ、って言ってました。断りましたけど」 ネパールではガイドの声かけは日常茶飯事だそうだ。 Sさんは最初こそ英語で会話を交わしていたが、ガイドの青年がかなりしつこく食い下がり、次第にイライラが募っていった。そしてとうとう最後に