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【人が怖い実話14】電車内で

60代女性Cさんは、10年ほど前に神奈川県の某私鉄駅付近にあるカルチャースクールに通っていた。

ある日の受講帰り。
帰宅のため、いつものようにスクール仲間とお喋りに興じながら、その駅に向かう。これもスクールに通う楽しみの1つだ。ホームで電車を待っている間も、雑談は止まらない。
駅の近くに高校があり、帰途につく学生も目につく時間帯だった。

電車がホームに到着し、仲間と乗車する。
座席はあらかた埋まっていたため、車内で立って歓談していた。
そのときだ。

Cさんは背中に強烈な衝撃を受け、そのまま前方に弾き飛ばされて床にうつ伏せに倒れ込んだ。何が起きたのか解らず、背中には激痛が走る。

床に這った状態で痛みに耐えながら彼女がゆっくりと振り返ると、制服を着たひとりの男子学生が突っ立っていた。
見知らぬ高校生だ。
憤怒の形相で、無言のまま自分を見下ろしている。
そして、理解した。

背後からこの男に脚で蹴られたんだ、と。

どうやら、さきほど駅のホームでお喋りをしているとき、その学生もホームにいて「Cさんが自分の悪口を言っている」と誤解したらしい。その思い込みの結果、頭に血がのぼって車内でいきなり彼女の背中を蹴り飛ばしたそうだ。

思い返してみると確かに、ホームで彼女の視界にはその学生の姿が映っていた。会話の最中、何気なしに数回ほど視線を向けた記憶もあるという。ただ、それだけだ。
もちろん、その学生の悪口などは言っていない。

幸い、蹴られた部位は重症化することなく、痛みも一週間ほどで完全に消えた。

悪意がなくともどこかで誰の恨みを買うかもしれない、そんな実話である。


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