マガジンのカバー画像

取材した奇談

29
心霊的・不可思議現象以外の、珍しい話、奇妙な話、人が怖い話などで、かつ取材した話です。
運営しているクリエイター

#実話

【人が怖い実話18】スーパースターとの接触

本エピソードは、他人に怖い思いをさせてしまった者の視点から記述する。 Mという男性が経験した話。 2000年3月。その日、西日本の地方大学の卒業式(大学とは別の市内の公的施設で実施された)を終えた彼は、急いでアパートに戻り、スーツを脱いで運動用のウェアに着替えた。時間は夕方ごろだ。 なぜそんなに急いでいたかというと、大学のグラウンドで陸上部の友人らとサッカーをするためだった。Mが所属していた陸上部では、気分転換の一環として時折サッカーに興じていた。これがすこぶる楽しかった

【人が怖い実話17】地下鉄の男(フランス)

『バリ島のホテル(インドネシア)』(実話怪談7)の体験をされた健介さんの話。今度はフランス旅行中の出来事だ。 夜11時ごろにパリ市内の地下鉄でひとり、ホームでベンチに座って電車を待っていた。ホームには彼しかいなかった。反対側のホームも男性がひとり見えるくらいで、がらんとしていた。 「突然、反対側のホームにいる男が大声で何やら喚きだしたんだ。中年の男で、フランス語だったと思う。ちょうど自分の一直線上に立って、こっち向かって話しかけてる感じ」 言葉が解らない。周囲には誰もい

【人が怖い実話15】防犯カメラを買いに来た女

「あのぅ。防犯カメラを探してるんだけど」 元家電量販店勤務の男性Sさんが販売員としてカメラ売り場を担当していたとき、60〜70代くらいの女性客が細い声をかけてきた。 彼女は一軒家でひとり暮らしをしているが、自宅の金品が紛失することが多いそうだ。最初は気の所為と思っていたが、紛失の頻度が尋常でないという。そこで空き巣を疑い、防犯カメラを求めて来店したようだった。 「確かに、泥棒かも知れませんね」 「でしょう。警察の人にドアの鍵交換してもらったから、大丈夫だと思ってたんだけ

【人が怖い実話14】電車内で

60代女性Cさんは、10年ほど前に神奈川県の某私鉄駅付近にあるカルチャースクールに通っていた。 ある日の受講帰り。 帰宅のため、いつものようにスクール仲間とお喋りに興じながら、その駅に向かう。これもスクールに通う楽しみの1つだ。ホームで電車を待っている間も、雑談は止まらない。 駅の近くに高校があり、帰途につく学生も目につく時間帯だった。 電車がホームに到着し、仲間と乗車する。 座席はあらかた埋まっていたため、車内で立って歓談していた。 そのときだ。 Cさんは背中に強烈な

【人が怖い実話13】オンラインゲームのプレイヤー

私は3年前から、「陰陽師」というスマホアプリに夢中である。妖怪を育成するゲームだ。 最近はこちらの活動が忙しくたまにしかログインしてないが、多いときは1日8時間くらいインしていた。30時間ぶっ通しでプレイし続ける猛者もいるので、私など大したことない。 なぜ「陰陽師」を始めたかといえば、妖怪が好きだからだ。 子供のころ、水木しげる先生の妖怪本が好きで、親にねだっていた。「こないだ妖怪の本買ったでしょ(怒)」「いや、こないだのは日本編で、これは世界編で全然違うから(懇願)」

【人が怖い実話12】陸上競技の闇

陸上競技の関係者から聴いた裏話をまとめる。 〇 駅伝の強豪の私立高校は、全国各地の中学生を勧誘して入学させる。その場合は推薦入学となり、学費は完全免除、つまりタダである。 ある東日本の私立高校(駅伝以外も強い超有名高)のスカウトが、西日本の女子中学生(全国大会上位の常連)を勧誘すべく、本人・ご両親と交渉しに自宅に赴いた。 その際、交渉の材料として現金200万円を持参したそうだ。ちなみにこの勧誘は失敗し、その中学生は地元の公立高校に進学した。 〇 高校のスポーツ推薦入

【人が怖い実話11】傘を○本溜めた住人

以下の写真を見てほしい。 街でたまたま見かけた、消防法違反の公告である。 建物の屋外に火災の予防に危険なものや消防活動の支障をきたすものがある場合、消防署から整理または除去の命令がされるようだ。 写真の公告に記載されているのは、マンションの屋外階段に傘が1042本置いてあるから除去しろという命令だ。 集める(?)ほうも凄いが、数えた人も凄い。 「消防の活動に支障になる」ほどだから、おそらく階段の踏み板や踊り場に大量の傘が放置してあるのだろう。 壊れた傘だと余計

【人が怖い実話10】ヤクザを殺したカタギの男

1952年(昭和27年)、私の父方の祖父が47歳のときに体験した話。 その祖父は私が幼い頃に亡くなったため、ほとんど記憶にない。本エピソードは父親からの伝聞録となる。祖父は島根の田舎で酒屋を営んでおり、その地域では顔が広かったらしい。 ・・・ それは、夏祭りの日だった。 「かくまってごせ(かくまってくれ)」 知人の農家の男性Aさんが、青ざめた顔で祖父の酒屋に駆け込んできた。とりあえず祖父はAさんを店の奥の居住スペースに連れていき、事情を聴く。 当時、島根の東部には

【人が怖い実話9】元日本記録保持者の男

40代の男性A君から伺った話。 彼とは怪談収集目的で出会ったわけではなく、もともとの知人である。本話は、彼が酒の席で零したエピソードだ。 A君は公立高校時代にあるスポーツに打ち込んでおり、Xという男性教諭から指導を受けていた。 小柄だが色黒で精悍な面構えのX氏は当時30代で、その競技の元日本記録保持者だ。Wikipediaにも掲載されている。地元の高校生競技者にとっては神のような存在であった。 あるとき、遠征のためA君はX氏、別の高校の教諭Y氏と3人で遠方に移動したこ

【人が怖い実話8】ネパールのガイド

20代のバーテンダーSさんの体験談。 彼はネパールに旅行中に、トレッキング(山頂を目指さずに、ヒマラヤの麓を街から街まで山歩きすること)をすることにした。トレッキング前に、街で見知らぬ現地の青年から英語で話しかけられた。 「ガイドしてやるから金よこせ、って言ってました。断りましたけど」 ネパールではガイドの声かけは日常茶飯事だそうだ。 Sさんは最初こそ英語で会話を交わしていたが、ガイドの青年がかなりしつこく食い下がり、次第にイライラが募っていった。そしてとうとう最後に

【人が怖い実話7】隠蔽する家族

一人っ子長男の私が、33歳のときの話。 ロシアに渡航したかったが、学生時に作ったパスポートの有効期間が切れていたので再申請の必要があった。 それとは別件で、両親の住む島根の実家に電話した際、ついでにロシア旅行やパスポートの話を父に話した。 すると父は、戸籍謄本だか抄本だか(申請に必要)を私の代理人として私の本籍地(島根)の役所で取得してくれるという。 私は都内在住のため、役所から直接郵送してもらうつもりだったが、父の意向を汲んで代理取得をお願いした。 その後、父が埼

【人が怖い実話4】退去後の点検

不動産管理会社で勤務経験がある孝弘さんが体験した話。 彼の業務のひとつに、賃貸者退去後の部屋の点検という作業があった。家具・家電付きの物件のため、それらが入居前と同じ状態であるか、室内に新たな物理的な瑕疵がないか、等を調査する業務である。 その日、彼は都内のひとり暮らし物件の退去後点検に訪れた。家賃5万前後の細長い間取りの典型的なワンルームだ。午後の時間帯だったが、部屋は薄暗く、しんと静まりかえっていた。 押入れの引き戸をがらがらと開けた瞬間、彼は思わず腰を抜かして尻餅

【人が怖い実話3】出会い系サイトの女(閲覧注意)

注)性的描写を含むため、苦手な方は閲覧注意 ・・・ 15年ぐらい前、知人男性Pさんが20代のときの話。 彼は女性との出会いの手段のひとつとして、出会い系サイトを利用していた。今では「マッチングアプリ」という名称で市民権を得ているものもあるが、当時は世間的には「怪しい出会い方」という印象が強かった。 『ミサ』という女性と出会ったのも、サイトだった。 わずかなメールのやりとりだけで、とんとん拍子でデートが決まった。しかも、会ったら卑猥な行為をしましょうというニュアンスだ

【人が怖い実話2】常に笑顔の男

私が生物学を専攻していた大学3年ごろの話。 M教授が担当する「細胞生物学」という講義を履修していた。 その講義は、高校の教室より少し広い大きさのひな壇型の講義室で実施されており、受講者は40人ぐらいであった。 彼は教授とはいえ、偉そうな雰囲気は皆無で、いつも人懐っこい笑顔を絶やさない男性である。 ある日の講義で、細胞生物学の実験に使用する薬剤について話が及んだ。 「実験のために細胞を人為的にガン化させることがあるんだけど、そのときに『ホルボールエステル』って薬剤使うの