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【人が怖い実話7】隠蔽する家族

一人っ子長男の私が、33歳のときの話。

ロシアに渡航したかったが、学生時に作ったパスポートの有効期間が切れていたので再申請の必要があった。

それとは別件で、両親の住む島根の実家に電話した際、ついでにロシア旅行やパスポートの話を父に話した。

すると父は、戸籍謄本だか抄本だか(申請に必要)を私の代理人として私の本籍地(島根)の役所で取得してくれるという。

私は都内在住のため、役所から直接郵送してもらうつもりだったが、父の意向を汲んで代理取得をお願いした。

その後、父が埼玉の叔父に所用があるとのことで一人で上京してきた。その際に戸籍の書類を持参してきた。

この上京が急だった。私は忙しいなか(仕事の締め切り前日)、時間を作って父を自宅に招いた。

そこで、戸籍書類を渡される前に、こう告げられた。


「実は、お前は養子なんだ」


父から差し出された書面に目を落とすと、確かに『養子』の文字が記載されている。

埼玉の叔父に所用、というのは口実で、養子の事実を伝えに島根からはるばる上京してきたのだ。

養子であること自体は、私は何とも思わなかった。ふぅん、そうなんだ。そんな話、電話でいいじゃん、とさえ思ったほどだ。イチローが首位打者とったよ、と言われたときと同じような感情だ。

私がもっと若ければ、違った気持ちを抱いたかもしれないが、33歳で知らされた時には、もはや他人事に近いような感覚だった。

だがしかし、たまたま私が戸籍書類を取得しようとした結果、養子の事実が発覚してしまったという一連の流れが、野暮の誹り(そしり)を免れない。

あわよくば隠蔽しておきたかったであろう事実が、偶然バレてしまったのだから。

(学生時代に最初にパスポートを発行しているが、その時は養子の話は出なかった。なぜかは覚えていない)

なお、血液型については戸籍上の両親、私ともO型。たまたま生物学的に自然な組み合わせだった。

ちなみに私の生物学上の両親は存命であり、私の知る人物らであった。養子縁組に至った経緯は複雑なため、詳細は割愛する。


いささか希少な事例だと思い、ここに記した次第である。敵意むきだしの表題だが、悪気はないことを付け足しておく。

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