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ひとつきのかけらたち

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一ヶ月毎、日々のかけらをまとめます。
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#小説

12月のかけらたち

12月のかけらたち

会社帰り、電車が遅延していた。申し訳ありません、と駅員さん。あなたのせいじゃない。誰も悪くない。そう思えるくらい穏やかでいられる日が、すこしでも多い人生がいい。

待合室で吐く息が白い。降ってはいないのに、雪の匂いがする夜。

毎月の断片日記も、気づけば6回目。エッセイを書くのがこわいくせに、よく続いたものだ。
かつて、5年間毎日小説を投稿していた。今はお休みしているが、今年は久しぶりに長編を書き

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11月のかけらたち

11月のかけらたち

冬はつとめて。いやいやいやいやいや寒すぎる。つとめてなんて寒すぎる。布団を出るのに覚悟が要る。何食わぬ顔で冬が来た。11月の、日々の断片。



住んでいない街を徘徊するのが好きだ。読めない地図は見ず、ただ気になる方へふらふら歩いていく。このあいだは、ちいさな韓国風居酒屋を見つけた。看板に「今日もおつかれさま(にっこりマーク)」と書かれていたのに惹かれて、思わず入ってしまった。コピーライティング

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9月のかけらたち

9月のかけらたち

長編1本、短編2本、詩1本。
9月末に脱稿した。

この1か月間、ほんとうにずっと書いていた。小説の執筆はいつもいのちがけだけど、今回は人生で一番いのちがけだった。

*

6万字弱の長編を書くには、自分の記憶や傷や熱とひたすらに向き合わなければならなかった。
全時間軸の自分と話をした。いつの自分も、どの世界線を選んだ自分も、ちゃんと救われてほしかった。どうか届いてほしいと祈った。あのときの自分に

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