マガジンのカバー画像

ひとり手帖

50
日々の思考の断片です。
運営しているクリエイター

#夏

8月のかけらたち

8月のかけらたち

8月も過ぎるのがはやかった。
今月も断片的にふりかえり。いつかの自分にあてた備忘録です。

某日-1

大人の写真部に参加。軽井沢と小諸へ撮影に行った。メンバーのなかにはお世話になっている人も、初めてお会いする人もいた。みんな大先輩だから、私なんかがいていいのかどきどきしていたけれど、カメラを持って街を歩いているうちに、そんな不安は消えた。楽しかった。夢中でシャッターを切っていた。
写真はおもしろ

もっとみる
あの夏の余興

あの夏の余興

久しぶりに、帰省した。

通勤に使う下り列車。片手には文庫本。車窓から見える夏が、鈍行のスピードで流れていく。
会社の最寄り駅を通り過ぎると、見慣れない景色に変わる。引っ越してきてから一度も、この駅より先まで乗ったことがなかった。

夏はいつもフィクションみたいだ、と思う。鮮やかな景色も、追憶を誘う匂いも。遠い昔の記憶。ひぐらしの声、線香と桃畑の匂い。

一度、高校の頃の最寄り駅で降りた。この駅に

もっとみる
7月のかけらたち

7月のかけらたち

追憶。あっ、と言うまもなく、と言うまもなく、終わった7月。あまりにも夏だった。夏はいつも短命だ。どうしようもなくまぶしくて、濃い影を残して去っていく。

これは7月の断片。断章。

***
◯日

人生で経験できる夏には限りがある。ふっと気づいて、焦燥感に襲われた。私は夏が好きだ。いのちの気配が濃いところも、終わりの匂いが強いところも。どうしよう。また夏が去っていこうとしている。待って。私は夏が好

もっとみる
いつか、あの頃になる夏で

いつか、あの頃になる夏で

夏。あまりにも夏。仰いだ空は高純度、木陰が誘う夕涼み。

海。森。光。地面にできる模様。砂の感触。土の感触。視界。私が切り取る世界。夏の匂いから逃れられない。透明な手が背中に触れる。夏。遠い昔の夏休み。塩素とプール、スイカと朝顔。

あの頃はよかった、と人は言う。私も言う。今日も、いつか、あの頃になる。

歩く。砂浜はさらさらしている。歩く。木立はしっとりしている。考える。考える考える考える。とき

もっとみる