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2023年詩

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#足元

169「詩」忘れないで

169「詩」忘れないで

ぽつりと
冬の夜道に
立っていた
辺りは闇に包まれ
手の届くあたりに
何があるのかさえ
分からなかった

長い時間の渦に
ぐるぐると巻き込まれ
歩く方向も見失った

なにもかも人間が壊してしまった世界は
果てしなく広がって
色を失った瓦礫が
見渡す限り続く

ふと
足元を見る
小さな蕾に気づく

灯りのような
小さな蕾は
おそらく
朝の光を合図に
薄く透き通った花びらを
開き始めるだろう

忘れな

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153「詩」暗闇だった

153「詩」暗闇だった

——— 言葉の内に命があった。命は人間を照らす光であった。光は暗闇の中で輝いている。
暗闇は光を理解しなかった。———-
<ヨハネによる福音書1.4〜1.5新共同訳聖書から引用>

暗闇だった
八方塞がりで
進む道を手探りで見つけていた
足元がぼんやり見える
注意深く一歩一歩
擦り傷だらけの足を前に進める

壁に当たる
どんな硬さの壁なのか
暗闇の中ではわからない

引き返して
また違う方向に

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99「詩」ろくでもないこと

99「詩」ろくでもないこと

ほんとうは
ろくでもないことばかり考えている
ばれないように
上品そうに振る舞って
ろくでもないことを考えているのを
かくしている

人と比べたって自分が変わるわけではない
そんなこと
ちゃんと知ってるのに

医者になった友だちがポルシェを
ドイツにオーダーしたってメールが届く
そんなことでちょっとだけ
ちょっとだけ暗い気持ちになってしまう

豪華な料亭のお節料理を囲んで
笑っている家族たちの写真

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71「詩」朝

71「詩」朝

それでも
ひとすじの光は射す

それでも
かわらない朝はくる

自然の法則を守って
同じ時期に同じ花が咲く
同じ時期に同じ星が輝く

ひしめき合った人間たちは
幸せへの方向を見失ってく

人々のためにと考えたあげく
自分のためだけに動いている

注意深く
自然の声に耳を傾けてみる

足元に咲いた名も無い花でさえ
何が正しいのか
その答えを知っているはずだ